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RFID
RFIDによるシステム構築

第1回:RFIDとは
著者:野村総合研究所  藤吉 栄二   2006/3/14
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周波数だけでは決まらないRFIDタグの選定

   これまで説明してきたように、RFIDシステムの導入を検討する際には、その本質的特徴の1つである無線技術の理解が重要なポイントとなるが、以下の点を忘れてはならない。
RFIDタグへの情報登録

   RFIDタグは製造時にあらかじめ一意な識別番号(ユニークIDともいう)が登録されている。さらに製品によっては、ユーザメモリ領域を有し、ユニークID以外の情報を保持可能なものがある。

   識別のためのトリガーとしてユニークIDを利用するか、更にユーザメモリに付加情報を事前登録するか、運用中で情報の書き込みと消し込み(消去)を行うかなどの検討が必要になる(表4)。なお、RFIDタグにデータの書き込みを行う場合には、一般的に読み込みより時間がかかる点にも注意が必要である。

種類 特徴 製品例
リードオンリー型 メーカ出荷時にユニークIDを登録。低コスト。 ミューチップ(日立)(但し、2005年以降はリード/ライト型のミューチップも提供している。)
リードライト型 運用時に情報の書き込みが可能。 I-CODE(フィリップス)
ライトワンスリードメニー型 情報の書き込みは1度だけ。 S-ラベル(日本インフォメーションシステム)

表4:RFIDタグへの登録情報
出所:野村総合研究所


リーダ/ライタ

   RFIDタグの読み取り、情報の書き込みにはリーダ/ライタを利用する。周波数ごとに対応した製品が提供されているほか、RFIDシステムの運用形態にあわせて、ハンディタイプ、パネルタイプ、ゲートタイプ、トンネルタイプなどのリーダ/ライタが提供されている(表5)。

種類 特徴
ハンディタイプ 人がもって利用。低出力のため、通信距離が短くなる(数cm程度)
パネルタイプ アンテナとリーダ/ライタが分離。複数のサイズのアンテナがある
ゲートタイプ 入退出ゲートなどで利用。
トンネルタイプ 特定用途向けに利用。読取精度が要求されるような場合に利用

表5:リーダ/ライタの種類
出所:野村総合研究所


その他の特徴

   物流検品や店舗や倉庫での棚卸では大量の商品を一気に、かつ短時間に読み取るようなRFIDの運用も求められる。この場合、RFIDタグがアンチコリジョン(輻輳制御)に対応したものであるかどうかがポイントとなる。

   このようにRFIDは、周波数別の特徴のみならず、機能・性能面でも機器毎に特徴がある。従ってRFIDシステムの導入に際しては、業務要件に応じてRFIDタグに求める機能要求を洗い出し、対応製品を選定する視点が求められよう。

   第1回では、RFIDタグの特徴に関して説明させて頂いた。第2回では、RFIDの適用先として大きな市場が期待される流通分野について、導入・検証事例とサプライチェーン向けシステムの概要を紹介する。

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野村総合研究所  藤吉 栄二
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所   藤吉 栄二
情報技術本部 技術調査室 副主任研究員
1995年大阪大学理学部物理学科卒業後、大手電機メーカー系ソフトハウスにて無線技術の研究開発に従事。2001年に野村総合研究所に入社。情報技術本部にてIT動向の調査を実施。専門は、RFID、ICカード、無線LANなどモバイル関連技術。


INDEX
第1回:RFIDとは
  はじめに
  RFIDタグの動作原理
  RFIDタグの特徴
周波数だけでは決まらないRFIDタグの選定