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Ajaxではじまるサービス活用 |
第4回:Windows Liveで見せるMicrosoftの懐の深さ
著者:ピーデー 川俣 晶 2007/3/12
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Ajaxの生みの親は誰か
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奇異に思われるかもしれないが、実は「Ajaxの生みの親」は誰かという問い掛けに応えるのは難しい。
なぜかといえば、「Ajaxに使われる主要な技術を整備した者」と「現在Ajaxと呼ばれるサービスを作り出した者」、そして「Ajaxという名前を付けた者」はすべて異なっているからである。
具体的にいえば、最初の者はMicrosoft、2番目の者はGoogle、そして3番目の者はJesse James Garrett氏とみることができる。GoogleをAjaxの生みの親である、という立場を取っているケースが一般的だと思われるが、Googleだけですべてを作り上げたわけではないのも事実である。
一方Microsoftは、Googleを追い上げる形でAjaxに参入した後発の企業、というイメージで受け止められているが、見ての通りGoogleに先んじてAjaxに使われる技術を整備した元祖的な立場である。ここでは、元祖でありながら後発となる、という奇妙にねじれた立場に立つMicrosoftの、単純には割り切れないAjax戦略をみていこう。
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20世紀最後の夢
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1998年7月、筆者は東京電機大学出版局より「XMLコンテンツの作り方」という書籍を出版した。この書籍は、Webページを遷移することなく、表示内容を入れ替えるという機能を持ったWebコンテンツの作り方について説明したものである。
そこで使われていた技術は、Dynamic HTML(HTML+CSS+JavaScript+DOM)とXMLである。作成したWebページは(一部の道具立てが異なっていることを除けば)、紛れもなく現在でいうところのAjaxそのものである。
ここで2つの疑問が浮かぶことだろう。
まず1つ目の疑問は、なぜAjaxブームからはるかに遡る20世紀末にこれが可能だったのだろうか、という点だ。Ajaxを最先端の流行ととらえるなら、これはもっともな疑問である。
そして2つ目の疑問は、このような技術を実現するために必要な環境は一般的かつ容易に入手できるものだったのだろうか、という点だ。あの素晴らしいAjaxを1998年の時点で実現できていたのならば大ブームになって当然なのにも関わらず、実際にはブームにならなかったのは、何か高価であったり難度が高かったりする、特別な環境を要求したのではないか、と考えることは至極当然のことといえる。
では、この2つの疑問に答えてみよう。
第1の疑問の答えは、実際に「可能だった」である。それは、古書店を探してこの書籍を入手し、この書籍が前提とする環境を構築して実行してみれば容易に理解してもらえるだろう。
第2の疑問の答えは、「一般的に容易に入手できる環境で実行可能だった」である。なぜかといえば、その時点でトップクラスのシェアを持つ「Internet Explorer 4.0」を実行環境としていたからである。
おそらく、このような説明でもまだ納得できない読者も多いと思う。それゆえに、新たな3つ目の疑問が浮かぶ方もいることだろう。そう「もしや筆者が超天才として時代を先取りしただけで、一般人を置いてきぼりにしただけではないのか」という疑問だ。
この問いも明快に「ノー」である。
この書籍で使われた技術は、Microsoftがすべてお膳立てし、アピールしたものである。筆者は、お膳立てされた通りにこれらの技術を使い、いくつかのコンテンツを作り、それの作り方を書籍にまとめたにすぎない。つまり、技術ドキュメントを読める技術者なら、誰でも使いこなすことができたわけである。
これが事実であることは、超天才ではない筆者が実際にコンテンツを作ることができたことが証明となるだろう。
しかし、そのように説明されると、なおさら納得できない読者も多いと思う。ではなぜ、誰でも使えるようにお膳立てされた技術が提供されていたにも関わらず、なぜAjaxは1998年に流行しなかったのだろうか。
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著者プロフィール
株式会社ピーデー 川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。
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