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ITコスト評価インデックスとITコストベンチマーキング
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第3回:IT健全性を評価するITコストインデックス
著者:日本情報システム・ユーザー協会   2006/5/10
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総IT支出の活用状況

   総IT支出が企業活動上でいかに活用されているのかを、次のインデックス群により評価することができる。
全社員人件費対総IT支出額

   社員一人当たりの費用として人件費の次に大きな費用が「社員一人当たり総IT支出」であり、事業計画を作成する上で収益を計算・評価する重要なデータとなる。

   各事業部門の収益責任を追求する欧米企業では、一般的に利用されているインデックスであるが、多くの日本企業では本社経費またはオーバーヘッドコストとして企業全体レベルでマクロ的に処理されている。

   可能な限り正確に各部門のコストを把握し、また各部門に配賦して利益管理を行い、利益に準じたインセンティブを与えている欧米企業と比べると、コスト管理レベルが低いと見なすことができる。


社員1人あたりの総IT支出

   これは社員1人あたり、どれくらいのIT支出が必要かを見るインデックスである。これは「全社員人件費対総IT支出額」と同じ意味を持つものであるが、情報システム部門自体のコスト意識を待たせるためや、情報システム部門が社内貢献に寄与していることを意識させるためなどの目的で利用されている。


全社総経費に占める総IT経費

   全社の総経費に占める総IT経費(除く償却費用など)であり、会社の損益計算書(P/L)上での利益拡大上での問題を探る上で利用できる。

   単年度のIT支出は「単年度のIT投資」と「年間IT経費と年間IT償却費」から構成されており、キャッシュ(現金)の動きを知る上で重要であり、情報システムの予算編成で利用されている。


IT支出の有効性

   IT支出の有効性は次のインデックス群により評価することができる。


IT投資比率

   総IT支出に占める総IT投資の比率であり、効果的な費用の活用は、費用が投資に回り運用保守の費用が少ないことが望ましい形であり、総IT投資が総ITオペレーティングコストに対し増加する傾向が保たれていることが必要である。

   欧米企業のIT投資比率は約50%といわれており、日本企業のIT投資比率は約30%であり、ITコストバランスの改善が必要であるといわれている。しかし、多くの日本企業ではアプリケーション保守の範囲が曖昧で、機能の改善/拡張のある部分がITオペレーティングコストに含まれていることと、社内人件費が未計上であることからIT投資比率が欧米企業と対比して小さく見える。

   これからの、ITコストマネジメントの管理目標の1つが、アプリケーション保守費用である。

   一般にソフトウェア保守の業務内容は、ISO/IEC14764をベースにJIS規格(JIS X0161)が制定され、下記の作業を行うものとしている。

  1. 利用開始後、発生した問題を解決するために行う「是正保守」
  2. 障害を引き起こす原因となり得る問題を見つけ出し直す「予防保守」
  3. 性能や保守性を向上させるためにソフトウェアを改良する「完全化保守」
  4. 利用環境の変化にあわせてソフトウェアを修正する「適応保守」

表4:一般にソフトウェア保守の業務内容

※注:
(1)と(2)を「訂正作業」、(3)と(4)を「改良作業」と分類している。

   しかし、ユーザ企業で行われているアプリケーション保守は次の3点が中心であり、JISによる「訂正作業」はトラブル対応とバグ修正であり、「改良作業」はパッケージソフトウェアのバージョンアップサービスへの対応であると見ることができる。

1. トラブル対応とバグ修正
すべてのトラブル対応とバグの修正
2. 業務ルール変更対応
業務ルール変更に伴うプログラム、テーブル類/マスターデータの保守
3. 既存アプリケーションの簡単な機能拡張
数日から3人月以内の工数で機能強化/機能拡張を行う作業

表5:アプリケーション保守の中心となる3点

   しかし、JISにはアプリケーションソフトウェアの特徴である「業務ルール変更」に伴う修正や「既存アプリケーションの簡単な強化/拡張」が含まれていない。特に、このアプリケーションソフトウェア保守費用は、ITオペレーティングコストに分類されて集計されるために、場合によってIT投資費用が少なめに計上されることになる。


アプリケーション開発費用対保守費用

   アプリケーションプログラムの開発費用対アプリケーションソフトウェアの保守費用の対比を評価し、開発プログラムの品質、利用上の適正度を判別することに利用することができる。

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社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
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日本情報システム・ユーザー協会
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ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
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