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徹底比較!! Solaris/Linux/BSD
徹底比較!! Solaris/Linux/BSD

第1回:歴史とアーキテクチャを比較してみる
著者:シンクイット  紙屋 伸成   2005/6/2
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3つのOSを比較

   Solaris 10が無償でダウンロード提供され、ソースコードが公開されてオープンソースOSとなることが発表されました。これまで代表的なオープンソースOSはLinuxやBSD系列のUNIX互換OSでしたが、安定性・信頼性に評価のあるSolarisがそこに乗り込んでくることにより、選択肢の幅が増えて市場が活発になるのではと予想されます。本記事では、これらのOSを選択するシーンで判断材料となる情報を提供します。

   今回、3種のオープンソースOSの代表として以下のOS(ディストリビューション)を取り上げました。基本的には無償で利用できるものを選択しました。また、実際に記事で使用しているのはすべてx86アーキテクチャ用です。


歴史

   それぞれの歴史を比較する前に、まず3つのOSの基となったUNIXについて解説しておきましょう。もちろん、「そんなの知ってるよ」という方は読み飛ばしてかまいません。また、「過去なんてどうでもいいぜ、今が大切なんだよ」という方もお先にどうぞ。


UNIXの歴史

   さて、「UNIX」は開発当初は「Unics」と呼ばれ、「uni」と「cs」からなる造語でした。「Uni」はご存知のとおり「ひとつ」という意ですが、「cs」って何だよと思われるでしょう。それはひとまず置いておきまして、「Uni」の反対の「複数」という意の言葉、「Multi」を冠する「Multics」というシステムが遠い昔にありました。

   Multics は「MULTiplexed Information and Computing Service」の略で、MIT、General Electric、AT&T ベル研究所によって開発されたマルチタスクのOSです。ただし、あまりに巨大なシステムであったため(PL/Iで30万行!)、重すぎて使い物にならなかったそうです。そこでベル研究所のKen ThompsonがMulticsを基に機能を削除し、軽いOSを作り上げました。Multicsの特長であるマルチタスクの機能も削除してシングルタスクのOSとなったため、「Multi」の反対の「Uni」を冠して「Unics」と名づけたのです。

   UNIXは当初アセンブリ言語で書かれていましたが、ベル研究所のDennis M. Ritchie によってC 言語で書き直されました。正確にいうとUNIXを他のコンピュータに移植する際に新たな言語が必要となり、RitchieがC言語を開発したという流れです。盛衰の激しいコンピュータ業界において今でも残っているUNIXとC言語はここで生まれたのです。


BSDの歴史

   Solaris 10の記事で最初にBSDの話をするのはおかしいのですが、その方が流れがわかりやすいと思いますのでちょっと我慢してください。UNIXがC言語で書かれ、さらにソースコードも公開されていたため、さまざまなコンピュータに移植され、そしてさまざまな系統が生まれました。本家AT&T以外で作られたUNIXとして代表的なのはBSDでしょう。

   BSDは「Barkley Software Distribution」の略で、UNIXを開発したThompsonの母校でもあるカリフォルニア大学バークレー校で作られました。後にサン・マイクロシステムズの創立者のひとりとなるBill Joyも大学院生としてBSDの開発に関わっています。

   本家AT&Tが開発したUNIX Version 6を基に最初のリリースとなる1BSDがリリースされ、2BSD、3BSD、4BSDとバージョンアップされていきます。4BSDはARPAの支援もあり、4.2BSDのTCP/IPネットワークの機能はインターネットの基盤となりました。また、4.3BSDからはFreeBSDの基となる386BSDや、NetBSDなどが派生しています。

   現在ではオープンソースOSとしてのシェアはLinuxの登場により小さくなっていますが、古くからの歴史あるOSであり、現在のインターネットの基盤を構築したOSなのです。


Solarisの歴史

   SolarisもUNIXの系統から生まれたものです。その歴史を見てみましょう。本家のUNIXであるAT&TのUNIXはVersion 7まで開発が行なわれました。その後、商用のUNIXとしてSystem III、System IV、System Vと続きました。System Vと4.3BSDは同じ時代にリリースされ、商用のSystem Vと無償のBSDという構図が展開されました。企業などではSystem Vが使われ、大学や研究機関ではBSDが多く使われていたようです。

   1987年、サン・マイクロシステムズはAT&Tと提携し、System V Release 4、いわゆるSVR4の開発を行ないます。では、サン・マイクロシステムズが開発しているSolarisはSystem V系なのでしょうか?

   実は、それはちょっと違うといわれています。サン・マイクロシステムズでは自社のハードウェアに載せるOSとして、SunOSを提供していました。そしてSunOSの基となったのは4.1BSDです。その後SunOSもバージョンアップが繰り返され、SVR4の機能を取り込んだSunOS 4.1が「Solaris 1」としてリリースされたのです。つまりSolarisはBSDとSVR4のどちらでもなく、両者が統合された新たなOSといってもよいでしょう。

   ちなみにSolarisで「uname」コマンドを使用すると「SunOS」と返ってきます。はじめてSolarisを使う方は混乱するかもしれませんが、バージョンに関しては表1のような対応となっています。

Solaris SunOS
Solaris 1.x SunOS 4.1.x
Solaris 2.x SunOS 5.x
Solaris 2.6 SunOS 5.6
Solaris 7 SunOS 5.7
Solaris 8 SunOS 5.8
Solaris 9 SunOS 5.9
Solaris 10 SunOS 5.10

表1:SolarisとSunOSのバージョンの対応

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著者プロフィール
株式会社シンクイット  紙屋 伸成
大学のときに研究室でUNIXシステムと出会い、以後そこから抜け出せずにいる。IT系出版社、通信会社と渡り歩き、シンクイットに所属。企業システムにおけるオープンソースの位置づけを日々考えている。


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第1回:歴史とアーキテクチャを比較してみる
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