第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト (4/4)

VMware ESX Server サーバ統合ガイド
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第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト

著者:デル   2006/8/29
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PowerEdge 6850サーバ上のESX:ハードウェアの概要

   Dell PowerEdge 6850は、4U(約18cm)のサーバで、最大4基のインテルXeonプロセッサMPと32GBのRAMをサポートします。PowerEdge 6850では、1MBの2次キャッシュを搭載するモデルと、8MBの3次キャッシュを搭載するモデルが選べます。大容量な8MBのキャッシュは性能向上に役立ちますし、1MBのキャッシュを搭載したモデルは経済的です。

   PowerEdge 6850には7個のI/Oスロットがあり、さらに、Qlogic 2362ファイバチャネル・ドーターカードもオプションで利用できます。7スロットのうち、4個はPCI Express対応で、残り3個はPCI-X対応です。スロット数が豊富なため、NICを追加するケースの多いESX Server環境でも、余裕を持ってネットワークのバンド幅を拡げることができ、個別のネットワークを多数構築することも可能です。

   ファイバチャネル接続にPCIスロット不要のQlogic製ドーターカードを利用すれば、すべてのPCIスロットをNICなどの他の接続に利用することができます。PowerEdge 6850は、ホットプラグ対応のPCI-ExpressとメモリRAID機能を提供するので、ダウンの危険性を大幅に減らし、システム全体の可用性が高まります。

   今回のテストに使用したPowerEdge 6850には、16GBのRAMを搭載しました。また、システムには2個のオンボードNICが搭載されていますが、さらにPCI-X対応のインテルGigabit NICを2個追加しています。ファイバチャネル接続のサポートには、PCI-X対応のQlogic 2340を2個追加しました。

 
Dell PowerEdge 6850
仮想化
ソフトウェア
VMware ESX Server 2.5.1
CPU 1MBの2次キャッシュを搭載した
インテルXeonプロセッサMP 3.66 GHz×4
および、8MBの3次キャッシュを搭載した
インテルXeonプロセッサ3.33 GHz×4
メモリ 16GB
内蔵
ディスク
73GB×2
NIC 10/100/1000Mbps×2(オンボード)
インテルPRO 1000XT Gigabitl×2
ディスク
コントローラ
PERC 4/DC
ファイバ
チャネルHBA
QLogic 2340
高さ 4U(約18cm)

表5:テストに使用したPowerEdge 6850サーバの構成


テスト結果

   PowerEdge 6850は、1台のシステム内で大容量のI/OとRAMをサポートすることができ、抜群の性能を発揮します。4種類いずれのワークロード・テストでも、ESXの性能は、8MBの3次キャッシュ(3.33GHzプロセッサ)を搭載したPowerEdge 6850の方が勝っていました。

   しかし、1MBのキャッシュ(3.66GHzプロセッサ)を搭載したPowerEdge 6850の方が低価格ですし、8MBキャッシュ・システムがサポートするVM数の75%以上をホストすることができます。表6は、PowerEdge 6850で複数のワークロードをテストしたときの全測定結果を示しています。

   リソース要件があまり厳しくない他のVMスタックとは異なり、Exchangeのテストでは、8MBキャッシュの3.33GHzプロセッサを搭載したPowerEdge 6850でCPU利用率を85%に上げるのに、特別な工夫が必要でした。

   あらゆるボトルネックを排除するため、データ用LUNを5ディスクのRAID 5から、10ディスクのRAID1/0にアップグレードし、さらに、LoadSim 2003ドライバを2倍にしてLoadSim 2003ユーザ数を4,400人に増やしました。しかし、このいずれの試みもCPU利用率の大幅な増加にはつながらず、LoadSim 2003のレイテンシが減っただけでした。

   CPUの処理能力にはまだ余裕があるため、何らかのVMを追加してこの余力を有効活用することも考えられます。いずれにせよ、仮想化していない従来のサーバに比べれば、CPU利用率の無駄を減らす可能性が広がります。

 
1MBのキャッシュと3.66GHzの
プロセッサを搭載した
PowerEdge 6850
8MBのキャッシュと3.33GHzの
プロセッサを搭載した
PowerEdge 6850
ワークロード VM数 ESXのCPU利用率 VM数 ESXのCPU利用率
SQL Server 2000 12 85% 16 87%
SuSE LAMP 14 85% 16 85%
NetBench 14 89% 17 86%
Exchange 4 81% 4 66%

表6:プロセッサを変えた2機種のPowerEdge 6850を使い、
各種のワークロードをテストしたときの結果


PowerEdge 6850をお勧めする理由

   最大32GBのRAM、7個のI/Oスロット、充実した高可用性機能をサポートするPowerEdge6850は、仮想化に理想的なプラットフォームです。大容量のRAMが搭載できるので、大量のメモリを必要とするVMでも数多くサポートすることができます。また、7個ものI/Oスロットが利用できるため、多数のNICをインストールし、広バンド幅を必要とするVMをサポートすることができます。Qlogic 2362ドーターカードを利用すれば、PCIスロットを使わずにデュアルポートのファイバチャネル接続が提供でき、7つすべてのI/Oスロットを他の目的に活かすことができます。

