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後悔しないためのインフラ構築の勘所
〜パッケージアプリケーション導入編〜
第2回:パッケージアプリケーションを支えるインフラの重要性
著者:
日本アイ・ビー・エム 後藤 秦剛
2007/3/15
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パッケージアプリケーション導入におけるインフラ選定のポイント
「
第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド
」では、パッケージベンダーの動向とインフラの変化の2つの観点から、パッケージアプリケーションとインフラを取り巻く環境の重要性について解説した。
今回はハードウェアベンダーの観点から、パッケージアプリケーション導入におけるインフラ選定のポイントと要件を解説し、その上でそれを実現する技術として仮想化について考えてみる。
筆者は仕事柄、パッケージアプリケーションのインフラ構築のためにRFPやRFIに目を通すことが多く、よく意見を求められる。しかし、それらの最適なフォーマットや記述ポイントなどは企業によって異なるため、検討資料/提案書/見積もり書などを基にベンダーと話し合い、インフラを決めて行くことになる。
そこで今回は、インフラの選定において軽視されがちであるが、実は重要な検討項目である以下のポイントについて解説していく。
アプリケーションの特性にあったシステム
キャパシティプラン
移植性、テクノロジの継続性
拡張性と拡張方法
表1:隠されたインフラの選定ポイント
アプリケーションの特性にあったシステム
読者の皆さんはパフォーマンスとスループットの違いを正しく理解できているだろうか。ITシステムにおけるパフォーマンスは処理速度を、スループットは処理数のことをそれぞれあらわしている。
例えば、あるトランザクションの処理時間を短縮する場合は、CPUのクロックをあげてパフォーマンスの向上を狙うことになる。また、一定時間内に処理できるトランザクション数を増加させるためには、全体のスループットの向上を考えなければならない。
このように、向上させたい処理によって何をすればよいのかが違ってくる。具体的には、SCMの高速計算エンジンのように処理スピードを求められるアプリケーションや、ERPのように大量のバッチ処理を要求するアプリケーションでは、高速なCPUを用いてパフォーマンスを向上させた方がよい。
処理性能の低いCPUを用いても高性能なCPUと同等な処理能力を実現したい場合には、CPUを多重化するなどの方法がある。しかし、アプリケーションがマルチCPUに対応していないなどの理由で実現できないことがある上、多重化してもオーバーヘッドによって想定した処理能力を有さない、コストが増大するなどの問題が発生するケースがある。また、CPUの増加はソフトウェアライセンスに影響することもあるため、費用対効果は正確にシミュレートしていおく必要がある。
さらに、アプリケーションサーバとデータベースサーバを分離するか、あるいは同居させるかといったシステム構成の選定も重要になる。MRP(material requirements planning)のようにデータベースアクセスが多量に発生するアプリケーションでは、データベースの負荷が高くなるため、一般的に同居構成は適さない。よって、アプリケーションからデータベースへのアクセス頻度がどれほどか、負荷はどうなっているのかを事前に確認しておく必要がある。
キャパシティプラン
キャパシティプランのポイントは、サービスインまでにどれだけ本番環境と同様の環境でシミュレーションして、負荷などを見積もることができるかにある。
導入プロジェクト初期段階のキャパシティプラニングでは想定ユーザ数とトランザクション量を精査し、最終的には導入プロジェクト全体で負荷テストを行い、本番環境に必要なキャパシティを割り出す必要がある。
当然ではあるが、負荷テストを行うにあたっては、本番環境と同等の環境を用意し、実際の業務と同等のデータ量を使って試験を行うのが望ましい。
移植性、テクノロジの継続性
長期間のサービスである場合、いずれパッケージアプリケーションをアップグレードする必要がでてくる。その際にハードウェアの更新を検討することが多いだろう。
このような場合は移行作業が発生するが、現行の構成と同様のOSやRDBMSにする場合と、異なるOSやRDBMSにするのでは、移行方法が異なるだけではなく、移行にかかるリスクや期間も異なってくる。
もし更新対象のハードウェア上にアップグレードするアプリケーションのみが稼動しているのであれば問題は比較的少ないが、運用/監視/ジョブ連携/バックアップなどの関連するソフトウェアが稼動している場合はそれらの移行も必要になる。
よって、パッケージアプリケーションの選定には、基本的にオープンな技術に基づき、移植性の高いものを選定した方がよい。また、インフラの選定に関しては、そのテクノロジに関するロードマップが提供されており、その通りに実現できるベンダーを見極める必要がある。
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著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社
後藤 秦剛
1990年、日本アイ・ビー・エムに入社。1998年よりISVパッケージのテクニカルサポートに従事。経営イノベーショングローバルISVソリューションズ所属。
INDEX
第2回:パッケージアプリケーションを支えるインフラの重要性
パッケージアプリケーション導入におけるインフラ選定のポイント
拡張性と拡張方法
仮想化コンピューティング環境について