監視ソフトウエアをどう選ぶか

2008年12月4日(木)
寺島 広大

監視ソフトウエアで何を監視するのか

 システム全体の稼働状況をリアルタイムに把握し、適切な運用を行うためには、システム監視ソフトウエアが必須ですが、ソフトウエアの選定に参考となるまとまった情報が少なく、個別にシステム担当者が情報収集と検証を行って選定しているのが現状です。本連載では、オープンソース、商用の監視ソフトウエアをいくつか取り上げ、各ソフトウエアを機能別、種類別などで分類し、解説します。

 まず、監視には、大きく分けて「死活監視」と「リソース監視」の2つがあることを知っておきましょう。

 まず、死活監視では、Pingによる応答監視、プロセスの起動監視、ポートの応答監視などにより、システムやサービスが適切に稼働しているかどうかを監視します。死活監視を有しているソフトウエアは、障害検知を行い、管理者への通知やスクリプトを実行する機能もあわせて持っている場合が多くあります。死活監視により障害を検知した場合、管理者への通知や自動復旧を行うことで、障害対応にかかる時間を短縮し、結果としてサービスのダウンタイムを短くすることができます。

 一方リソース監視は、CPU、メモリ、ディスク、ネットワークなど、OSやハードウエアのリソース使用状況を収集する監視です。リソース監視を有しているソフトウエアは、収集した情報を蓄積し、グラフを表示する機能をあわせて持っている場合が多くあります。リソース監視を行うことで、長期間のシステム負荷状況を把握することが可能となり、システムリソースの分配や増強を適切に行うことができるようになります。

監視ソフトウエアの種類(統合型、特化型)

 監視ソフトウエアには、大きく分けて「統合型」と「特化型」の2つに分けることができます。

 統合型は、死活監視とリソース監視の両方の機能を有している場合がほとんどです。そのため、死活監視の結果を蓄積し、グラフとして表示することで過去のサービス稼働状況の統計を見ることができたり、リソース監視でしきい値を設けて超えた場合には管理者へ通知を行うなど、死活監視、リソース監視の両機能のメリットを生かすことが可能です。

 また、ソフトウエアによっては監視対象の自動検知機能やネットワークマップ機能、稼働率計算機能などの付加価値の高い機能を有していることも珍しくありません。多機能である反面、ソフトウエアが複雑化しやすいために、特化型と比較すると導入/運用が難しい傾向があります。

 特化型は、死活監視とリソース監視のどちらかの機能のみを有していることがほとんどです。各ソフトウエアが得意とする機能に関しては、統合型よりも機能が豊富で設定が簡単であることが多く、適材適所で使用することによりメリットがあります。

 また、機能が必要最低限に絞って開発されているため、統合型と比較すると導入/運用が簡単にできる傾向があります。ただし、死活監視機能を持った特化型のソフトウエアと、リソース監視機能を持った特化型ソフトウエアといったように、複数の特化型ソフトウエアを併用する場合は、監視画面の閲覧性や、設定の管理面から考えて統合型を使用した方が良い場合があります。

 次ページからは、オープンソースと商用の監視ソフトウエアをピックアップして紹介します。

オープンソースの監視ソフトウエア(Nagiosほか)

 オープンソースソフトウエアの監視ソフトウエアとして、10個の製品を紹介します。

 1つ目が、Nagios(http://www.nagios.org/)です。NagiosはもともとNetSaintという名称で開発されていました。オープンソースの監視ソフトウエアの中でも実績があり、日本語の情報も充実しているのが特徴です。プラグイン形式で監視機能を追加することができ、コミュニティによって作成されたプラグインが多数公開されています。専用エージェントを用いたサーバーのリソース監視と、エージェントレスのネットワーク監視を行うことができます。標準ではグラフ生成の機能を有しておらず、グラフを表示するためには別途プラグインの導入が必要です。

 2つ目がHobbit Monitor(http://hobbitmon.sourceforge.net/)です。もともとBigBrotherのアドオンソフトであるbbgenツールキットの後継ソフトウエアでしたが、その後、アドオンではなくスタンドアロンとして動作するようになり名称が変更されました。BigBrotherの機能を引き継いでおり、エクステンションなどの既存の資産も活用することができます。Hobbit Monitor自体の日本語の情報は少ないですが、BigBrotherなどの情報を流用できる部分もあります。専用エージェントを用いたリソース監視と、エージェントレスのネットワーク監視を行うことができます。監視データはRRDToolに蓄積され、グラフの表示が可能です。

