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Webビジネスの現在と未来
第3回:Web人格がインターネット広告を変える
著者:
野村総合研究所 小林 慎和
2007/5/7
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「Web人格」がインターネット広告を変える
行動履歴と一口でいっても様々なデータがある。具体的には表2に示すような情報が考えられる。より正確な行動連動型広告を配信するためには、より詳細な行動履歴が必要となる。そして、より詳細な行動履歴データは極めて秘匿性の高い個人情報である。
分類
行動履歴データ
取得・蓄積するための手段
基本情報
性別、年齢、年代
家族構成、地域、住所
利用している携帯電話
会員ビジネスの提供によって取得が可能
属性情報、IT関連プロファイル
職業、年収、資産状況
IT関連機器(各種情報端末やAV家電など)の保有、利用状況
思考・嗜好
消費性向
アンケートの実施よって取得可能
SNSやブログの提供し、その中で消費者が記入した記事(コンテンツ)を分析することで取得可能
行動
行動履歴(過去、現在)
スケジュール(未来)
ポータルサイトにおけるアクセス解析
スケジューラアプリケーションなどの提供による取得
GPSデータ取得の許諾
車載端末データの取得
購買
購買履歴
ECサイトの開設によって得られるアクセスログ
FeliCa端末の活用時のデータの取得許諾
クレジットカード、ポイントカードの購買履歴情報の取得許諾
表2:行動連動型広告に活用される情報
出展:野村総合研究所
行動履歴に応じた広告の配信は、消費意欲の高い20〜30代の女性が消費者層として真っ先に浮かぶ。また、個人情報の公開に対してもっとも敬遠するのもまた同じ若い女性消費者層である。
行動履歴の蓄積がなければ、行動連動型広告のビジネスははじまらない。テレビCMは早送りによってスキップされ、消費者が真に求める広告が消費者の手元にまで行き渡っていないのではないかという指摘がよく聞かれる。その問題への起爆剤として期待される行動連動型広告であるが、のっけから躓きを見せはじめているのが現状ではないだろうか。
個人情報の問題を考慮しなければ、行動連動型広告を求める消費者は極めて大きく、究極の広告ツールといえるだろう。この行動連動型広告を実現する手段として、「Web人格」というプラットフォームが考えられる。
Web人格とは、Web上のどのサービスにおいても、同一人物と判断可能な人格(ID)で、かつ、現実のIDとは切り離された自由なものとして提供されるものと定義したい。こうすることで、仮にWeb人格の詳細なプロファイルが漏洩したとしても、現実生活には影響をおよぼさない。漏洩した場合は、Web人格は切り離し、新たに再設定すればよいだけである。すでにブログ、SNSまたはSecond Lifeのような仮想生活空間のサービスでは、アバターやキャラクターによってアイデンティティらしきものが確立されはじめているが、企業側はまだそのアバターやキャラクターの裏側にいる現実の消費者をターゲットとして広告の配信を考えている。
そうではなく、そのアバターやキャラクターの行動履歴そのものを活用して広告を配信することも有効なのではないだろうか。極論ではあるが、人は誰しも多重人格である。親である自分、子である自分、社会人である自分、学生である自分、客前の自分、一人でいる自分など、人は気づかぬうちにそれぞれの環境に応じて人の行動や言動を変えている。人の人格は、それぞれの状況に応じて、大きな幅の中の一部を見せているに過ぎない。
同様に表現についても、不特定多数に公開されるブログ上と、主に知人が読者であるSNS上では同じことを語る場合でも異なるものである。人前ではいえない本音が、なぜか公開情報であるブログには書ける。そうした消費者も多いのではないか。
Web上で各消費者が、Web人格として織り成す行動は、一見その本人とは関係性の低い思考からなる無責任な行動であるようにみえて、実はその人の本音が垣間見える行動履歴なのかもしれない。
Web人格というどのWebサービス上でも同一人物と判断できるプラットフォームが提供されれば、個人情報という最大の問題が一気に解消され、理想的な行動連動型広告の配信が可能になるのではないだろうか。
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著者プロフィール
野村総合研究所 小林 慎和
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。
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第3回:Web人格がインターネット広告を変える
インターネット広告市場はどこまでいくのか
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「Web人格」がインターネット広告を変える