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ARISを活用したBPM
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第3回および第4回では、BPMサイクルのうち、ビジネス・プロセス設計を行うフェーズでのARIS活用方法を紹介しました。今回の第5回は、ビジネス・プロセス導入を行うフェーズでのARIS活用方法を紹介します。ARIS製品群の中では、ARIS Implementation Platformのご紹介にあたります。
図1:ARIS Implementation Platform
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業務の改善か?システムの導入か?
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前回までのビジネス・プロセス設計フェーズでは、ビジネス・プロセスの可視化を行い、自社が目指すべき姿と現状のプロセスとの間に存在するギャップ、すなわち課題を抽出する必要性をご紹介いたしました。そして、これらの課題を如何に解決し、新たなプロセスを如何に構築するかを検討する必要性に触れました。ここで、これらの課題をどのように解決していくのかを考えてみると、昨今のIT投資ブームが熱を帯びすぎたあまりに、全ての課題をITで解決するという傾向が強いと感じてなりません。
このように記載している筆者も、依然SEとしてシステム開発プロジェクトに携わっていた期間は、お客様企業が抱える課題をITのみで解決できるという一種の幻想に囚われていました。
例えば、「顧客満足度向上のためにコールセンター・システムを導入しましょう!そうすれば、様々な顧客情報の分析が可能となり、ひいては売り上げ拡大・利益拡大につながります!」というようなフレーズは、CRMブームの時代によく耳にされたと思います。
しかし、当然ながらCRMシステム導入だけでは、顧客満足度の向上が果たされることはありません。社員が、そのCRMシステムを活用して、顧客により良いサービスを提供できて、はじめて顧客満足度が向上するかもしれないのです。ここで重要なのは、よかれと思って導入したCRMシステムやプロセスをもってしても、「顧客満足度があがるかもしれない」という状況に留まる可能性が高いということです。従って、システムやプロセスを導入する際には、それらによる効果を計測することを前提とされなければなりません。
また、もちろん、ITシステムやプロセスだけではなく、組織構造、職場環境や雇用環境などの様々な要因が、企業戦略の達成に深く絡み合っていることは言うまでもありません。
いずれにしても、抽出された課題に対して、「戦略の転換か?」「業務の改善か?」「ITの導入か?」「人事制度の変更か?」と課題を区分し、それぞれの課題に適した解決策を考案し、導入・適用後に効果が計測できることを前提とすることが重要です。この解決策を考案することが、企業が目指すあるべき姿(To-Be)を構築することであり、導入・適用後の効果をいかに計測するかということが、更なる改善を目指すきっかけとなるのです。
この計測・評価を行うというテーマについては、次回のプロセス評価フェーズでご紹介いたします。
ここで、筆者は、「現状(As-Is)モデルは描く必要があるのか?」「To-Beモデルだけを常に描けばいいのではないか?」という言葉をよく耳にします。しかし、現在のAs-Isに対し、To-Beへ向けて対策を打ったとしても、そのTo-Beは時間が経過し、将来の時点においてAs-Isとなることは明白です。従って、As-IsやTo-Beという言葉にとらわれることなく、目の前のビジネス・プロセスの中から課題を抽出し、それぞれに最適な解決策を模索していくことを継続的に実行する「BPMサイクル」を実施していくことが非常に重要だと考えます。
さて、このプロセス導入フェーズにおいて、課題のある業務を「(ITを使わずに)いかに改善するか?」という命題がありますが、その命題に対するアプローチは多岐に渡るため、それらのご紹介は、一部に留めたいと思います。今回は、「経営と情報の架け橋」を実現するという観点で、ビジネス・プロセスから抽出された課題をITで解決するアプローチ、つまりは、ビジネス・プロセスからシステム化要件を抽出するアプローチについてご紹介します。
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著者プロフィール
IDSシェアー・ジャパン株式会社 渡邉 一弘
工場でのHDD製品設計を経験後、SEとしてシステム構築を担当。日々、現場の業務とシステム機能の「ギャップ解消」に悩み、業績に直結するシステムやROIを求める経営者に対し、解決策として見出したのが「プロセス管理」というキーワード。現在は、IDSシェアー・ジャパンにてプロセス管理ツール「ARIS」のプロセスコンサルタントとして従事。
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