さくらインターネット 石狩データセンター

2011年12月7日(水)
柏木 恵子

さくらインターネットは学生ベンチャーのレンタルサーバー事業者として1996年に京都府舞鶴市で創業し、ホスティング、ハウジング、クラウドと、事業を拡大してきた。都市型データセンターの事業者というイメージが強いが、2011年11月15日に北海道石狩市に郊外型のデータセンターを開設。IaaS型パブリッククラウド「さくらのクラウド」のインフラとして使用される他、DR(災害対策)として利用したいとの引き合いもあるとか。とかく高いと言われる「日本のITコストを世界標準へ」というキーワードを掲げて、先進的な取り組みをしている。

さくらインターネット「石狩データセンター」の概要

石狩データセンターの敷地面積は全体で51,448m²。そこに全部で8棟の建物を建てる予定だが、第一期工事として2棟のみ完成している。1棟の延べ床面積は7,091m²で、収容ラック数は最大500ラックである(8棟で最大4000ラック)。1棟をABCDFの5つのゾーン(各100ラック)に分割、それぞれ異なる電源設備を入れることができる。つまり、Aゾーンは交流電源、Bゾーン直流電源といったことが可能で、これは他のデータセンターにはない特長。現状では200ラックが設置済みで、需要が増えるにつれて増設していく。このため、初期投資が低く抑えられ、運用コストも最小限で済む。

[写真1]石狩データセンターの外観。幅約37m、長さ約165m、高さ約13.5mの平たい建物。(写真をクリックすると拡大表示します)

[写真2]石狩データセンターの航空写真。広い土地を確保し、需要に応じて拡張していくモジュール型の設計。
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3.11震災後の原発事故の影響で、省電力の必要性については企業・個人を問わず痛感していると思うが、CO2排出量削減要求やそもそも日本は電気代が高いなど、データセンターの省電力は従来から課題だった。各事業者がさまざまに工夫を凝らしているところだが、石狩データセンターは日本では珍しい外気冷却を採用している。その結果、PUEは1.1に近いところまで達成している。

◆◇◆◇ 【キーワード 1】PUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率) ◆◇◆◇

データセンターのエネルギー効率を表す指標で、データセンター全体の消費電力量をサーバーなどのIT機器で使用している電力量で割った値。サーバーなどで使用する電力と同量の電力を空調などに使っていればPUE値は2.0。IT機器の電気しか使っていないのであれば1.0だが、空調以外にも照明や監視システムなどが必要なので、1.0という数値になることはない。日本のデータセンターは都市型が多いため2.0を超えている所が大多数。米国で先進的な取り組みをしている郊外型大規模データセンターで1.1という数値が出ているが、石狩データセンターはそれに近い値となる。

外気を利用した空調が特長、データセンターの内部

建物は2階建て。サーバーがあるのは2階部分で、電気設備などは1階にある。冷たい(取材日には雪が降ったので、0〜3℃程度と思われる)外気を取り入れ、サーバーからの排熱と混合して20℃程度にした空気をサーバー室に送る。

[概念図]データセンター断面のイメージ図
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2階

[写真3]部屋の壁面に設置したファンで冷気を室内に送る区画。
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[写真4]サーバーラックの前面に向けて、天井のスリットから冷気を送る区画。
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[写真5]サーバー背面はふたをして(キャッピング)、排熱は上部につないだダクト(銀色の四角い筒、概念図ではピンク色で表示)を通して天井裏へ。排熱が室内の空気と混ざらないようにする「アイルキャッピング」が、データセンターでは常識。
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1階

[写真6]1階の電気室に設置された、夏場の外気冷却が使えない時間帯に稼働する冷凍機。
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[写真7]冷水を循環させて冷風を作る水冷方式。
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[写真8]外気取り入れチャンバーの最も外側の部分。左側が明るいのは、そこがもう屋外だから。
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[写真9]チャンバーの建物側壁面には、虫やほこり、余計な湿気を防ぐためにフィルターが設置されている。
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