MySQL Enterprise Edition最新情報

2011年12月13日(火)
梶山 隆輔

MySQL Cluster Managerによる集中管理

MySQL Clusterを運用するためには、通常は5台の物理サーバが最低限必要となります(システム規模が極めて小さな環境ではSQLノードとデータノードを、同一サーバ上で稼働する構成のサーバを2台用意し、管理ノードを加えて3台でも利用可能)。コミュニティ版のMySQL Clusterでは、全てのノードに対して一つずつコマンドを実行して管理を行います。

有償版のMySQL Cluster CGE(Carrier Grade Edition)で提供するMySQL Cluster Managerでは、多数のコマンドを必要とするような処理をシンプルな作業にして、データベース管理者の作業負荷の削減に貢献します。

MySQL Clusterでは、クラスタ全体を停止せずに各ノードのソフトウェアをアップグレード可能ですが、Cluster Managerが無ければ以下の作業を手動で行う必要があります。

  1. クラスタの稼働状況の確認
  2. 管理ノードおよび全てのSQLへの設定ファイルの転送
    (以下はサーバ台数分繰り返す)
  3. 新しいバージョンのファイルの転送
  4. sshなどで各サーバへの接続
  5. ノードの停止
  6. バイナリの入れ替え
  7. ノードの起動
  8. データノードは他のノードとの同期とクラスタへの参加を待つ

上記の内容が、Cluster Managerではupgrade clusterコマンド1つだけで全てのノードのアップグレードが可能です。また、データノードの同期とクラスタへの参加待ち後に次のノードのアップグレードを行うため、データベース管理者はコマンドを実行すれば後は、全てのノードが自動的にアップグレードされるのを待てばよくなります。

クラスタへのノードの追加も無停止で可能ですが、全てのノードに新しい構成を認識させるために各ノードを順番に再起動する必要があります。手動で作業する場合は多数のコマンドを複数のサーバ上で実行することになりますが、Cluster Managerでは3つのコマンドだけでノードを追加できます。

またMySQL Cluster CGEでは、Enterprise Monitorにてリソース利用状況などの監視も可能です。

オラクル各製品のMySQL対応の強化

オープンソースのOracle LinuxやOracle VMを始めとして、現在オラクルの各製品がMySQL Enterprise Editionへの対応を進めています。
→参照:Oracle OpenWorld 2011での発表資料 - Using MySQL with Other Oracle Products(PDF)

Oracle VM Template for MySQLは、あらかじめMySQLとUnbreakable Enterprise Kernel同梱のOracle Linuxが導入され、稼働検証済みの仮想マシンイメージです。Oracle VMが持つフェールオーバー機能により、定期メンテナンスや障害発生時に自動的に仮想マシンのライブマイグレーションを行います。
→参照:Oracle VM Template for MySQLダウンロードページ

図4:Oracle VM Template for MySQLの構成イメージ(クリックで拡大)

JavaのミドルウェアのFusion Middlewareでは、アプリケーションサーバのWebLogic Server、LDAPサーバのVirtual Directoryなど多くの製品がMySQLに対応しています。WebCenter Suiteなど一部製品についても今後の対応を予定しています。

異なるデータベース間でのレプリケーションを実現するOracle GoldenGateもMySQL対応をしています。例えば米国Sabre Holdings社が運営するオンライン旅行代理店のTravelocityでは、航空会社の予約システムとの外部連携はレガシーなデータベースを使用していますが、大量の検索処理に対応するためにGoldenGateにて150台以上のMySQLサーバにデータを配信して、売り上げに直結するとは限らない処理のコストを大幅に引き下げることができました。

管理ソリューションのOracle Enterprise ManagerにはMySQLプラグインを用意する予定で、オラクルデータベースや他のデータベース、各種ミドルウェアなどと同じ運用ツールでのMySQLの管理を可能にします。セキュリティ関連製品では、SQLインジェクションなどからデータベースを保護するDatabase Firewall、監査ログの一元的な管理、分析、脅威検出をするAudit Vaultが順次MySQL対応予定です。

さらに、Oracle OpenWorld 2011でのMySQLに関する基調講演の資料では、正式対応を進めている製品を紹介している"Certifications in Progress"のページ(49ページ目)に、この記事でご紹介していないオラクル製品のロゴがいくつか掲載されています。
→参照:MySQLに関する基調講演の資料 - General Session: MySQLーThe State of the Dolphin(PDF)

おわりに

4回に亘ってMySQL製品の最新事情をご紹介してきました。MySQL 5.6 DMRやMySQL Cluster 7.2 DMRといった次世代版の開発、また拡張機能のさらなる充実や各オラクル製品からのサポートなど、これまで以上にMySQLは進化して行きます。今後ともMySQLの製品動向にぜひご注目ください。

日本オラクル株式会社

2008年にMySQL社に入社し、アジア各国でのMySQLを活用したシステム構築の導入支援を担当。現在はオラクルのMySQLビジネスユニットでのセールスコンサルティングチームのアジア太平洋地域マネージャー。

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