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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第7回:BPR実践の秘訣(後編)
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/8/14
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前回より

   前回、BPRを実施していくための推進主体のあり方、評価・分析の留意点を次の10箇条(表1)にまとめ、4箇条までを説明した。続く今回は、残り5〜10箇条について解説する。
  • 第1条:錦の御旗を掲げる!
  • 第2条:次世代ミドルを活躍させる!
  • 第3条:ゴール、プロセスを共有する!
  • 第4条:評価はほどほどにする!
  • 第5条:現実のギャップを認識する!
  • 第6条:欲しい道具(機能)の要件を明らかにする!
  • 第7条:自前主義の発想は捨て去る!
  • 第8条:適材適所を考える!
  • 第9条:外部コンサルを活用する!
  • 第10条:改革の呪縛から解放される!

表1:BPR成功のための10箇条(再掲)


第5条:現実とのギャップを認識する!

   実際にBPRに取り組むと、理想とする将来イメージに対して現実とのギャップが目立ってくる。ABCやBSCで評価・分析すると、そのギャップが具体的な数値で示される。例えば、「コスト削減効果は3億円」とか「このシステムを導入すると作業負荷の軽減は2万時間相当」という具合だ。しかし、わかりやすいがゆえに数値が一人歩きしかねない。

※注1: ABC手法
コストに着目して効果を測定する手法。
詳しくは「第4回:BPRの効果をコストで示すABC手法」を参照。
※注2: BSC手法
創造性や品質向上といった視点を重要視して効果を測定する手法。
詳しくは「第5回:BPRの効果を多面的に評価するBSC手法」を参照。

   企業においては経営トップから「何人削減を必達のこと」という指示が、突然下りてくることがある。残った人員数で業務をこなせるか、そのときのリスクにはどのようなものがあるのかなど、実際に行動するには乗り越えなければならない壁は多い。すると、数値をだすことに満足してしまい、担当者が「あとはヨロシク」と現場まかせになってしまうことがある。

   どこに問題があってそれだけの時間やコストの削減が可能なのか、そのためにどのような取り組みが必要なのか、何を見直せばよいのかを明らかにして正しく認識し、実践に移せなければ意味がない。

   また、現実の評価があまりに低いと「そんなはずはない」「自分たちはもっと効率化して取り組んでいる」という声がでてくる。評価結果を取り繕うことに力を注ぎ、様々な言い訳が登場する。時には取り組めなかった理由を並び立て、これからは努力するという説明をする。

   ここで用いられる評価はBPR実践のためのものであり、でてくる数値も細部にこだわったものではない。

   特に情報システムを導入する場合は、現状の評価は相対的に大きく落ち込む。そもそも情報システムなしに(人手では)実現できない項目が評価指標に含まれるので、現状の結果が低くなるのは当然なのだ。現実を正しく認識し、何をどのように変革すれば目標を達成しうるか、考えて行動することこそが重要である。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第7回:BPR実践の秘訣(後編)
前回より
  第6条:欲しい道具(機能)の要件を明らかにする!
  第9条:外部コンサルタントを活用する!