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ながさきITモデルへの参画 〜 地場SIerの官公庁システム開発奮戦記
ながさきITモデルへの参画 〜 地場SIerの官公庁システム開発奮戦記

第2回:オフショア開発に負けないためのCurlという選択肢
著者:ドゥアイネット   穴井 春奈   2006/4/26
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ながさきITモデルのメリット

   一石二鳥にも三鳥にも見えるながさきITモデルだが、地場企業にとってのメリットとは何だろうか。
狙い 手段 効果
ベンダーのソリューションに合わせるのではなく、利用部門の業務ニーズに合ったシステムにしたい 職員自らが詳細な仕様書を作成 ・コスト削減
32億円の見積りだった電子県庁システムが16億円に
あいまいな仕様に基づく不完全なシステムが納入されるリスクを減らしたい 予算500万円以下の案件に分割して発注 ・利用部門の満足度が向上
利用者の要望を迅速に反映

・地場企業の参入
チャンスの拡大
資本力のないベンダーを入札に参加させたい システムで利用する技術をあらかじめ定義
詳細な仕様書を県側で用意する
・地元のIT産業振興
H14〜H15年度:100案件中48件を地場企業が直接受注
H16年度:96案件中73件を地場企業が直接受注

表2:ながさきITモデルの狙い


大規模な県の仕事に手が届く

   官公庁のシステム開発案件は規模が大きいものであるため、これまでは企業として体力のある大手ベンダーに任せるのが通例だった。そのため当社のような10名規模の会社では、官公庁を顧客として取り込もうと考えることすらなかった。しかし、長崎県が発表した「ながさきITモデル」では発注単位を小さく分割し、オープンソースソフトウェアを使用するという。

   しかも詳細な仕様書が提示されているので、大規模なシステム開発経験がなくてもチャレンジできる。仕事としての責任範囲が小さく設備投資も要らない、かつ仕様も明確となればチャンスである。SIerの下請けが中心だった当社に、一次請けとしての仕事を確保できる可能性が開かれたわけだ。受注できるかどうかはまた別の話だが、まずは門戸が開かれたことが大きなメリットであると考えたのである。

長崎県庁の従来のシステム発注方式
図3:長崎県庁の従来のシステム発注方式


会社の信用度の向上

   Slerにとって官公庁の実績があるというのは、営業展開を考える時に大きなアピールポイントになる。当社のように知名度の低い会社が新規顧客を獲得するのは容易ではないが、「長崎県のシステム開発をやっています」と話すと、受け入れていただける場合が多い。

   長崎県では約6,000名の職員が働いている。それだけの職員が使うシステムを安定稼動させているという実績が信用力となって、新たな顧客獲得に有利に働くというメリットは大きいといえるだろう。実際の仕事につながったケースはまだないが、実績が示すものへの反応はいい。


人材・技術力の向上

   ここ数年の技術トレンドはオープンソースソフトウェアを使ったものに移り変わってきており、首都圏ではオープンソース技術者のニーズが高まっている。書籍やインターネットから得られる知識もたくさんあるが、スキルアップをするためには、実際に開発してみることが一番身につく。長崎県の仕事を通して、オープンソースソフトウェアを使ったシステム開発のノウハウを学んでいけるというのは大きなメリットである。

   大手ベンダーには企業体力がある。資金があるから、技術者を研修に行かせて仕事を取ることができる。しかし中小企業にはそんな余裕はない。県の仕事を受注することで、大手ベンダーに集中してしまうノウハウやテクニックが中小企業にも蓄積されていくのだ。また新しい技術に触れることは技術者にとって楽しみでもあるため、モチベーションを高めることに大いに役立っている。

   地方自治体と地場企業の両者に多くのメリットがあるように見えるが、実はそればかりではない。小口分割発注方式が採用されてからしばらくの間は、入札に参加する地場企業が増えた。だが落札できるのは金額が最も低い1社のみである。金額さえ低ければ落札できることから、1円で落札された案件もあった。これを踏まえ、県では入札案件に最低制限価格を設定し、最低落札価格を下回る金額で入札した場合は失格とすることで対策を取った。

   以降1円入札を防ぐことはできたが、まだまだ問題はあった。安ければ落札できることから、再委託することで入札金額を抑えればよいという企業が散見されるようになった。下請けとなった企業は元請よりもさらに低い金額で受注しなければならず、システム自体の品質が悪化したのだ。

   これに対し、県では再委託を禁止する条項を設けた。そもそも県には、企業の技術力向上をはかり、競争力を高めるという意図がある。再委託してしまっては、自社にその開発ノウハウが残らず、県の目論見を達成することはできないからであろう。

   商社的な考え方であれば、再委託は利益を出すのに有効な手段であるが、一方で、開発ノウハウを蓄積できないというデメリットもある。再委託先が開発したソースコードを見て、ノウハウを抽出するというのも一つの方法ではあるが、自らがリスクを背負い、問題解決に取り組むことから得られるノウハウこそ、企業の大きな財産になるのではないだろうか。

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株式会社ドゥアイネット  穴井 春奈
著者プロフィール
株式会社ドゥアイネット   穴井 春奈
システム技術部2課 チーフ。
前職は一般事務。もっと自分にしかできない仕事をしたいという思いから転職を決め、ドゥアイネットに入社して4年。現在は長崎県電子自治体プロジェクトに携わり、設計から開発までをこなす。

INDEX
第2回:オフショア開発に負けないためのCurlという選択肢
  PHPで開発したシステムをCurlで作り直すことの意義
  ながさきITモデルとは?
ながさきITモデルのメリット