   ホットプラグPCIやメモリRAIDなどの高可用性機能は、ダウン時間を削減し、ハードウェアの連続稼働時間を延ばします。PowerEdge 6850に搭載するプロセッサを決めるときは、コストの節約より、パフォーマンス要件を優先させてください。8MBという大容量キャッシュを備えたXeonプロセッサは、より高い性能を発揮するため、パフォーマンスを重視する環境には最適な選択となります。一方、パフォーマンスをそれほど重視せず、多数のVMをホストする環境であれば、1MBのキャッシュを提供するXeonプロセッサと32GBのRAMを搭載したPowerEdge 6850をお勧めします。


異種ワークロードを混在させたときの処理効率

   このテストでは、種類の異なるワークロードを混在させた場合、VMWare ESXサーバが効率良く並列処理できるか評価しました。サーバのコンソリデーションを再現するため、4種類すべてのワークロードに対応するVMそれぞれ用意し、ESXサーバ上で同時実行しています。

   これまでのテスト同様、サーバにはPowerEdge 2850と6850を使っていますが、4種類のワークロードを同時実行するときは、各ワークロードができるだけ4分の1ずつの比率になるよう調整しました。効率性を評価するため、各ワークロードを個別にテストしたときの利用率を使って全体のCPU利用率を算出し、それを、異種ワークロードの混在テスト中に測定した実際のCPU利用率と比べました。


テスト結果

   異種ワークロードの混在テストを実施したところ、PowerEdge 2850と6850のいずれのESXServerも、各種のワークロードを効率良く並列処理できていることがわかりました。PowerEdge 2850の場合、実際の利用率は、計算した理論値より5%増えていましたが、PowerEdge 6850の場合は、実際の利用率が計算した理論値よりわずかに下回りました。

   この結果から、4プロセッサを搭載するPowerEdge 6850の方が、2プロセッサのPowerEdge2850より異種ワークロードの混在環境を効率良く処理できることがわかりましたが、いずれにせよ両サーバとも差異が理論値の5%以内に収まっていることから、1台のサーバで種類の異なるワークロードを同時実行しても、性能に大きく影響しないことがわかります。

   このようにESXは、異種ワークロードが混在している環境でも効率的に処理できるため、複数のESXサーバでファームを構築し、VMを割り振るときは、サーバごとに同種のワークロードで無理に揃える必要はありません。

 
PowerEdge 2850
8MBのキャッシュと3.33GHzの
プロセッサを搭載した
PowerEdge 6850
ワークロード VM数 CPU
利用率
VM数 CPU
利用率
SQL Server 2000 3 23.40% 4 21.75%
SuSE LAMP 2 17.40% 4 21.50%
NetBench 3 23.18% 4 21.25%
Exchange Server 1
(750ユーザ)
15.75% 1
(1,000ユーザ)
16.50%
各ワークロードから計算した
全体のCPU利用率(理論値)
  80%   81%
実際に測定された
全体のCPU利用率
  85%   80%

表7:異種ワークロードを混在させたときのテスト結果


まとめ

   Dell PowerEdge 2850およびPowerEdge 6850サーバは、ESX Server仮想化ソフトウェアの運用に理想的なプラットフォームとなります。今回、数種類のワークロードを個別に、また、混在させてテストした結果、ESX Serverは、I/Oとメモリの利用パターンに応じて多数のVMが稼動でき、一貫して高い処理性能を示すことが確認されました。

   4種類のワークロードは、各サーバで基本的に同等のテスト結果が得られたため、いずれのワークロードを利用しても、VM全体のキャパシティ・サイジング(容量見積もり)に有効であると考えられます。

   これらのワークロードを合わせて同時実行した混在テストでは、ワークロードごとにI/Oパターンやメモリの利用傾向が異なるにも関わらず、ESX Serverによって効率的に処理されていることがわかりました。

   お客様のESX Server環境に適したサーバを選ぶときは、どれくらいのパフォーマンスと容量が必要になるのか検討してください。デュアルプロセッサのPowerEdge 2850は、高性能ながら低コストのため、ESX Serverファームを構築するのに向いています。

   PowerEdge 6850は、最大32GBのRAM、7個のI/Oスロット、4基のプロセッサをサポートするため、高性能で大容量なソリューションを求めるお客様に理想的です。

   「仮想化環境で最優先するものは何なのか」をはっきりさせれば、最適なPowerEdgeサーバがご選択いただけます。

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
  はじめに
  Microsoft SQL Server 2000
  PowerEdge 2850サーバ上のESX:ハードウェアの概要
PowerEdge 6850サーバ上のESX:ハードウェアの概要
VMware ESX Server サーバ統合ガイド
第1回 VMware関連基礎用語
第2回 仮想化環境の設計と物理サーバから仮想マシンへの移行方法
第3回 サーバの構成
第4回 インストール時の注意点とチューニングポイント
第5回 SANブート
第6回 ブレード・サーバへの導入
第7回 Dell PowerEdge 1855ブレードサーバのVMware VMotion性能
第8回 ブレードサーバで構築するVMware ESX ServerのVLANネットワーク
第9回 VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
第10回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(前編)
第11回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)
第12回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(導入編)
第13回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
第14回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)
第15回 デュアルコア・サーバによるVMware ESX Serverの性能向上

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