図解化によるフィードバック
初期の業務鳥瞰図が完成したところで、この図解を用いて業務手順書に不備があるかどうかを確認できるようになる。業務鳥瞰図上において、明らかに孤立している名詞要素が含まれる場合、業務手順書に不備がある可能性がある。
ここでいう「孤立している名詞要素」とは、業務鳥瞰図上において関係線が1本のみの名詞要素を指す。これが発生する原因には「関係の不足」「作業の不足」「名称の不統一」「作業内で完結」「他の業務で使用」などがある。
「関係の不足」とは、他の作業でも使用されるべき名詞要素のことである。「作業の不足」とは、使用されるべき作業手順そのものが欠落している名詞要素のことである。
「名称の不統一」とは、同じ意味を持つ名詞要素が複数登場する場合である。「作業内で完結」とは、その作業手順内で完結してしまっている名詞要素のことである。「他の業務で使用」とは、業務手順書内に記述していない、別の業務における作業で使用される名詞要素のことである。
「作業内で完結」において、作業の粒度が大きい可能性がある記述文で、記述者が確認し粒度が大きいと判断した場合は、該当する名詞要素が使われている作業記述文を詳細化する。「他の業務で使用」の場合は、分析対象の業務手順書では一度しか登場しない要素だとしても、対象外の業務で使用されている要素である。これが明らかであれば、修正の必要はない。分析者は、孤立した名詞要素を確認した場合、記述者へ業務手順書の修正を依頼する。記述者は、上記のような理由を確認して業務手順書を見直す。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
孤立している名詞要素を修正する
今回の実施例では、図の「学生証」「講義開催」「履修者一覧」が孤立していることが分かる。「学生証」については関係の不足、「履修者一覧」については作業の不足、「講義開催」については作業内で完結に該当しする。
「6. 学生課担当は、履修申込書から成績原簿を作成する」は「6. 学生課担当は、履修申込書と学生証から成績原簿を作成する」に、「11. 教員は、成績表を作成する」は「11. 教員は、履修者一覧から成績表を作成する」のように業務手順書を修正することで、名詞要素の孤立を取り除くことができる。
修正が終わったところで、分析者は修正された業務手順書にあわせて作業要素関係図を修正する。
この後は、業務鳥瞰図における作業要素の粒度の調整を行い、鳥瞰図上でシステム境界を決定し、そこからシステムの機能的要求であるユースケースを導出していく。
次回は、引き続きこの業務鳥瞰図の編集からシステム境界の決定、ユースケース図の構成までの作業の詳細を解説していく。 タイトルへ戻る