チョコレートの国の侍登場!

2008年5月31日(土)
原田 季栄

伝えるためにはどこへでも

オープンソースの仕事をしている関係で、よく海外の会議の参加案内(Call For Paper)を受け取ります。FOSDEM'08の場合もそのひとつでした。TOMOYO Linuxは昨年から「メインライン化」と呼ばれるLinuxの標準化への提案作業に取り組んでいます。

アメリカ、カナダなどで何度か発表を行っており、Linuxの開発関係者にはそれなりに知られるようになりましたが、ヨーロッパ圏での発表はしていません。ぜひヨーロッパの開発者にTOMOYO Linuxを伝えたいと思いました。

「情報発信」とか「世界に発信」という言葉があります。自分でWebサイトを作り、どこかにアップロードすれば、なるほど確かに世界に対して自分の情報を公開していることになるかもしれません。しかし、本当に「発信」するためには、その場所を知ってもらい、また見ようと思ってもらわないといけません。

私は昨年、OSC2007 Osakaに行きました。別にそこにTOMOYO Linuxの利用者やファンがいて歓迎してくれるわけでもありません。時間をかけて会場に行き、一生懸命話をしても、名前の由来についてブログでからかわれたりします。

でも、それで良いのです。何かを期待して、何かを求めてそこに行っているわけではないから...。自分が取り組み、良いもの、使ってほしいと思っているものを「伝えたい」からそこに行くのです。「伝えたい」という気持ちは、どんなWebサイトでも表現できません。だから、伝えに行くのです。東京でも大阪でもヨーロッパでも同じです。

FOSDEM'08が開催されたのは、2008年の2月23、24日の2日間でしたが、採用通知のメールを受領したのは、開催まで3週間をきった2月4日でした。本来の採用通知の連絡はもっと早いのですが、海外のオープンソース関連の会議の運営はだいたいこんな感じです。急ぎ旅行の手配を依頼し、ベルギーやブリュッセルについてインターネットで情報を調べてみました。

そこでわかったのは「公用語はフランス語とオランダ語(一部の地域ではドイツ語も公用語となっている)」「公共交通機関が発達している」「通貨はユーロ(当時のレートで1ユーロは約160円)」「気温は日本とあまり変わらない」「AC電源は220Vで、日本の家電製品を使うにはコネクタの変換プラグと(対応していない場合)変圧器が必要」「空港はブリュッセル国際空港で、市内からタクシー移動で40ユーロ程度(7~8,000円)」「レストランやタクシーなどでは基本的にサービス込みの料金となっているのでチップは不要(よいサービスを受けたらおつりの小銭を残す程度)」といったことです。

まったく初めての場所ということでガイドブックもあったほうが良いと思い、Amazonで「地球の歩き方」を購入しました。情報を探していたところ「ベルギー観光局」のWebサイトを見つけました。

豊富な情報が日本語で掲載されているだけでなく、オンラインで申し込むとパンフレット類を郵送してくれます。至れり尽くせりです。こちらも早速、申し込み、「地球の歩き方」とともに出国前に届きました。

電源関係については、持参した電気製品(ノートPC、携帯電話、シェーバー)がいずれも海外対応製品だったので、CタイプのACアダプタ変換プラグと「合体ロボ」タイプのテーブルタップ1個を持参しました。気温は東京とさほど変わらないのでその点は気楽です。

出国、最初のトラブル

ということで「旅の準備」は順調に進んでいましたが、肝心の発表資料の準備は難航していました。

昨年はEmbedded Linux Conference(組み込みLinux)、Ottawa Linux Symposium(Linux開発者国際会議)、PacSec(セキュリティがテーマの国際会議)の3件でTOMOYO Linuxの発表をしていますが、それらの資料は「ヨーロッパ圏の人々にTOMOYO Linuxを紹介する」という今回のミッションからは不十分です。

私は全体の構成やシナリオが固まらないと細部を書き込めないほうなので、時間だけが経過し資料が書き始められないというつらい日々が続きました。テーマが決まり、講演資料のスタイルが決まり資料を書き始めたのは、発表10日前くらいで、出国時点では資料は6割程度という状況でした。

とにもかくにも、出国の2月21日を迎え、成田空港で6万円分ユーロに両替して機内の人となりました。今回はフランクフルト経由のANAを利用しましたが、幸いフランクフルトまではたっぷり時間があります。フランクフルトに到着するまでにはドラフト程度に仕上げたいと思い、席に座るなり作業に専念していました。

成田をたって、確か3、4時間が経過したころだったと思います。最初の災難に遭遇しました。編集していたノートPCの画面が突然一面ブルーになったのです。いわゆる「ブルースクリーン」です。これまで何度も経験したことがありますが、表示されている白抜きの文字は、「memory hardware error」のような内容で、それを見たのは生まれて初めてです。ぼうぜんとして、顔をあげた先には機内の高度表示計があって、3万フィートでした(そんなことを覚えても仕方ないのですが)。

TOMOYO Linuxプロジェクト
北海道室蘭市生まれ。1985年北海道大学工学部応用物理学科卒。同年NTT(横須賀研究センター)入社。現在の所属は、株式会社NTTデータ技術開発本部。2003年よりオープンソースの研究開発に取り組む。「使いこなせて安全」を目指すTOMOYO Linuxプロジェクトのマネージャ。

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