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ITインフラの新しい展望
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第3回:iSeriesのシステム・アーキテクチャーに見る仮想化技術
著者:日本アイ・ビー・エム  安井 賢克   2005/11/7
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はじめに

   「IBM Systems Agenda」と呼ばれるITインフラの新しい展望を構成する要素の1つに「Virtualization」があります。直訳すれば「仮想化」となるわけですが、今回はビジネス・サーバーとして、もしくはあらゆるサーバー機能を統合して提供できるユニークなマシンとして、従来から多くのお客様の支持を得ているIBM eServer iSeriesが搭載する仮想化技術について、その新旧両方の側面について簡単に見ていきます。


仮想化技術がもたらす統合性

   そもそも仮想化というと何を思い出すのでしょうか。IBM汎用機のオペレーティング・システムのMVS(Multiple Virtual Storage:多重仮想記憶装置)を思い出すのかもしれませんし、新しいところではJVM(Java Virtual Machine)かもしれません。

   前者は実際には存在していないメモリーをより大きく、しかも複数の空間が存在しているかのように見せかけています。後者はJavaという言語を直接理解できる専用のマシンをソフトウェアの力を借りて作り出しています。

   いずれにしても、ユーザーにとってわかりやすくそして使いやすくするために、実際に存在しているものの姿をより大きく見せたり、まったく違うように見せたりするための技術だといえます。そして、昨年半ばにPOWER5プロセッサーを搭載することでモデルラインナップを一新したiSeriesには、単なるパワーアップに留まらず、数多くの仮想化技術が盛り込まれています。

   近年の仮想化のうねりは何故発生したのでしょう。それは仮想化技術が提供するわかりやすさや使いやすさの世界とは逆の状況がITの世界に発生しつつあるからです。

   皆様の会社内に何台のサーバーが設置されているのか、そして何種類のオペレーティング・システムが稼動しているのか思い浮かべてみてください。当初は会計や販売管理など、いわゆる基幹業務を処理するためのマシンしか存在していなかったかもしれません。しかしその後、クライアント/サーバー型コンピューティングに対応したりインターネット対応したりしていくうちに、ファイル・サーバーやプリンター・サーバーを設置したりファイアウォールやHTTPサーバーを追加したりしてきたのではないでしょうか。

   そしてそれぞれの要件を満たすために、その都度「最適な」システムを選択/追加されてきたと思います。しかしながらこの「最適化」されたシステムは、長期的視点から俯瞰(ふかん)して、最適な姿になっているかと問われれば、残念ながら多くのケースでは「ノー」という答えになるようです。

   なぜならば、サーバーの稼働率が極めて低かったり、またITインフラそのものが複雑なネットワークを前提にしたりしているために、日々のオペレーションが非常に繁雑で間違いやすいものになっている可能性が高まってきているからです。

   iSeriesの特徴である統合性はこのことに対する1つの解になります。サーバーとして必要となるあらゆるタイプの機能やアプリケーション環境を最初から搭載しているからです。先に述べた数多くのサーバー、数多くのオペレーティング・システムをiSeries1台に統合することができます。

   iSeries上で稼動するオペレーティング・システムには、i5/OS (OS/400 )の他に、POWERプロセッサー版Linux、インテル・プロセッサー版Linux、AIX 、Windowsが含まれています。そして物理的には1台のマシンでありながら、ユーザーから見るとまったく別のマシンを最大同時に254台稼動させることができます。

   ここで重要なのは、ユーザーから見えるのは実際のマシンではない、すなわち仮想化されたマシンであるということです。この仮想化されたマシンは、実際のマシンを論理的に区切ったものであることから論理区画(もしくは単に「区画」)と呼ばれ、その技術をLPAR(Logical PARtitioning)と呼んでいます。

   それぞれのサーバーに求められるハードウェア資源を合算しただけの規模のiSeriesを導入するのであれば、コストメリットは生じません。機能ごと、アプリケーションごとにサーバーを設置する場合は、それぞれのピーク時ワークロードを見極めて、相応の規模のシステムを検討することになるでしょう。しかしながら実際には、すべてのサーバーが同時にフル稼働することはありません。

仮想化の有無
図1:仮想化の有無

   このことをもう少し具体的に見てみましょう。例えば1台のiSeries上に、会計システムが稼働するi5/OS区画とeコマース・システムを受け持つLinux区画を構成するとします。

   どちらの業務もピーク時にプロセッサー1.5個分のワークロードが発生するが、それ以外は0.5個分のプロセッサーがあれば十分だとします。そして会計のピークは夜間、eコマースのピークは日中にあるならば、iSeriesに求められるプロセッサー数は合計2個で済ませることができます。

   すなわち、日中はLinux区画に1.5個のプロセッサー、i5/OS区画に0.5個のプロセッサーを割り当てておき、夜間は1個分をi5/OS区画に移動します。この資源の移動は人手で行うことも可能ですが、最新のiSeriesではシステムがワークロードの状況を見ながら自動的にチューニングを行います。

   そしてLinux区画が使用するディスク装置やテープドライブなどのハードウェア資源もLinux側で独自に管理するのではなく、i5/OSが管理する資源を借用することで、Linuxとしてのハードウェア管理の手間をほとんど不要にすることができます。サーバーを分離すれば、それぞれに2個のプロセッサーを搭載したマシンを2台用意しなければなりません。そしてI/O機器などについても個別に用意し、管理することが必要になります。

   ここまで読んで、コストや運用の手間がどれほど効果的に削減されるのかというイメージをつかんでいただけたでしょうか。ここではたまたまLinuxを例に取り上げましたが、詳細は違うものの、AIXやWindowsについてもハードウェアを統合することで、コストや運用の手間の削減が期待できるのです。

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「iSeries」「i5/OS」「OS/400」「AIX」「eServer」は、米国または米国内外におけるIBM Corprationの商標または登録商標です。

「Java」「JVM」「Linux」「Windows」その他の社名・製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
日本アイ・ビー・エム株式会社 安井賢克
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  安井賢克
日本アイ・ビー・エム株式会社 iSeries事業部・製品企画所属
1980年入社。1984〜1986年に米国カリフォルニア州サンノゼ、1999年〜2000年にiSeries開発部門のある同ミネソタ州ロチェスター駐在の後、2003年より現職。iSeries関連のソフトウェア製品企画を担当。


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INDEX
第3回:iSeriesのシステム・アーキテクチャーに見る仮想化技術
IBM Systems Agenda
  仮想化されたマシン
  仮想化された記憶装置
ITインフラの新しい展望
第1回 IBMのITシステムのパラダイムシフト
第2回 IBM System z9 - IBMオープン・メインフレームの新しい潮流
第3回 iSeriesのシステム・アーキテクチャーに見る仮想化技術
第4回 IBM System p5の仮想化機能とオープンへの取り組み
第5回 xSeries、BladeCenterの仮想化技術とオープン化への取り組み
第6回 IT基盤の展望 IBM のオープン化と先進技術への取り組み