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未来が近づく、新世代ネットワーク!

【ネットワーク教習所】
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第4回:宇宙インフラ構想の要、WINDSを知る

著者:情報通信研究機構 大川 貢

公開日:2008/03/24(月)

超高速インターネット衛星(WINDS)で行う実証実験

超高速インターネット衛星(WINDS)を用いるKa帯による高速衛星通信実験は、衛星開発機関であるJAXAとNICTによる「基本実験」と、衛星通信技術の有用性の実証および新たな衛星アプリケーション開発の推進を図ることを目的とした「利用実験」がある。

WINDS基本実験では、衛星搭載機器の性能確認試験のほか、地上網との接続性検証、メッシュ型ネットワーク・トポロジーの動作検証、マルチキャスト技術検証などを行い、ネットワークを利用するための基本的な通信機能の確認と技術評価を行う。また、国内およびアジア・太平洋地域における共同実験、その他、北米・欧州などとの国際共同実験を行い、災害時対応、デジタルデバイドの解消、遠隔教育、遠隔医療に関する実証実験を行う。

利用実験に関しては、総務省により超高速インターネット衛星(WINDS)に関する利用実験の募集が、平成19年2月1日から3月30日まで行われた。その結果、WINDSを利用した実験提案については、国内外の大学、企業などから災害時対策、遠隔医療、遠隔教育などのアプリケーション実験53件の応募があり、2007年5月30日に開催された衛星アプリケーション実験推進会議(会長:?畑文雄早稲田大学教授)における審議結果を踏まえ、すべての提案について採択を決定した。

利用実験では、アジア・太平洋地域の国々の機関の参加も予定され、デジタルデバイド、災害対策などの課題に対して、国際的な衛星通信ネットワークを構築するためのアプリケーション実証実験の成功が期待される。

図3:WINDS実験スケジュール

WINDS実験スケジュール

WINDS実験スケジュールを図3に示す。初期機能性能・評価後(打上げ約4カ月後)から打上げ約7ヶ月後までは、利用実験ユーザヘ安定した実験環境を提供することや、WINDS通信網システムの有効性を実証しアピールするために基本実験のみを実施する。

打上げ約7ヶ月後から打上げ2年後までは、WINDS通信網システムの有効性を実証し、アピールするため基本実験を利用実験より先行して実験枠を配分するが、できるだけ多くの利用実験が実施できるよう配慮する。打上げ2年後からミッション終了までは、基本実験より優先して利用実験へ実験枠を配分する。

超高速インターネット衛星(WINDS)を用いる高速衛星通信について述べた。衛星の設計寿命は5年間であるが、基本実験および利用実験の実験項目は多岐に渡るため、今後、関係機関が連携を図りつつ、効率的に実験を実施する必要がある。なお今回の執筆にあたっては、参考・引用資料として「情報通信研究機構季報 Vol.53 No.4」「超高速インターネット衛星『きずな(WINDS)』」を利用した。

次回は、ダークネットに飛来するパケットの振舞などを観測する「インシデント分析センターnicter」について解説する。 タイトルへ戻る




独立行政法人 情報通信研究機構  大川 貢
著者プロフィール
独立行政法人 情報通信研究機構 大川 貢
新世代ワイヤレス研究センター 宇宙通信ネットワークグループ 主任研究員
1984年、郵政省電波研究所(現 情報通信研究機構)入所。衛星通信および放送システムの研究、スペクトル拡散方式を用いた移動通信の研究などに従事。宇宙通信ネットワークグループでは、超高速インターネット衛星(WINDS)プロジェクトに所属している。


INDEX
第4回:宇宙インフラ構想の要、WINDSを知る
  打ち上げ成功、超高速インターネット衛星(WINDS)
  超高速インターネット衛星(WINDS)の能力は?
超高速インターネット衛星(WINDS)で行う実証実験