TOP調査レポート> インターネット広告市場はどこまでいくのか
Webビジネス
Webビジネスの現在と未来

第3回:Web人格がインターネット広告を変える

著者:野村総合研究所  小林 慎和   2007/5/7
1   2  3  次のページ
インターネット広告市場はどこまでいくのか

   広告市場は、今かつてない構造変化の時期を迎えている。その台風の目となっているのがインターネット広告市場である。広告市場は、主にテレビ/新聞/雑誌/ラジオのマス4媒体、DM/折込/電話帳/屋外/交通のSP広告、そしてインターネット広告から構成される。

   広告市場全体をみると、ここ数年の間は6兆円程度で横ばいに推移している。その中で、インターネット広告市場のみが急拡大を続け、現在ではテレビ/新聞を脅かす市場規模にまで拡大している。誕生からわずか10年で、既存メディアを脅かす存在となったインターネット広告に、既存プレイヤー達は戦々恐々としている。

   インターネット広告市場に関する筆者らの予測では、2006年では約3,500億円だった市場規模が2010年には2倍の7,000億円超にまで拡大するとみている。2010年段階でも広告市場全体の12%程度、テレビ広告市場規模の3分の1程度に過ぎないが、2010年以降も拡大が続くと予測できる。
インターネット広告市場予測(億円) 出展:野村総合研究所
図1:インターネット広告市場予測(億円)
出展:野村総合研究所

   では、なぜこのようにインターネット広告市場は拡大を続けるのだろうか。広告の価値は消費者との接触量によって規定される。接触量は、その広告の閲覧時間と閲覧人数をかけあわせたものとなる。インターネットは、生活の中に急速に浸透し、その利用者数と利用時間が急激に増大している。それがこの市場の拡大を後押ししているのである。

   具体的には、2007年3月現在でブロードバンド環境の利用者がすでに7,000万人を超えている。テレビの利用者は約1億人程度であることを考えると、それに匹敵する規模にまで拡大してきていることとなる。

   利用時間に関しては図2に示す通り、世代によらず浸透していることが伺える。ブロードバンド環境を持つユーザは、どの世代でも5割程度の人が1日あたり2時間以上はインターネットを利用すると回答している。インターネットが普及しはじめた当初は、専門職や若年層の間で利用されていたのだが、普及から10年であらゆる世代に受け入れられる「生活必需品」となっている。

ブロードバンドユーザにおける世代別のインターネット利用状況(平日) 出展:野村総合研究所
図2:ブロードバンドユーザにおける世代別のインターネット利用状況(平日)
出展:野村総合研究所

   ブロードバンド環境を持つユーザに限定していることには理由がある。広告の価値は閲覧時間と閲覧人数のかけあわせであるとしたが、もう1つ重要な要素がある。それは、広告の見やすさ・綺麗さである。ナローバンド環境では、広告画像や動画のダウンロードと表示に時間がかかり、消費者にストレスを感じさせてしまう。FTTHやADSLを活用したブロードバンド環境は、この問題を解消してくれる。

1   2  3  次のページ


野村総合研究所 小林 慎和
著者プロフィール
野村総合研究所  小林 慎和
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。


INDEX
第3回:Web人格がインターネット広告を変える
インターネット広告市場はどこまでいくのか
  モバイルインターネット広告の活用がキー
  「Web人格」がインターネット広告を変える