コンテンツ管理は本当に必要か?

2009年1月30日(金)
杉本 奈緒子
文書管理とコンテンツ管理の違いとは

コラボレーションツールの導入にあたっての検討ポイント

 組織横断的なワークエリアで情報共有をし、一方通行の情報配信ではなく誰もが情報の発信者となれるのがコラボレーションツールの特徴である。さらに進んで、社内SNSや社内Wikiなどの製品がソフトウエアベンダーから提唱されているが、今後どう求められてどこまで浸透するかが気になるところだ。

 現在のところ、コンテンツ管理や情報共有のシステムとしては、MicrosoftのOffice SharePoint Serverがもっとも有名で、グループウエアもコラボレーションに機能を拡張している。もう少しハイレベルなコンテンツ管理が求められる場合には、OpenTextのLivelinkがあり、社外との情報共有にはEMCのeRoomという製品もある。

 「多」対「多」のコミュニケーションであるコラボレーションツールを選択するときには、機能が同じに見えても実際に使ってみて初めてわかることも多いだろう。例えばコミュニケーションには、以下の2種類があるといえる。

・プロセス化「したい」コミュニケーション
・プロセス化「できない」コミュニケーション

 この違いを踏まえた上で、導入前と比較したフローの変化の程度や、利用者にどの程度自由度が必要なのか、それを使いこなせるのかによって、最適なアプリケーションを検討する必要がある。確かにどの製品も運用方法でカバーできなくはないが、業務効率化のための導入であれば、おのずと最適な製品を選ぶときのこの点の重要さはご理解いただけるだろう。

 また、社外との情報交換も対象とするかどうかがもう1点の検討事項だ。

・社外との情報交換も対象とするか
・海外の拠点も対象とするか

 こちらは、導入当初は必要とされないことが多いだろうが、将来適用する業務が広がる場合を想定して製品選定をしたい。社外との情報共有で使用するときには、システム上社内ドメイン外のユーザーアカウント作成の可否のほかに、ソフトウエアの使用許諾によっては第三者へのライセンス供与を禁止しているものがある場合があるので注意が必要である。

保管庫からデータを持ち出す場合の管理

 アプリケーションにより情報が適切に管理される環境は情報セキュリティーの必要条件であろう。さらに一歩進むと厳重に保管するだけでなく、ユーザーの権限に必要に応じてデータの持ち出しなども管理する必要がある。

 Information Rights Management(IRM)は、編集の可否や印刷の可否、クリップボードへのコピー(コピー&ペースト)などの操作制限をする技術である。機密情報であっても、利用すべき人はアクセスできる必要があることから、情報共有と漏えい防止を両立するのがこのIRMである(図2)。

 しかし、この機能がまさに求めていたものだと導入を検討するも、実際の導入に至らないケースが多いのが実情である。理由はシンプルで、どの情報がどのレベルの利用制限にするべきか運用ルールにまで落とし込めないのだ。ここでも再び、システムありきではなく、情報セキュリティーのポリシーという業務上の要件という視点が重要になってくる。情報システム部門とセキュリティー部門、コンプライアンスの統括部門が分かれているときには、垣根を越えた議論が必要になる。

 IRMの導入が成功している例は、情報セキュリティーの目的が明確な場合が多い。例えば価格競争が激しい分野での取引業者への価格表の配布や、研究開発部門である。前者は業者ごとに異なる値付けをし頻繁に改訂があり、価格戦略が経営の最優先事項となっているケースである。後者は研究開発とはいえ昨今では社外や海外の企業との共同で業務を行うこともあり、競合他社の数年先を行っている技術の流出を故意、過失ともに防ぎ社員を守るために使用されている。

 実際にIRMが求められている場所は、このように、企業経営の根幹にかかわる情報の保護である。IRMを「情報漏えい対策」と一言で言い切ってしまうと、ちまたでよく耳にする個人情報の漏えい対策に適用する、と考えるかもしれないが、それだけにとどまらず活用することができる。

EMCジャパン株式会社
マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネージャ。画像処理関連ベンチャー企業で技術開発と製品開発に携わる。画像処理と画像ファイル管理のエンジニアをし、その後コンテンツ管理へ広がる。現在はEMCジャパンにてコンテンツ管理製品のマーケティングを担当。http://japan.emc.com/

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