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| 厄介型問題の解決には関係者の平等な対話が必須 | ||||||||||||
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真の顧客至上主義とは顧客の言いなりになるのではなく、最終的に顧客の利益になるよう考え抜くことだといえるだろう。では、どうやったら顧客至上主義を実現できるのだろうか。 企業のITが抱えている課題は、実はこの20年間あまり変わっていない。図2のように、これらの課題は立場が異なる関係者グループが絡み合う「厄介型問題」(wicked problem)だ(第3回:ITの効果を享受するためにSI・ベンダーの使い方を変えろ!を参照)。そして、一方通行的な関係になりがちな顧客至上主義や「お客様=神様」の意識は、関係者グループの平等な対話とコミュニケーションを図ろうとする「厄介型問題解決法」と相反することになる。 具体的な対策としては、社内対話の場作りやCIOの役割の明確化、経営者の参画、外部コンサルの利用など、本誌にも毎回のように素晴らしいアイデアがあげられている。 だが、事業部門が情報システム部門を一介のベンダーと位置づけたり、情報システム部門やベンダー側が表面的な顧客至上主義を信奉している企業風土の中では、折角のアイデアもなかなか実践できないだろう。 表面的でなく、顧客の本当のニーズを見極め、各関連者グループで納得行くようなビジネスオブジェクティブを明確にして初めて、「必要十分」なソリューションの評価基準を設定できる。そうなれば、前述のタイムボックスやコストボックスの手法を使って、効率的に顧客の真のニーズに対応することも可能になるだろう。 |
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| マトリックス型組織で責任分担を明確にする | ||||||||||||
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情報システム部門と各ビジネスユニットの「顧客対ベンダー関係」を改善する策として、筆者が在席した米コンピュータ部品メーカーの組織を紹介する。この組織体制は、日本企業では割と珍しいドッティド・ライン・レポーティング(Dotted line reporting)に基づくマトリックス組織体制になっている(図3)。 これは、責任分担(Accountability)を明確化するために考え出されたものだ。社員が直接配属している部門の責任を示すのは実線(Solid line)レポーティング、それ以外に異なる機能を持っている部門の責任を示すのは、点線(Dotted line)レポーティングラインとなる。 例えば、ビジネスユニットの事業部長に、ITプロジェクトを成功させ、かつITコストを抑える責任を持たせる。あるいはビジネスユニットに独自のIT部隊を持たせ、その部隊が情報システム部門にも報告する責任を持たせる。米国の組織はこういった明確なラインによって、社員の評価と賞与計算に結び付けている場合が多い。 だが実際には、ビジネスユニットにITの責任を持たせ業績を算出する際には、ITコストの配賦基準という問題が発生する。その時、完全に公平な計算は難しいかも知れないが、少なくともそれをきっかけに、担当責任者達が話し合いをして基準を決めようという動きがでてくる。こういったプロセスによって、相互責任の認識が高まるわけだ。 社内での責任分担が明確になると、ビジネスオブジェクティブも明確になりやすい。情報システム部門もITベンダーに対し、ビジネスニーズを正確に伝えやすくなる。さらに、コアコンピタンスを反映する要求とそうではない要求を見極められ、スケールメリットを発揮する場合と差別化を図る場合を使い分けられる。 その結果、スケールメリットの追求を中心とした、リスクを回避するばかりの「実績主義」から抜け出せるわけだ。そして、たとえ成功率は5分の1でもよいとする実験型「攻めのIT」に対しても、ビジネス投資の面から適切に意思決定し、実行できるようになる。こうしたユーザとベンダーが一体化した組織は、日本でも十分に可能だと、筆者は考えている。 |
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