今回も、試験合格に向けて、例題を見ていきましょう。関連事項の理解ができていなければ、この記事の末尾で紹介する書籍を参照するなどしてください。その後で例題を実際に解いてから、解説を読むようにしましょう。
■仮想LAN(Virtual LAN)
仮想LAN(VLAN)の概念について例題を使用して説明します。
※『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』 p.233より抜粋。
仮想LAN(VLAN)とは、物理的な位置に関係なく論理的にグループ化されたネットワークのことです。各VLANは1つの論理ネットワークとみなされます。各VLANは、一斉同報を1つのVLAN内に限定できる、つまりブロードキャストを抑制できるため、1つのVLANはブロードキャストドメインとして扱われます。また、VLAN同士を接続するには、ルータやレイヤ3スイッチなどのレイヤ3デバイスが必要となります。管理者がポートごとにスタティックに設定するポートベースVLANや管理サーバを使用することでダイナミックにVLANを割り当てる方法があります。
上記の説明から分かるように、この例題の解答はbになります。1つのVLANは1つのブロードキャストドメインと考えられます。
VLANとIPアドレス
次の例題は、VLANとIPアドレスの関係についてのものです。
※『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』 p.233より抜粋。
VLANは、1つブロードキャストドメインとして扱われます。一般的に1つのVLANには1つのサブネットを割り当てます。VLAN間でデータ通信を行う場合、レイヤ3デバイスのインタフェースに割り当てるIPアドレスが該当VLANのデフォルトゲートェイになります。
この例題の場合、3つのVLANがスイッチに設定されています。VLANごとにサブネットを設定するため、VLANが3つになる場合は、サブネットの数は3つになります。よって、解答はdとなります。
次の図は、3つのVLANを使用したIPアドレッシング例です。
■IEEE802.1Qトランキング
次の例題は、IEEE802.1Qトランキングについての例題です。
※『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』 p.233より抜粋。
ここでは、スイッチのポートの種類やタギング(タグ付け)について説明します。VLANで使用するスイッチのポートの種類にはアクセスポートとトランクポートがあります。
●アクセスポート:スイッチのデフォルトのポートで1つのVLANのみが使用するポートのことです。次のコマンドで設定することができます。
Switch(config)#switchport mode access
●トランクポート:複数のVLANが使用できるポートのことです。スイッチ間などに使用されます。次のコマンドで設定することができます。
Switch(config)#switchport mode trunk
トランクポートを使用すると、複数のVLANが1つのリンクを使用して通信を行うことができます。そこで1つのリンクを複数のVLANデータが通過するために、どのデータがどのVLANに所属するのか識別する必要があります。IEEE802.1QトランキングはそのVLANデータの識別方法の1つになります。
トランキングとイーサネットフレーム
イーサネットフレームでは、4バイトのタグフィールドを挿入することによって、どのVLANに所属するフレームかを識別できるようにします。フレーム内にタグを挿入するため、データ誤り検出・訂正用フィールドであるFCS(Frame Check Sequence)は再計算されます。4バイトのタグが追加されるため、最小イーサフレームが68(64+4)バイト、最大は1522(1518+4)バイトになります。
フレームの構成は以下のようになります。括弧内の数の単位はバイト数になります。
タグの内容は次のとおりです(VIDがVLAN ID)。
以上のことから、この例題の解答はbになります。タグの追加時にMACアドレスは変更されることはありません。
次の例題は、IEEE802.1Qトランキングで使用する特殊なフレームについて問うものです。
※『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』 p.233より抜粋。
ネイティブVLANと呼ばれる特殊なVLANは、802.1Qヘッダー(タグ)が付かないフレームを使用することができます。
●ネイティブVLAN
IEEE802.1Qトランキングで使用されます。タグが付かないフレームはネイティブVLANに所属したものと考えられます。デフォルトのネイティブVLAN1ですが、任意のVLANをネイティブVLANに変更することもできます。次のコマンドにより、任意のVLANをネイティブVLANに設定することができます。
Switch(config-if)#switchport trunk native vlan VLANID
なお、ネイティブVLANはタグを使用するトランクポートで設定を行います。また、対向のインタフェースでネイティブVLANを一致させる必要があります。
以上のことからこの例題の解答は、aになります。802.1Q ヘッダーが付かないものは、ネイティブVLANのフレームであり、VLAN1から別のVLANへと設定が変更できます。
【参考文献】
「シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J (Cisco Press)」 インプレスジャパン (発行年:2014/3/7)
【参考サイト】
「Cisco NetSpace」(http://www.netacad.com)(アクセス:2014/09)
「Catalyst 2960/2960-S スイッチ ソフトウェア コンフィギュレーション ガイド、Release 15.0(1)SE Cisco IOS」(アクセス:2014/09)
この記事で紹介した書籍 |
Wendell Odom 著/株式会社クイープ 訳
価格:4,400円+税
発売日:2014年03月05日発売
ISBN:978-4-8443-3553-5
発行:インプレスジャパン
|
本書は、シスコ技術者認定のうち、CCENT/CCNAの認定を目指す人のための公式ガイドブックです。2013年に改訂されたICND1の試験内容に対応しています。新ICND1は、旧ICND1からトピックの削除と追加が行われています。ICND1の合格により、CCENT認定を受ければ、CCNA認定への最初のステップをクリアしたことになります。本書を携えつつCiscoプロフェッショナル認定試験突破に向けて大きな一歩を踏み出しましょう。
|