第13回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編) (3/4)

VMware ESX Server サーバ統合ガイド
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第13回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)

著者:デル   2006/9/11
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仮想CPUの分析と考察

   冒頭で紹介したESPモジュールとパフォーマンスモニタやその他の分析ツールを利用して、インターネット・メール・プロトコルを使った様々なシナリオをシミュレーションしました。そして、ESX Serverの仮想CPU(VCPU)機能を活用し、VMごとにプロセッサ・リソース量を変える方法を検証しました。以降に、テスト結果と考察を示します。
Outlook Web Access(OWA)の標準性能〜シナリオ1

   シナリオ1では、100ユーザ/インスタンスを処理するVMを1つ選び、OWAテストを実行しました。他のVMは電源を点けた(パワーオン)後、アイドル(休止)状態にしておきました。

フロントエンド・サーバ VM0
Inetinfo Private Bytesinetinfoプライベート・バイト 17MB
Available Mbytes利用できるMB数 3163
%Processor Timeプロセッサ時間(%)、すなわちプロセッサ利用率 24.28
Context Switches/secコンテキストスイッチ数/秒 2017
Process(Inetinfo)/IO Read Operations/Secプロセス(inetinfo)/読み込みIO処理数/秒 0.19

表2:100ユーザのOWAワークロードを発生させたときの仮想マシン性能(perfmonデータ)

   表2のように、いくつかの主要なパフォーマンス・カウンタを確認すると、VMやインターネット・メール・サービスの稼動状況を追跡調査し、VMのボトルネックを発見するのに役立ちます。例えば、「%Processor Time」は、スレッドの実行に使ったCPU時間を%で表したものです。

   上記のテストでは、100人のOWAユーザをシミュレーションしたとき、VMの平均プロセッサ利用率が25%未満となっています。この場合、プロセッサ利用率(%)は、当該VMのプロセッサを測定した値であることに注意してください。コンテキストスイッチは、あるスレッドから別のスレッドへプロセッサが切り替わる(スイッチする)頻度を調べたもので、全体の平均値(1秒あたりのスイッチ数)が算出されます。OWAのようなフロントエンド・サービスは、あまり多くのシステムメモリを使用しません。

   このテスト・シナリオ1の場合も、VMは、割り当てた全メモリのうち約440 MBしか使用していません。これは、「Available Mbytes」というPerfmonカウンタを見るとわかります。つまり、VMに割り当てた3,600MBのうち、3,164MBのメモリが未使用のまま空いています。

   「Inetinfo Private Bytes」は、Inetinfoプロセスが使用しているメモリ量を測定するカウンタです。このカウンタを一定時間監視すれば、同時使用している(アクティブな)OWAユーザ数に対し、Inetinfoがどれくらいのメモリを使用しているのか調べることができます。システム管理者は、vmkusageツールから取得できるVMの性能情報に加え、上記のようなパフォーマンス・カウンタを見ることで、ゲストOS、アプリケーション、VMごとのリソース利用率や性能特性を調べることができます。

   下記の図3は、vmkusageユーティリティで作成したプロセッサ利用率のグラフです。下記の「Esxtopの出力結果」を見ると、ESXサーバ全体のCPU利用率は平均して約13%となっています。

vmkusageで測定したCPU利用率のグラフ
図3:vmkusageで測定したCPU利用率のグラフ

   また、図3を見ると、ESPが最初のOWAモジュールをロードしたとき、CPU利用率が100%に跳ね上がりますが、その後、テスト・モジュールのロードが完了し、テストが始まると、CPU利用率が安定することがわかります。このように、ESX Serverホスト全体とVMごとのプロセッサ利用率を調べたいときは、vmkusageとesxtopを併用することができます。

Esxtopの出力結果
PCPU: 11.61%, 14.69% : 13.15% used total
LCPU: 11.36%, 0.25%, 7.41%, 7.28%

   図中、「VCPU0」とあるのがテストしたVCPUで、シナリオ1の場合、各VMが専用のVCPUを使っています。「Ready0」は、VMのレディ・ステート(実行可能状態)を示します。Ready0を見ると、VMが稼動可能であるにも関わらず、物理CPU上の実行スケジュールが確保できない「待機時間」の割合(%)がわかります。

   図3を見ると、VMのCPU平均利用率は約20%、レディ・ステートは5%未満となっています。このようにReady0の値が低ければ、VMが命令の処理待ち状態に置かれていないことがわかります。

   この構成では、PCPU0をサービスコンソールとVMで共有しています。2ウェイ・ホストの場合、最初のVMがパワーオンされ次第、VMkernelは、このVMをPCPU1上で稼動するようスケジュールします。PCPU0とPCPU1は、2基の物理プロセッサですが、ハイパースレッディングを有効にすると、1基のCPUがそれぞれ2つの論理プロセッサとして扱われます。PCPU0に対応する論理プロセッサは常にLCPU0とLCPU1となり、PCPU1に対応する論理プロセッサは常にLCPU2とLCPU3になります。

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第13回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
  インターネット・メールで発生するワークロードのシミュレーションと測定
  ESX ServerとVMの性能測定および分析
仮想CPUの分析と考察
  シナリオ1:VMkernelによるVCPUのスケジュール管理
VMware ESX Server サーバ統合ガイド
第1回 VMware関連基礎用語
第2回 仮想化環境の設計と物理サーバから仮想マシンへの移行方法
第3回 サーバの構成
第4回 インストール時の注意点とチューニングポイント
第5回 SANブート
第6回 ブレード・サーバへの導入
第7回 Dell PowerEdge 1855ブレードサーバのVMware VMotion性能
第8回 ブレードサーバで構築するVMware ESX ServerのVLANネットワーク
第9回 VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
第10回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(前編)
第11回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)
第12回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(導入編)
第13回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
第14回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)
第15回 デュアルコア・サーバによるVMware ESX Serverの性能向上

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