 3つ目がZABBIX(http://www.zabbix.com)です。ZABBIXはZABBIX SIAが開発を行っている統合監視ソフトウエアです。ソフトウエア自体はオープンソースで公開されており、利用にあたっては商用サポートを利用することも可能です。本家サイト(http://www.zabbix.com)にはフォーラムが設置されており、活発に質問が行われています。日本のコミュニティ(http://www.zabbix.jp)も存在し、日本語化やWebサイト上のフォーラムによるサポートなどが実施されています。専用エージェントを用いたサーバーのリソース監視と、エージェントレスのネットワーク監視を行うことができます。データの保存にRDBMSを利用しているため、動的なグラフの生成が行えるなどデータを活用しやすいことが特徴です。

 4つ目がHinemos(http://www.hinemos.info/)です。Hinemosは独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の平成16年度オープンソースソフトウエア活用基盤整備事業の委託を受け、NTTデータ株式会社にて開発がはじめられた統合運用管理ツールです。管理ツールとして開発されているため、監視以外の機能も多数含まれていますが、本連載では監視機能のみに絞って紹介します。日本で開発が行われているため日本語の情報は非常に多いことが特徴です。専用エージェントを利用したサーバーのリソース監視と、エージェントレスのネットワーク、SNMP監視を行うことが可能です。監視機能だけでなくジョブ管理やスケジューラの機能を搭載していることが特徴です。

 5つ目がZenoss(http://www.zenoss.com)で、Zenoss社が開発を行っているソフトウエアです。コアとなるZenoss Coreはオープンソースで公開され、商用向けの機能を備えたZenoss ProfessionalやZenoss Enterpriseが有償で販売されています。エージェントレスでネットワーク監視とSNMP監視を行うことが可能です。Nagiosプラグインを利用することが可能なため、これまでの資産を活用することが可能です。

オープンソースの監視ソフトウエア(Groundwork Monitorほか)

 6つ目がGroundwork Monitor(http://www.groundworkopensource.com/products/)で、GroundWork MonitorはGroundWork Open Source社が開発を行っているソフトウエアです。Nagios、Cacti、RRDTool、Ganglia、Nediなどのオープンソースソフトウエアを組み合わせて開発されており、それらのソフトウエアを一元管理することができます。オープンソースとして公開されているCommunity Editionと、商用向けとしてProfessional EditionとEnterprise Editionが有償で販売されています。日本のコミュニティも存在しており、Webサイト上のフォーラムなどが公開されています。

 7つ目がHyperic HQ(http://www.hyperic.com/)で、Hyperic社が開発しているソフトウエアです。オープンソースとして公開されているOpenSource Editionと、商用向けとして有償で販売されてるEnterprise Editionがあります。専用エージェントを利用したサーバーのリソース監視と、エージェントレスのネットワーク、SNMP監視を行うことが可能です。また、Hypericforgeというサイトで多数のプラグインが公開されています。

 8つ目がCacti(http://www.cacti.net/)です。CactiはMRTG(Multi Router Traffic Grapher)の代替として登場したグラフ生成ソフトウエアで、SNMPエージェントから情報を収集してグラフを表示します。MRTGと比較して、Webから設定を行うことができる、過去のグラフを参照するなどさまざまなメリットがあります。MRTGを代替するソフトウエアとして注目を集めており、Nagiosとの組み合わせで使用されることも多くあります。

 9つ目がMunin(http://munin.projects.linpro.no/)です。Muninはサーバーとノードと呼ばれる専用のエージェントを利用したグラフ作成ソフトウエアです。専用のエージェントを利用するため、SNMPを利用した場合に比べて動作が軽く、また初期状態で一般的なグラフ設定を自動で生成する機能を備えているため、導入も非常に容易なのが特徴です。

 最後に紹介するのはMonit(http://mmonit.com/monit/)です。Monitはプロセスやポートの死活監視を行うソフトウエアで、異常を検知した場合には、メール通知やスクリプト実行が可能です。簡易的なWebインターフェースも用意されており、サービスの稼働確認を行うことが可能です。

商用の監視ソフトウエア(JP1ほか)

