NTTコムウェア スマートクラウド データセンター

2012年3月12日(月)
柏木 恵子

NTTコムウェアは、社名を見ると分かるようにNTTのシステム開発部門を母体としている。通信ソフトウエアを開発する部署と情報システムを開発する部署が一体となって、システムの運用保守を行うグループ企業として1997年に設立された。NTTには、電話交換機だけでなく料金収受に関わるシステムなど、多くの機器やシステムが存在するが、それらを運用するシステムインテグレーターとして誕生した会社だ。

一般の企業でも業務の電算化が進むなかでデータセンター事業にも乗り出したが、基本的にはシステム運用のノウハウが強みであり、「コンピュータをお預かりします」というサービスではなく、システムの運用の場所とサービスを提供するのが事業内容である。ビジネスは堅調で、2008年から大規模な増床を行っている。

スマートクラウド データセンターの概要

スマートクラウド データセンターの立地は、東京・埼玉・京都・大阪・長野・北海道の6拠点ある。重要システムを預かっている関係上、場所の詳細は公表していない。2011年の震災以降は、東京電力管内以外の場所を希望する企業も増えてきたという。また、NTTの関連会社であるといっても、提供するネットワークはキャリアフリーである。

今回見学したのは、東京の拠点だ。山手線の駅から徒歩5分程度とアクセスがよく、何かあった際に利用者が駆けつけるのに便利な都市型データセンターである。ただし、訪問するには事前申請が必要だ。

[写真1]エントランスを入ると、ナンバーロック式のロッカーがある。作業用に事前申請したPC以外のコンピュータ類、データを不正に持ち出すことが可能になるUSBメモリなどはこのロッカーに預けてからでないとセンター内には入れない。ICタグによるフラッパーゲートで入館者を管理しているが、入り口には警備員がいて持ち物をチェック。不審者はもちろん入れない。(写真をクリックすると拡大表示します)

[写真2]サーバールームに入室するには、まず静電気防止靴に履き替えなければならない。また、共連れ防止のゲートがあり、コードナンバー入力し、静脈による生体認証が必要だ。(写真をクリックすると拡大表示します)

空調効率改善とアジリティ

2008年からの増床では、それまでの問題点を解決すべくいろいろな工夫がされている。ひとつは空調効率の改善である。空調方式はサーバーの排熱を天井裏へ逃がして空調機に吸い込ませ、冷気を床下から吹き上げる一般的な空冷方式だが、暖気・冷気が室内で混合しないためのキャッピングを行った。サーバーの吸気側と排気側を揃えて並べ、暖気空間と冷気空間を難燃性ビニールのカーテンで仕切ったのである。

[写真3、写真4]キャッピングのソリューションは出来合いのものもあるが、サーバーやラックの形状が揃っていないとうまくはまらないという欠点がある。ビニールカーテンならば企業から預かっているラックの形状に合わせて自在に加工できるし、工事などの時間もかからない。(写真をクリックすると拡大表示します)

その他、床下を整理整頓した。というのは、通常のデータセンターでは電源ケーブルやネットワークケーブルが床下のフリーアクセスに這い回っていて、空調機からの冷気を遮ってしまうということが分かったからだ。それだけでなく、ユーザーは床下にマニュアルや保守備品を置いてしまうこともあるという。冷房の吹き出し口をふさいでしまっては、いくらクーラーをかけても涼しくなろうはずがない。

そこで、ケーブル類をすべてサーバーラック上部に天井からつるしたケーブルラックに配線することにした。通常のデータセンターではケーブル類は床下から引き出されているが、このデータセンターでは上を見上げるとケーブルの束が巡らされているのである。写真でお見せできないのが残念。これはNTTの電話交換機の運用ではごく普通に使われてる方式で、別に特殊なことではないらしい。強電(電源)ケーブルと弱電(ネットワーク)ケーブルは仕切りで分離されていて、干渉がないようにも配慮されている。

ケーブルが上に上がったことで、もうひとつのメリットが生まれる。新規のサーバー設置に時間がかからないということだ。通常床付近にあるコンセントは、天井から釣られている電力バスダクトから取る。アタッチメント式なので、かちんとはめればどこにでもコンセントが作れる。また、床の方もサーバー導入のスピードアップを実現する工夫がある。ラックを設置するレールがついた床材を使っているので、床タイルをはがして加工するといった作業が不要になる。また、簡単にははずせない床にすることで、床下が物置になってしまうことを防いでいる。

[写真5]100Vを提供する銅線が3本組みになった電力バスダクトが天井付近に巡らされており、そこから電源を取る。アタッチメント式になっていて、100V、200Vを共存させることが可能(写真右上は電力バスダクトの断面)。(写真をクリックすると拡大表示します)

[写真6]省資源架台一体型二重床。この部分だけ、サーバーの荷重に耐える強度のある部材を使っている。レールに可動式の台を着けてそこにラックを止めるので、搬入当日からサーバー稼働可能。床下は40cmだが、中はからっぽなので空調効率はよい。(写真をクリックすると拡大表示します)

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