Pandora FMSを使った具体的な監視運用設計の実装

2014年7月7日(月)
株式会社アールワークス

監視運用設計を実践的に見てみる

ここでは、以前説明した監視要件定義を中心に、これまで述べてきた監視運用のポイントについて、「Pandora FMS」を使った具体的な実装の仕方を説明する。

その前に、Pandora FMSの機能について、もう少し詳しく見ていく。Pandora FMSは、大きく次の4つのコンポーネントに分かれている(図1)。

図1 Pandora FMS のアーキテクチャ
図1:Pandora FMS のアーキテクチャ
  1. 監視を行うサーバー
  2. 管理インタフェースであるコンソール
  3. 監視対象であるエージェント
  4. すべてのデータが保存されるデータベース

まず、これらのコンポーネントについて説明しよう。

Pandora FMSサーバー

Pandora FMSサーバーは、ICMP、SNMP、TCPおよびWMI(WindowsManagementInstrumentation)※1でのリモートからのポーリング監視や監視サーバー上での任意のコマンドを使った監視のほか、SNMPトラップや、「ソフトウェアエージェント」から送信されてくるデータを使った監視を行う。

※1 WMI(Windows Management Instrumentation)は、Windowsリソースへのアクセス、構成、管理、および監視を可能にする管理基盤で、スクリプト言語やプログラミング言語から、CPU使用率のようなリソース情報を取得したり、サービスの再起動といったタスクを実行したりすることができる。WMIはローカルコンピュータだけでなく、リモートコンピュータの管理にも利用できる。詳細は、Microsoft社のTechNetの次のURLを参照して欲しい。
参考:WMI の FAQ: トラブルシューティングとヒント

ソフトウェアエージェントとは、監視を対象とする機器にインストールして使うソフトウェアのことで、これについては後ほど詳しく説明する。

また、PandoraFMSサーバーには、こうした監視機能のほかに、監視対象の自動検出機能や、収集した過去のデータに基づくデータ予測を用いた監視を行う機能もある。

さらに、エンタープライズ版には、次の機能がある。

  1. フォーム入力やWebページ遷移の確認といった、いわゆるシナリオ監視を行う機能
  2. 他のPandoraFMSサーバーに収集したデータをコピーする機能
  3. 監視対象機器のハードウェア構成やインストールソフトウェア情報といったインベントリ情報※2を収集する機能

※2 インベントリ情報:ITの分野では、組織が保有ないし管理するIT資産に関するデータをインベントリと呼ぶ。CPU、メモリー、ハードディスクといった部品に関する情報もインベントリである。

Pandora FMSでは、これらの機能を、独立した下位のサーバーとして実装しており、機能の追加や不要な機能の無効化が容易になっている。Pandora FMSサーバーについての一覧を、表1にまとめたので参考にしていただきたい。

表1 Pandora FMSのサーバー一覧
サーバー 機能
データサーバー 監ソフトウェアエージェントからのデータ受信
ネットワークサーバー ICMP、SNMP および TCP リクエストを使った情報収集
SNM Pサーバー SNMP トラップの受信
WMI サーバー Windows Management Instrumentaion を使った情報収集
自動検出サーバー 監視対象機器(エージェント)の自動検出
プラグインサーバー 任意のコマンドの実行による情報収集
予測サーバー 収集データを使った数値予測に基づく監視
Webサーバー ウェブシナリオ監視(フォームヘのデータ入力、コンテンツ チェックなど)
エクスポートサーバー 収集データを他のサーバーへコピー
インベントリサーバー インベントリ情報の収集
イベントサーバー 発生したイベントに基づく監視

Pandora FMS コンソール

Pandora FMSコンソールは、PHP※3で実装されたWebインタフェースである。例えば、データベースに格納されたデータの参照や監視設定など、大抵の操作はコンソールを通して行うことになる。

※3 PHP(Hypertext Preprocessorを再帰的に略したもの)は、オープンソースのスクリプト言語で、特にWebシステム開発の分野で広く用いられている。

コンソールには、ユーザーによる権限の分離といった基本的な機能のほかに、インシデント管理機能や、収集データを元に様々なグラフを作成することができるレポート機能といった機能もある。

さらに、エンタープライズ版には、ユーザーごとにカスタマイズ可能な概要ページである「ダッシュボード」や、標準のアクセスコントロール機能では設定できない、ページ単位での権限設定などが可能な「アクセスコントロール機能」、ソフトウェアエージェントの設定をコンソールから行うことができる「リモート設定機能」など、高度な機能が用意されている。

Pandora FMSデータベース

Pandora FMSでは、データベースに「MySQL」を採用している。MySQLは性能や安定性に定評があり、標準の機能で容易に冗長構成を組むことができることなどから、世界で広く利用されているオープンソースのデータベース管理システム(DBMS)である。

また、最新リリースである「Pandora FMS 4.0」では、MySQLのほかに、MySQLと双璧をなすオープンソースのDBMSである「PostgreSQL」と、世界で最も利用されている商用DBMSである「Oracle」についても、試験的ながらサポートが開始されている。将来的には、MySQL以外のデータベースも標準的に利用できるようになる予定である。

Pandora FMSエージェント

Pandora FMSにおいてエージェントといった場合、通常は監視対象のことを指すが、文脈によってはソフトウェアエージェントのことを指す場合がある。

このソフトウェアエージェントとは、Pandora FMSの監視専用に用意されたアプリケーションのことで、監視対象機器にインストールして使う。C++で書かれたWindows版とPerlで書かれたUnix版のエージェントのほか、Cで書かれた組込み向けのエージェントとAndroidプラットフォームで動作する、Pandroidと呼ばれるエージェントが用意されている。

ソフトウェアエージェントは、一定間隔で自発的に情報を収集し、監視サーバーにデータを送信するプッシュ型の監視エージェントであり、情報の収集には任意のコマンドを利用することができる。Windows版エージェントには、WMIやパフォーマンスカウンタから情報を取得する機能もついている。

著者
株式会社アールワークス
1985年に株式会社アステックとして創業。2000年10月の株式会社アールワークス設立を経て、2005年6月より現在の1社体制に移行。同時に、社名を(株)アールワークス(Rworks, Inc.)に変更。
設立以来、IDC事業やITマネージドサービスを行い、そこで培ったネットワークインフラの運用ノウハウや、さまざまなソフトウェアを開発した技術力を結集し、現在、ITシステムのリモート運用サービスをはじめとして、インフラ構築、ハウジングやホスティングサービス、SaaS/ASP型のシステム監視基盤の提供を行う。単純なオペレーターではない技術提供をベースにした24時間365日の統合的なフルマネージドサービスを提供している。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています