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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第8回:BPR実現後のイメージ
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/8/31
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手段としてのIT活用

   ITなくしては経営改革もできなくなっているが、このIT活用においてもBPRは不可欠である。よく耳にするのは、「パッケージソフトを導入すれば面倒なBPRを実施しなくてもすぐに効果がでる」という話だ。汎用的なパッケージソフトは、そんなに面倒なシステムではないし、パーツに分かれているので現行の業務プロセスにも適合するという。

   しかし実際には程度の差こそあれBPRを行う必要がある。パッケージソフトを利用すれば導入コストを抑えることができるが、現在行っている業務プロセスとは異なるため、パッケージソフトの業務プロセスに現行業務をあわせなければならない。

   つまり現行業務を見直し、新しい業務プロセスに変更する必要がある。BPRをどの程度実施するかは、業務の大きさによって異なってくるので、小規模の業務でパッケージソフトを利用する場合は、BPR実施も限定的になるだろう。

   また最近のパッケージソフトは、いくつかの業務システムのパーツに分かれており、それらの組み合わせ方によって、ある程度まで現行の業務プロセスに適合できるようになっているものがある。このような場合は、BPRを意識しなくてもシステム導入が可能になる。しかし現行の業務プロセスを前提とするIT活用では、その効果には疑問が残る。

   例えば現行処理のまま、決裁者や押印の数を減らさずにシステムを導入してしまうと、従来どおりの業務プロセスに留まり、効率化は程遠いものになってしまうからだ。

   最近はパッケージソフトだけでなく、ASPによるシステム利用も増えている。特にASPはシステム側の変更が難しく柔軟性に欠けるため、現行業務を見直さざるを得ない。運用コストが下げられるものの、BPRが不可欠になることは念頭に置いておくべきだろう。

BPRをめぐるトレンド

   経営改革やIT活用において、いくつかの新しい動きがでている。それらのトレンドを見ながら、BPRについて俯瞰してみよう。


EA(Enterprise Architecture)

   従来は、業務は業務、システムはシステムというように、担当する部署も縦割りでプロジェクトを進めてきた。システム課の担当が主にシステム運用・管理に留まり、経営戦略的な企画機能を有していなかった頃の名残でもある。

   しかし、会社運営においてシステムが不可欠になり、経営改革においてもITなくしては、その実施が困難になってくるとそうはいっていられない。業務とITとを一体的に捉え、より実効性の高いシステム開発・運用をする必要がある。BPRも、業務プロセスの改革に終始するのではなく、システムによる実現についてもあわせて取り組まなければならない。

   業務とシステムを切り離すことなく統合的に扱うEAでも、BPRを単独で切り離して考えずに、システム導入や維持・管理と一体的に捉えることを推奨する。BPR実施にあたっては、経営改革や業務プロセス改革の重要な手段であるITについても、あわせて検討することが重要である。


内部統制

   2006年6月、日本版SOX法(日本版企業改革法)が成立した。これに伴い、従来の会計統制以外に、コンプライアンスや経営方針・業務ルールの遵守、業務有効性や効率性の向上、リスクマネジメントといった観点から統制を高め、企業活動を多面的に管理・監視・保証することになった。

   これまでは、業務1つ取ってみても部署ごとに異なっていたり、決裁基準が曖昧のまま運用されていたりしても、大きな問題にならなければ見過されてきた。しかし、業務プロセスに潜む様々なリスクを明らかにし、万が一のときにはどのように対応するべきか、そのようなトラブルを未然に防ぐにはどうすべきか、既存の業務を見直さなければならない。

   内部統制の実施にあたっても、全社的に業務プロセスを棚卸で分析し、リスクや財務の観点から新たな業務プロセスに刷新する必要がある。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第8回:BPR実現後のイメージ
  はじめに
手段としてのIT活用
  事業継続性(Business Continuity)