TOP業務システム> blog検索・解析
Web2.0
ビジネス展開におけるWeb 2.0

第3回:Web 2.0時代を支える手法
著者:野村総合研究所   堀 祐介  2006/4/21
前のページ  1  2  3  4   
blog検索・解析

   blogのアクティブユーザ数は2006年3月末で300万人を突破しそうな勢いであるが(第2回の図5参照)、これら多数のblogで日々更新される記事を検索・解析するツールがいくつか登場している。テクノラティ社のブログ検索、東京工業大学奥村研究室のblogWatcher、kizasi.jpなどサイトを使えば、現在blogで話題になっている言葉、つまり現在消費者が最も興味がある言葉を知ることができる。

   blog検索・解析の現状の問題点は、検索・解析する手法がテキストデータ(blog本文)の字句解析であり、精度の高い意味の抽出やカテゴライズには限界があることである。この問題点はmicroformatsと呼ばれる軽量なメタデータがブログ記事に挿入されることで解決できるかもしれない。microformatsではhCard(プロフィール情報)、hCalender(スケジュール情報)、hReview(映画や書籍のレビュー)などのメタデータフォーマットが定義されており、これらがブログ記事に挿入されることでより精度の高いブログ検索・解析が可能になる。

   microformats普及の障壁となるのはフォーマットを記述する煩雑さであるが、入力支援ツールMagic hCalenderやMicrosoft社が開発を進めているWebアプリケーション間データ連携ツールLive Clipboardなどを利用することで改善が進むと予想される。


CGMアクセス解析、アテンション計測

   消費者のアテンションの流れを知る上で、CGMのアクセス解析は有効な手段の1つである。ルート・コミュニケーションズ社のRSS suiteブログトラッキングではリンク元(RSS、CGM、検索)の統計やRSS発行の効果測定ができるサービスを提供している。

   またROOT Markets社のROOT VAULTSは消費者のアテンションを消費者自らの意思で計測するツールを提供しているユニークなサービスだ。具体的には消費者がクリックしたリンク、Webサイトへの滞在時間、検索キーワードなどを集計し、日時別の統計データを得ることができる。また自分のアテンション統計データを友人と共有・比較することもできる。ROOT Markets社のビジネスモデルは消費者にアテンション分析ツールを無償提供し、消費者のアテンションの統計データを得てマーケティングデータとして販売することである。

   CGM分析の本質は、これまで無視されてきた小さなデータを集積し付加価値のあるデータを抽出できる手段が生まれた点にある。CGMで発信される情報は消費者の商品・サービス購買行動への影響が大きいため、企業にとってCGMは今後ますます無視できない存在になる。


パーソナライズ

   パーソナライズは消費者視点と企業視点の2つの意味を持つ。

   消費者にとってのパーソナライズは必要な情報を得るためのフィルタリング行為である。消費者が1日にインターネットに費やせる時間は「第2回目:Web 2.0が与える市場へのインパクト」の図2のとおりであるが、アテンション機会は有限であるのに対しWeb上の情報は益々増大している。よって情報過多気味の時代には高度なフィルタリング技術が求められる。

   GoogleパーソナライズドホームはGoogleでの検索履歴、Gmailヘッダ一覧、RSSリーダとしての機能を提供し、1つの画面に消費者が興味のある情報を集約することができる。またAmazon.comは古くからパーソナライズに力を入れている企業であり、消費者の購買履歴や検索履歴からおすすめ商品をピックアップする協調フィルタリングを導入している。RSS/ATOMフィードリーダであるFeedpathはフィードにタグ付けすることにより、多数の消費者で情報分類・フィルタリングをすることを可能にしている。いわばFolksonomy型フィードリーダである。

   企業にとってのパーソナライズとは、消費者毎に最適化された広告を配信し消費者のアテンションを獲得することである。前述のAmazon.comにおける協調フィルタリングや、検索連動広告(Google AdWords、Overture)は消費者ごとに最適化された広告の代表例だ。また最近は電子メールと連動した広告(Gmail)や地図情報連動した広告(Google ローカル)がはじまっており、様々なコンテンツと広告の連動が広がっている。

アプリケーションと連動した広告配信(Gmail、Google ローカル)/出所:GmailおよびGoogle ローカルのサービス内容を元に野村総合研究所作図
図2:アプリケーションと連動した広告配信(Gmail、Google ローカル)
出所:GmailおよびGoogle ローカルのサービス内容を元に野村総合研究所作図
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   コンテンツと広告を連動させる背景には、消費者が利用するコンテンツのカテゴリ=消費者のアテンションを惹きやすいカテゴリという仮説が検索連動型広告の成功で裏付けられたことにある。今後も広告と連動する対象コンテンツの種類は益々多様化していくと予想される。


次回は

   さて今回は、Web 2.0時代を支える技術・手法として、サービス型ソフトウェア、CGM分析、パーソナライズについて説明してきた。次回も引き続き、表1にあげた残りの項目について説明していく。

前のページ  1  2  3  4   


株式会社野村総合研究所 技術調査室 研究員 堀 祐介
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  技術調査室  研究員
堀 祐介

東北大学工学部通信工学科を卒業後、大手SIerにてオープンソースソフトウェアおよびテレコム関連技術の標準化活動に従事。2005年、野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。


INDEX
第3回:Web 2.0時代を支える手法
  はじめに
  サービス型ソフトウェアとASP
  企業領域への進出
blog検索・解析