具体例「大学における事務処理業務」の業務手順書
今回は、具体例として「大学における事務処理(成績処理)業務」の業務手順書を示す。
流れは「1. 学生は、学生証を受付係に提示する」「2. 受付係は、学生に用件を聞く」「3. 受付係は、用件から担当窓口を決める」「4. 学生は、担当窓口に移動する」「5. 学生課担当は、履修申込書を学生に記入させる」「6. 学生課担当は、履修申込書から成績原簿を作成する」「7. 学生課担当は、履修者一覧を教員に渡す」「8. 教員は、履修者一覧の学生に講義開催を通知する」「9. 教員は、学生に講義する」「10. 教員は、学生を評価する」「11. 教員は、成績表を作成する」「12. 教員は、成績表に成績を記入する」「13. 教員は、成績表を学生課担当に渡す」「14. 学生課担当は、成績表の内容から成績を判定する」「15. 学生課担当は、成績を成績原簿に記入する」「16. 学生課担当は、成績原簿の内容から成績証明書を作成する」「17. 学生課担当は、学生に手数料を請求する」「18. 学生は、学生課担当に手数料を払う」「19. 学生担当係は、学生に成績証明書を渡す」「20. 学生担当係は、成績原簿を棚に収納する」となる。
以降はこの業務手順書を使って分析の詳細手順を解説していく。この例題における分析は、「大学における成績処理業務の情報化」が目的であり、成績処理をシステム化することが目的とする。最終的にこの成績処理システムの機能要求を定義するユースケース図を得ることが分析のゴールである。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
業務鳥瞰図の作成
業務手順書が完成したら、次に手順書に書かれたシナリオを図解化していく。自然言語によるシナリオは、非技術者でも記述や理解が容易な反面、業務全体を俯瞰することが難しい。そこでSBVA法では、業務手順書として記述された分析対象のシナリオを、単純な表記により図解化し、業務全体を俯瞰した上で業務担当者と開発者を交えてシステム化の範囲を決定しやすいようにする。
図解化の最初のステップは、各作業記述文を作業要素に分解して関係線で結んでいく。作業要素とは、作業記述文に含まれる名詞(主語・目的語)と動詞(述語)のことである。
1つの作業記述文を図解化したものを作業要素関係図と呼ぶ。分析者は、まず作業記述文から名詞と動詞を抽出し、図2に示す通り名詞要素を示す長方形のアイコンと動詞要素を示す楕円形のアイコンを用いて作業要素関係図に配置する。
次に動詞要素アイコンを中心としすべての名詞要素アイコンとの間に破線の関係線を引く。ただし、作業記述文の主語となる名詞要素に対してのみ、実線の関係線を引く。以上の作業をすべての作業記述文に対して行う。つまり、業務手順書に書かれた作業記述文の数だけ作業要素関係図ができ上がるわけである。
すべての作業記述文を作業要素関係図に図解化した後は、これらを1つの図に総合する。同じ意味を持つ名詞や動詞の重複を取り除き、関係線を引き直す。すべての作業要素関係図を総合し終えたら、作業要素の配置を整理する。これにより、初期の業務鳥瞰図が完成する。
業務手順書で記述された順に図の上から下に動詞要素が並ぶように配置し、その周辺に名詞要素を配置する。配置を見やすくするためには作業要素アイコンが重ならないようにし、さらに関係線の交わりを可能な限り少なくする。以上が「総合」のステップである。 次のページ