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オープンソースソフトウェアの性能・信頼性評価手法
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第6回:PostgreSQLは使えるのか? 〜 あなたの環境での性能特性を調べる
著者:野村総合研究所 平野 耕一 2005/6/20
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はじめに
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前回と今回、そして次回の3回で、オープンソースのRDBMSの性能特性の測定をテーマとした連載を行っている。前回と今回は、Webトランザクション系システムのデータベースとして、オープンソースのRDBMSがどのような性能特性を持っているのかをテーマとすることにした。
前回はRDBMSとしてMaxDBを扱った。今回はPostgreSQL 7.4.xに主にフォーカスをあてることにする。途中で若干Oracleについても触れるので、興味ある方はご一読いただきたい。
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PostgreSQL問答
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さて今回は、あなたが持っているかもしれない次の質問に答えることを意図している。「Webトランザクション系のデータベースにPostgreSQLが性能的に使えるかどうかを知りたい」。この問いに対する私の答えは以下の通りである。
- 私:「あなたが用意しようとしているハードウェアリソースによっても性能は変わるし、あなたのシステムがどれぐらいのデータ件数を扱うのかによっても性能は大きく違う」
- あなた:「それでは答えになっていない。どうすればいいのだ?」
- 私:「では、あなたの質問を『どうすれば性能を評価できるのか』に置き換えてみよう。DBT-1という、Webトランザクション系のRDBMSの性能を実機上で模擬的に測定することのできるベンチマークツールを使えば、おおまかな性能特性が理解できる。例えば、HWリソースをどれぐらいにすればいいのか、あるいは満足できる性能を維持するには、RDBMSに格納するデータはどのくらいのサイズまで許容できるのか、を窺い知る事が可能である」
- あなた:「ではDBT-1とやらの利用方法を教えてほしい」
- 私:「IPA(独立行政法人情報処理推進機構)および、日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループによって公開された『DB層の評価』報告書、第4章にすべて書いてある。次のURLをたどってほしい」
- 私:「ついでに、あとで使うことになるので下記もダウンロードしておくといいかもしれない」
- 私:「DBT-1とは何か、については、住商情報システムの福井さんが前回書いているので、それを参考にするとよい」
以上であなたの質問に一応答え、今回の執筆の目的は果たしてしまったことになる。
しかしながら、実機上でPostgreSQLにDBT-1を適用・性能測定すると、一体何が見えてくるのかについて、あなたが上記の「DB層の評価」報告書(以下、報告書)を印刷する前に、いくつか例示しておくほうが親切かもしれない。そこで以下では、報告書でも触れているいくつかの実機評価結果例を抜粋してみることにする。
もう一度だけ、注意を喚起しておく必要がある。以下に出てくる定量的な性能特性は、あなたのハードウェア環境では大きく異なる可能性が高い。ゆえに、数値そのものよりも、どういう軸がみえるのかを知るための参考にとどめていただきたい。DBT-1の入手方法、インストール方法、動作手順は、本稿では省略するので報告書を参考にしていただきたい。
ここで、実機評価結果例について述べる前に、ちょっとだけ脱線する。前回でDBT-1によるMaxDB、今回はDBT-1によるPostgreSQL 7.4.xを扱った。しかし、読者の中にはその他のRDBMS、例えばMySQLのInnoDBや、商用RDBMSの代表格のひとつであるOracleと、同一の方法で性能を比較したい方もおられるだろう。
報告書の第5章とその付録(注1)では、少なくともDBT-1によるOracleの評価方法は提供されている。ただし、Oracleのライセンス契約上、Oracleの性能測定結果を公表することは許されていないので、測定結果は含まれていない。Oracleとの比較に興味ある方はぜひご自分で試されたい。その他のRDBMSへの適用については、今後の日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループやOSDLなどの活動を期待することにしよう。
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資料紹介
「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書
本記事は、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループによって公開されている「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書を基に記事を掲載しています。報告書には、本記事で紹介した評価手法の詳細な手順、評価結果、考察が記載されています。
Javaアプリケーション層の評価、DB層の評価、OS層の評価の各報告書や付録、障害解析ツール開発に関する各報告書などが、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループのホームページにて公開されています。
■「DB層の評価」報告書(PDF形式/1.68MB)
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/Contents/DevInfraWG/db.pdf
■日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループホームページ
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/DevInfraWG.html
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 平野 耕一
大英帝国の大学院に私費留学中、研究費がなく、大学教員のLinuxマシンを複数台連結し、夜中にこっそり大量の科学計算を行ったのがオープンソースとの出会い。現在は米国西海岸のNRI Pacific, Inc.に出向中。3才になる双子の父でもある。趣味は自転車通勤。
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