TOP書籍連動> OpenSolaris開発コミュニティ(1)
Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く
Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く

第2回:コミュニティとロードマップ
著者:風穴 江   2005/6/23
1   2  3  次のページ
OpenSolaris開発コミュニティ(1)

   Solarisがオープンソース化されることによって、新しく生み出されることになるのが「OpenSolaris 開発コミュニティ」(名称が決まっているわけではないので、仮にこう呼んでおく)である。
編集局注: 本記事は2005年6月9日発売の「Solaris 10 完全攻略ガイド」(インプレス刊)に掲載されたものです。OpenSolarisは2005年6月14日(米国時間)に公開されました。

   すでに述べてきたように、サンにとってSolarisのオープンソース化というのは、ライセンスの放棄や市場からの撤退といったような後ろ向きなものではなく、Solarisの開発を今後も強力に推し進めていくための積極策として位置づけられている。従ってサンにとっても、OpenSolaris開発コミュニティが、オープンソースソフトウェアの開発コミュニティとして十分に機能するかどうかは、重要な意味を持つ。すなわち、オープンソース化に踏み切った決断が正しかったのかどうかは、このコミュニティに多数の技術者(特にサン以外の技術者)が集まり、活発に活動が繰り広げられるようになるかにかかっているのである。

   いくらソフトウェアがオープンソースライセンスで公開されても、実際の開発活動がオープンに、かつ活発に行なわれるのでなければ、前述のようなオープンソース化による「メリット」の大部分は享受できないか、あるいは享受できたとしても限定的なものになってしまうことになる。

   こうしたことの重要性はサンも十分に理解しているようで、SolarisのソースコードをOpenSolarisとして公開した後に、いかにしてOpenSolarisの開発コミュニティの活動を軌道に乗せるかということに腐心している様子がうかがえる。

   たとえばサンは、OpenSolaris の開発形態として、以下のような2段階のステップを経てオープンソース的な開発コミュニティに移行することをイメージしている。

   まず、OpenSolaris の公開直後や、その後しばらくの間は、主な開発作業はサンが行ない、社外からはバグの報告やパッチの提供を受けるという形になる(図3)。これはある意味、当然であり、非常に現実的な考え方である。というのも、Solarisは巨大なソフトウェアであり、そのため、外部の人間がその全容を理解し、開発作業に深く関わるようになるには、それなりに時間がかかるからだ。それまでは、Open Solarisの公開前の体制と同様に、サン内のSolaris開発部隊が開発作業をリードしていかざるを得ない。従って、図のように、中心的な開発プロセスはサン内の人間が担当し、外部からは、バグの報告やパッチの提供などを受けるというのが、まずはもっとも現実的なやり方だろう。

初期の開発形態
図3:初期の開発形態


   ただし、あくまでもこの形は過渡的なものであり、できるだけ速やかに、本来目指す形に移行する必要がある。もちろんサンもその必要性は認識しており、そのための一助として、当初から協力できる外部の人間を集めて「パイロットコミュニティ」を立ち上げようとしている。ここで言うパイロットコミュニティとは、将来的に目指すオープンソース的な開発コミュニティの「種」となることを期待して、あらかじめ「仕込んで」おくものである。「仕込む」と言えば聞こえは悪いが、方法論としては非常に現実的である。単にオープンソースにして、自然発生的に開発コミュニティが育っていくのを待つという方法もあるだろうが、それでは、うまくいくかどうかは環境次第ということになってしまう。明確な目的を持ってオープンソース化に踏み切ったサンとしては、それでは甚だ心許ないし、また、できるだけ早くオープンソースのメリットを享受できる形にしたいという思いもある。そのため、ある程度の形が見えてくるまでは、むしろ積極的にコントロールするぐらいのほうが、現実的には有効だろう。

1   2  3  次のページ

書籍紹介
Solaris 10 完全攻略ガイド
Solaris 10 完全攻略ガイド 本格UNIX OSを無償でパソコンにインストール!
世界中の大規模商用システムで使われている本格UNIX OS「Solaris」が、無償でパソコンにインストールして使える! デスクトップ利用からサーバー設定、Solaris 9からの移行まで解説。ソフトがすべて入ったインストールDVD-ROM&CD-ROM付き。Linuxの次はSolarisに挑戦しよう!
発売日:2005/06/09発売
販売価格:\2,363(本体 \2,250+税)
風穴 江
著者プロフィール
風穴 江
TechStyle編集長、コラムニスト。1990年から「月刊スーパーアスキー」誌(アスキー刊)の編集に参加。GNUプロジェクトなどの動向を担当していた関係から、Linuxは、それが公開された直後からウォッチし続けている。1998年にフリーランスジャーナリストとして独立。そのかたわら、日本で初めてのLinux専門情報誌「月刊Linux Japan」の編集長を務める。2002年3月には「TechStyle」を立ち上げ、編集長に就任。2003年8月から、オープンソースビジネスのための情報サービス「Open Source Business Review」を提供している。


INDEX
第2回:コミュニティとロードマップ
OpenSolaris開発コミュニティ(1)
  なぜオープンソースか?
  OpenSolarisのロードマップ