 続けて商用ソフトウエアの監視ソフトウエアを8つ紹介します。

 1つ目がJP1(http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/jp1/index.html)です。株式会社日立製作所によって開発されているシステム統合運用管理ソフトウエア群の総称で、モニタリング、オートメーション、ITコンプライアンス、ファウンデーションの大きく4つの機能で構成されています。システム監視機能はモニタリングのアベイラビリティー管理、もしくはファウンデーションのネットワーク管理に含まれ、監視マネージャ、ビューワ、専用のエージェントを組み合わせることでさまざまな監視に対応します。また、Network Node Managerを用いることでSNMPやネットワーク監視も行うことができます。

 2つ目がSystem Walker(http://systemwalker.fujitsu.com/jp/)です。System Walkerは、富士通株式会社によって開発されているシステム統合運用管理ソフトウエア群の総称で、エンタープライズ管理、サービス管理、リソース管理の大きく3つの機能で構成されています。システム監視機能はライフサイクル管理、もしくはリソース管理に含まれ、Systemwalker Centric Managerによってサーバーのリソース監視を、Systemwalker Network ManagerによってSNMPやネットワーク監視を行うことができます。

 3つ目がTivoli(http://www-06.ibm.com/jp/software/tivoli/)です。TivoliとはIBM社によって開発されているシステム統合運用管理ソフトウエア群の総称で、パフォーマンス&アベイラビリティーやコンフィグレーション&オペレーションなどいくつかのカテゴリのソフトウエアから構成されています。システム監視機能はパフォーマンス&アベイラビリティーに含まれ、Tivoli Monitoringによってリソース監視を、Tivoli NetViewによってSNMPやネットワーク監視を行うことができます。

 4つ目がWebSAM(http://www.nec.co.jp/middle/WebSAM/)で、日本電気株式会社によって開発されているシステム統合管理ソフトウエア群の総称で、統合管理、自動化、システム状況の把握など、目的に応じて製品がカテゴライズされています。システム監視機能はシステム状況の把握に含まれ、WebSAM System Managerによってサーバーのリソース管理を、WebSAM NetvisoPro VによってSNMPやネットワーク監視を行うことができます。
 

商用の監視ソフトウエア(Senjuほか)

 5つ目のSenju(http://senjufamily.nri.co.jp/)は株式会社野村総合研究所が開発するシステム統合管理ソフトウエア群の総称で、システム運用管理、エンタープライズ統合運用管理、サービスデスク、サーバーリモート管理、セキュリティー管理のそれぞれの製品があります。システム監視はシステム運用管理ソフトウエアであるSenju Operation Conductor(eXsenju)で行うことができ、専用エージェントを用いたサーバーのリソース監視、およびエージェントレスでネットワークとSNMP監視を行うことができます。

 6つ目がNetADM(http://www.nuritelecom.co.jp/products/index.html)です。Net-ADMはヌリテレコム株式会社によって開発されているシステム統合管理ソフトウエアです。専用エージェントを用いたサーバーのリソース監視と、エージェントレスのSNMPやネットワーク監視を行うことが可能です。また、サーバー監視、ネットワーク監視、PC監視、資産管理、操作支援・配布機能をすべて備えており、1つのソフトウエアでシステム全体を監視・管理することが可能です。

 7つ目がNetCrunch(http://www.adremsoft.com/)(http://www.adremsoft.jp/)で、AdRem Software社が開発するシステム監視ソフトウエアです。エージェントレスでネットワーク監視、サーバーリソースの監視を行うことが可能です。監視マネージャはWindowsにのみ対応しており、インストールを行えばすぐに利用を開始できるため導入の敷居が低いことが特徴です。

 8つ目がHDE Center(http://www.hde.co.jp/center/)です。HDE Centerは株式会社HDEが開発するシステム監視ソフトウエアです。専用エージェントを用いてサーバーのリソース監視を行い、障害検知とアラート通知、グラフ表示を行うことが可能です。

 次回は、オープンソースの監視ソフトウエアについて、より掘り下げて解説と分類を行います。

ZABBIX-JP
システムインテグレーション、ネットワーク運用管理を経験後、現在はミラクル・リナックスに勤務。顧客の監視システム構築の際にZABBIXを知り、仕事の傍らZABBIX-JP Webサイトの作成、管理を行っている。http://www.zabbix.jp

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