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オープンソースの最新トピックと、ビジネス活用のポイント(OSPセミナーレポート前編)

2014年7月24日(木)
Think IT編集部

OpenPOWER Faundationによるサーバーハードウェアのオープンソース化

日本IBMの新井真一郎氏のセッションでは、ハードウェアをオープンソース化する、OpenPOWER Foundationの取り組みが紹介された。

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OpenPOWER Foundationの取り組み

OpenPOWER Foundationとは、CPUのプロセッサやマザーボード、それに載せるOSSをオープンな状態で組み合わせて、クラウドのデータセンターに特化した新しい形のサーバーを作ろうという取り組みで、最近Googleが自社のサーバーをIntel系からこのOpenPOWERに乗り換えたことでも知られている。

CPUを供給するIBM以外にも、前述したGoogleや日立など、様々な企業が参加している。マザーボードを開発する台湾のTYANはあまり耳なじみがないが、国内の携帯電話キャリアに多くのトラフィックをさばくための安価なサーバーを大量に納入している製造業者だ。つまり、あまり知られていないだけで、このTYAN製のサーバーは国内でも数多く使われている。

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コミュニティは2013年8月に立ち上げられたばかりで、Linux Foundationのように安定したプロジェクトのための財団運営を行っていくと新井氏は意気込みを語る。

データセンターでの高速処理という原点に立ち返ったPOWER8

IBMが開発しているCPUのPOWERシリーズは、これまで企業のミッションクリティカルなUNIXサーバーに搭載されてきた。クラウド時代になり、Linuxの利用が広がっているため、データセンターでの処理を高速化するという原点に立ち返り、POWER8の開発に取り組んできた。POWER8は周波数が4.1GHzで、サーバー上でマルチスレッドをONにすると12コアの8倍の96スレッドとなり、非常に高い処理速度を実現する。

もう一つの特徴として、メモリとCPUの通信帯域を広げたことが挙げられる。データベースの処理をHDDからその都度読みだすのではなく、メモリ上にロードさせて処理するインメモリ技術を使うため、高速化が可能だ。またメモリとCPUの通信速度を早くすれば、処理速度の大幅なアップが可能になるため、POWER8の開発では通信帯域を広くすることにしたという。

このように様々なハードウェア、ソフトウェアに関する取り組みを行っているOpenPOWERのコミュニティだが、次第に成果物が出てきており、Googleが今後データセンターに使うサーバー用のマザーボードにPOWER8を搭載する他、グラフィックチップメーカーのNVIDIAでは、JavaやHadoopを高速に動かすためのPCI Expressのアダプターを開発している。CPUを減らして各処理の高速化を実現することで、サーバーの台数を減らし、かつJavaやHadoopを高速化できるよう、コミュニティのメンバーが日々取り組んでいる。

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また現在、企業向けにもPOWER8プロセッサ搭載のサーバーを提供開始している。HDDとSSDを混在させて、必要とされる性能を持つ方に自動的に振り分けることができるような、コミュニティ版にない機能も搭載している。Linux用やUNIX用を含め、現在5種類が用意されている。

セッションの後半では、OpenStack上に複数のクラウド環境を立ち上げる方法やメリットについて、デモを交えながら紹介された。

新井氏の講演資料は以下でご覧になれます。

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“オープンソース技術の実践活用メディア” をスローガンに、インプレスグループが運営するエンジニアのための技術解説サイト。開発の現場で役立つノウハウ記事を毎日公開しています。

2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。クラウドネイティブ技術に特化したビジネスセミナー「CloudNative Days」や、Think ITと読者、著者の3者をつなぐコミュニティづくりのための勉強会「Think IT+α勉強会」、Web連載記事の書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

また、エンジニアの独立・起業、移住など多様化する「働き方」「学び方」「生き方」や「ITで社会課題を解決する」等をテーマに、世の中のさまざまな取り組みにも注目し、解説記事や取材記事も積極的に公開しています。

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