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システム企画担当者のためのBIシステム導入の勘所
〜速く、安く、確実に導入するには〜 |
第2回:BIシステムの特性を知る−基礎知識編(1) BIシステム導入の目的
著者:アイエイエフコンサルティング 平井 明夫 2004/11/29
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はじめに
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読者の皆さん、こんにちは。前回は、オープンソースのBIツール「OpenOLAP」を使用して、BIアプリケーションの世界を体験していただきました。
今回からは、皆さんにBIシステムの特性を知っていただくため、4回にわたって基礎知識編をお送りします。その1回目の今回は、そもそもBIシステムは何のために導入するのかについてお話します。
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BIとは
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BIという言葉は初めてでも、皆さんはデータウェアハウスという言葉はご存知かもしれません。BIも、データウェアハウスも、同じ情報系システム分野に属する名前です。
BIもデータウェアハウスもその目的は、会計、販売、顧客、在庫、購買、生産といった業務系のデータを取り出し、色々な形で活用するというものです。比較的わかりやすい例として、販売分析があります。販売分析では、販売管理システム(業務系)から売上実績データを取り出し、各製品の売上全体に占める割合や前年の同じ月の実績との比率のレポートをつくって、営業担当者などが方針を決める際の基礎データとして活用します。
以下に、業務系データの分析、活用の主要なパターンを列挙しておきます。太字が業務系データの種類で、ハイライトが分析の内容です。この内のいくつかは、今回の後半で詳しくお話します。
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- 会計データを活用して、利益/コストを部門別に分析する。
- プロジェクト管理データを利用して、利益/コストをプロジェクト別に分析する。
- 販売管理データを利用して、売上実績/目標達成度を部門/製品/顧客別に分析する。
- 生産管理のデータを利用して、生産高/生産性/計画達成度を部門/製品別に分析する。
- 在庫管理のデータを利用して、在庫量/在庫金額/不良在庫を部門/品目別に分析する。
- 購買管理のデータを利用して、購入金額/納期/不良率を部門/仕入先別に分析する。
- 顧客管理のデータを活用して、顧客/ウエブサイト会員の分布/行動を年齢などのプロファイル別に分析を行う。
- イーコマースのデータを活用して、商品/コンテンツの人気度やキャンペーン効果の分析を行う。
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このように業務系データの種類に応じて色々な分析・活用パターンがあるわけですが、システム構築を行う際の基本的な考え方は同じです。
それでは、BIとデータウェアハウスの違いは何でしょうか。一言でいえばシステム構築における守備範囲による違いということになります。大雑把にいえば、業務系のデータを取り出し、一元管理するための大規模データベースに格納するところまでがデータウェアハウス、データウェアハウスから分析目的別の小規模データベースを作成し、検索・レポートツールを使って分析を行う部分がBIということになります。(図1)
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図1:データウェアハウスとBI
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戦略型システムとしてのBI
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次に、企業の情報システム全体におけるBIの位置づけについてお話します。
皆さんは、ROI(投資対効果)という言葉を聞いたことがあると思います。この言葉自体はITに限らず一般的に使われる用語で、投資(使ったお金)に対して、どのくらい効果(儲けたお金)があったかという比率を意味します。情報システムの導入する場合も同じように、導入するのに使った費用に対して、会社の売上がいくら増えたか、あるいは、会社のコストがいくら節約できたたというROIが問題にされます。
このような情報システム導入におけるROIをどういうやり方で計算するかという観点から情報システムを分類すると以下の3つのタイプにわかれます(JUAS「ユーザ企業IT動向調査報告書」による分類)。
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まず、「業務効率型」システムですが、これは省力化、自動化、時間の短縮化、ペーパーレスなどコスト削減を目的とするものです。皆さんの多くが現在開発に携わっている業務系システムのほとんどは、ここに分類されます。このようなシステムの仕様は、システム導入以前に手作業もしくはそれまで使っていたいわゆる「レガシー」なシステムで行っていた業務を再現しつつ自動化、効率化するというのが基本になります。従って、ROIのI、つまり効果は、いくら人手が減ったか、どの位作業時間が短縮されたかという点で測ることになります。このような効果を、多くの場合人件費に換算して、システム導入費用との比較でROIを判断することになります。
2番目の「インフラ型」は電子メール、ファイルサーバーなど業務に欠かせない基盤となるシステムのことです。このタイプのシステムの導入費用が高いか安いかは、乱暴な言い方をすると、「人並み」であればいくら位であるかが基準になります。つまり、ROIという観点からすると、コピー機やプリンターの延長線上として考えられるということです。コピー機がそうであるように、「インフラ型」のシステムは広く普及するにつれて、導入コストの大体の「相場」というものができてきます。多くの場合は、従業員一人当たりいくらという金額になります。
しかし、普及し始めのころはこの「相場」がないため、導入担当の方はいくら位が適切な費用なのかを考えるために頭を悩ますことになるわけです。最近の例としては、ファイアウォールなどセキュリティ関係のシステム投資がこれにあてはまると思います。無いと困るけれど、どこまで高機能で高額なシステムが必要かどうかの判断は、その企業がどこまでセキュリティに対して熱心かという、極めて「アバウト」な基準で決まることになります。
さて、いよいよこの連載のテーマであるBIシステムを含むものが3番目の「戦略型」です。この「戦略型」システムは、ROIの観点からは3つのタイプの中でもっともやっかいものになります。なぜだと思いますか?それは、効果が、お金や時間といった一般的な尺度では測れないからなのです。例えば、前段で例として挙げた販売分析の場合、「期待」は売上向上ですが、いくら売上が増えるかという「効果」については、残念ながらあらかじめ計算することはできません。また、仮にシステム導入後に売上が増えたからといって、それが全てシステム導入の効果であると決め付けることもできないわけです。
それでは、どうやって効果を測定するのでしょうか。BIを始めとする「戦略型」システムの導入の前提には、読んで字のごとくその企業の「戦略」が必要です。この「戦略」とは、単に売上を増やすというあいまいなものではなく、例えば、お客様からのクレームを分析して製品や接客を改善し顧客満足度を向上させることにより売上を増やすというような、具体的プロセス(アクションプラン)が決まっているものでなければいけません。
逆にきちんとした「戦略」さえあればそれに基づいた評価ができ、それが戦略型情報システム導入におけるROIになります。しかし、評価のためにはやはり何か数値目標が必要ですが、このような評価をするための基準として設ける数値のことをKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)といいます。
KPIは、数量や金額といった一般的な単位になることもありますが、例えば顧客満足度などといったようなものをKPIにする場合は、架空の単位をそれ専用に決める場合もあります。正しく設計されたBIシステムには、このKPIをモニタリング(随時測定)する機能が必ず含まれているはずですし、この機能を含めるためにはBIシステム導入の前提となる「戦略」が存在していなければなりません。即ち、BIシステムを設計することは、その企業の戦略を理解し、具体化することだといえます。
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著者プロフィール
株式会社アイエイエフコンサルティング 平井 明夫
日本DEC(現hp)、コグノス、日本オラクルを経て現職。一貫してソフトウェア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。
特に、データウェアハウス、BI、OLAPを得意分野とする。現在、企業業績管理、管理会計などデータ分析ソリューションの短期導入を可能にするテンプレートやパッケージの開発を行っている。
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