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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第7回:BPR実践の秘訣(後編)
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/8/14
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第6条:欲しい道具(機能)の要件を明らかにする!

   現実とのギャップを埋めるためには、ITの活用が大前提になる。組織の規模によっては、不可欠というわけではないが、やはり人手で実現すると生産性が落ちる。組織が大きくなると、そもそもITを使わないと実現できなくなる。

   BPRでは、現行の業務プロセスや組織・規程を洗い直す。そして、理想的なあるべき姿を描き、何をどのように変革すればよいかを明らかにする。その手段として、ITを用いたり、制度・規程を改定したり、組織・機構を改組したりすることになる。

   おのずと情報システムで実現できることにも限界が見えてくる。またいくらあれば、どこまでのシステム機能が購入できるか、その効果も具体的になる。

   そして情報システムを導入する場合は、事前の評価・分析によって次の7点セットが揃う。これらは調達仕様書(RFP)の基本項目となるで、実際にシステムを調達する際に用いることができる。
  • 現行の業務プロセスと課題
  • 既存システムがある場合はその対象業務と課題
  • 将来のあるべき業務プロセス
  • システム化の基本方針と対象業務の範囲
  • 新しいシステムに求められる機能要件、サービス基準
  • あわせて実施する制度・規程、組織・機構の変更内容
  • 実現に向けた導入スケジュール

表2:情報システム導入に関する各種資料


第7条:自前主義の発想は捨て去る!

   これまでは、自社の業務は基本的に自前で行ってきたところが多いだろうが、この考え方も抜本的に見直すべきである。必ずしも切り出しがベストではないケースもあるが、自前で保有するメリットや理由がなければ、業務に要するコストやサービス品質などの観点から、外に出す(アウトソーシング)という選択肢も加えたほうがよい。

   BPRで将来イメージを想定するときに、現行の組織・体制に縛られることなく業務そのものの目的(成果)を実現するために、なんでも自前という発想を捨て去って欲しい。

   本連載では、個別の業務プロセスの良くないところ、修正したほうが良いところを洗い出して、各々対応するという業務改善ではなく、抜本的に業務のやり方を見直す業務改革の事例を紹介してきた。

   改善ではなく改革であるのは、複数の業務から共通化できるものを集中化(集約)してアウトソーシングに移行することを前提に、大幅に業務や組織のあり方を見直したためである。こうすることで既存の組織や業務のあり方が根底から変わる。このような改革によるアウトソーシングの具体的な実現後のイメージなどは次回に紹介する予定である。


第8条:適材適所を考える!

   以前アメリカでは、BPRが「首切り」と同様に用いられているという話を紹介した。しかしBPRの本来の姿は、成果をだすために人員/組織/業務の「最適化」をはかることにある。その結果、本来業務(コア・コンピタンス)に人員を転換させ、自前で処理しなくてもよい業務は切りだす必要がでてくる。

   コストを抑えるために、オペレーション業務をアウトソーシングすることが多いが、主力となる業務のオペレーションすべてを外にだすことは難しく、また業務を集中して処理すること自体が主力業務の場合もある。

   このような場合、コストを人員数に割当てた「数減らし」ありきでBPRに取り組むのは望ましくない。BPRの目的はあくまで適材適所/最適化であることを認識しておくことが重要である。先述のように現場のストレスを煽るだけでは、経営層への不信感が高まってBPRが頓挫するだけでなく、本来業務への悪影響にもつながりかねない。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第7回:BPR実践の秘訣(後編)
  前回より
第6条:欲しい道具(機能)の要件を明らかにする!
  第9条:外部コンサルタントを活用する!