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【伝わる!モデリング】シナリオの図解化

【伝わる!モデリング】シナリオの図解化

第3回:図解化する!

著者:産業技術大学院大学 森本 祥一

公開日:2008/04/16(水)

SBVA法のプロセス(1)業務シナリオの記述から図解まで

今回と次回は、SBVA法の具体的な作業について詳しく解説していく。前回の終わりで簡単に作業の流れを説明したが、ここでもう一度整理しておこう。

第1回:シナリオに基づく設計とSBVA法とは?」でも説明した通り、システム開発においてはビジネスには精通しているもののITには詳しくないユーザ側の非技術者と、その逆の立場であるIT技術者が共に参画することになる。

SBVA法では、まず分析対象のビジネスに精通した業務担当者が「記述者」となり業務手順書を作成するところから始まる。これに対し、実際のシステム開発に携わる技術者が「分析者」となり対象ビジネスを把握しながらユースケース(システムへの詳細化)に落とし込んでいくのである。

図1で示した「1. 記述」「4. 修正」は記述者が、「2. 総合」は分析者が、水色で示した「3. 編集」「5. 構成」は双方で行う作業である。今回は、この記述から総合までの詳細を解説する。

図1:SBVA法の流れ

(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

業務手順書の記述

業務手順書に記述するシナリオは、いわゆるユースケースシナリオと違い、システム導入後の業務手順ではなく、現状の業務(As-Is)の手順を時系列にそのまま記述していく。As-Isをそのまま記述するため、明らかにシステム化できない作業を含んでもよい。シナリオは、あくまで「分析のための道具」だからである。

業務手順書は作業記述文から構成される。「作業記述文」は、業務の作業内容を記述した単文とし、「誰が、何を、どうする」を書く。ここでは作業の主体を示す主語と、1つの動詞からなる単文に限定する。また、動詞、名詞、助詞のみを用いることとする。

作業記述文は必然と「〜は、〜を〜する」「〜は、〜から〜を〜する」「〜は、〜に〜を〜する」の形式となる。自然言語により、自由に記述したシナリオから体系的に分析を行うことは難しいため、SBVA法ではこのようなシナリオ記述のための簡単なルールを設けている。

また作業記述文の粒度であるが、後の工程で調整可能なため、業務手順書を記述する段階では考慮する必要はない。また、作業記述文が多くなってしまう場合には複数の業務手順書に分けてもよいし、例外フローがある場合にはこれを別の業務手順書として記述してもよい。これは「第1回:シナリオに基づく設計とSBVA法とは?」で述べた通り、業務手順書の記述者にとって作業が簡単になるよう、分岐や繰り返しといった論理構造の表現をあえて導入していないためである。以上が「記述」のステップである。 次のページ




産業技術大学院大学  森本 祥一
著者プロフィール
産業技術大学院大学 森本 祥一
産業技術大学院大学(AIIT)助教。平成11年埼玉大学工学部卒。平成13年同大学大学院理工学研究科博士前期課程修了後、NEC航空宇宙システムを経て、平成18年埼玉大学大学院博士後期課程修了、博士(工学)。現職に至る。形式手法やさまざまなモデリング手法を用いた情報システム開発の研究に従事。
http://aiit.ac.jp/


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第3回:図解化する!
SBVA法のプロセス(1)業務シナリオの記述から図解まで
  具体例「大学における事務処理業務」の業務手順書
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