【楽々デブドックを書こう!】XMLで開発ドキュメント
第2回:情報システムにXMLが求められる背景
著者:佐賀大学総合情報基盤センター 只木 進一
公開日:2008/02/13(水)
仕様策定は共同作業
情報システム仕様書にはもう1つ重要な特徴がある。それは、この文書は「1人では書けない」ということだ。
規模が大きくなれば、情報システムはネットワークなどの基盤から、アプリケーション、アプリケーションが必要とするデータベース、端末までをも含む。そのためどうしても、複数の部署で仕様書を書くことになる。
システムのOSやハードウェアの部分は情報システム担当が書けばよい。しかしそのシステムが担う業務の部分について、情報システム担当が書くことは難しい。ゆえに、どうしても共同文書作成の環境が必要となる。
共同作業の際のポイントは、作業者1人1人が文書として閉じたものを作成できることである。その際に、見た目の書式などを気にせず、文書の構造に専念して書けることも重要である。この点で、文書構造、文書の表示、そして文書本体が分離されていることが非常に有効に働く。
今時の共同作業環境は、Webである。各サブグループがXMLで文書を作成して、共通サーバにアップロードすることで、他のグループは進捗状況をWebブラウザで見ることができるようになる。Web用のスタイルを定義しておけば、作業中はWebで確認ができる。
図3:情報システムに必要となる要素
WordやExcelを使って仕様書を作成した場合
では仕様書をXMLではなくWordで作成することを考えよう。Wordは容易に書式を変更できる。短い文書を作成する際には非常に便利である。個人が小さな文書を作成する時に有効なこの便利さが、文書全体でかつ共同作業者全員が共通の文書構造、書式を維持することを逆に困難にしてしまっている。また、Excelなどのマクロ機能ではバージョンの違いの影響を受けることがある。
また、Wordは文書を分割して、必要に応じて連結することが難しい。そのため、1人であれ複数人の共同作業であれ、大規模文書を作るのは一般的に困難である。
仕様書をExcel(スプレッドシート)で作成するのは、Wordで作成するよりも良さそうである。少なくとも階層構造を列に対応させれば、文書構造を維持することはできる。同じ要件のものを同じ表現で記述することも、用語定義シートを作成しておけば可能となる。しかしスプレッドシートの弱点は、書式制御が柔軟にできないことである。もともと表計算が主たる目的なのだから仕方がない。また、文書構造からはずれていないかの確認が困難であることもあげられる。表計算からプログラムで読み出して、印刷用文書を作ると結構使えるかもしれない。
以前、筆者は仕様書作成にLaTeXを使っていた。文書本体と文書構造・表示がある程度分離できることと、文書を分割して作成できる、そしてマクロが組めることが利点である。そして、全体をテキストエディタで作成できる。弱点はHTMLに比べて書ける人が少ないことである。そのため共同作業をする上で難点であった。
情報システムの仕様書をXMLで書くと効率がよさそうである。次回は、実際の手順を中心にXMLの利点を説明していこう。 タイトルへ戻る