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Linuxディストリビューション比較

第1回:Linuxとディストリビューション

著者:市民電子情報網  安田 幸弘   2006/10/23
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ディストリビューションの分類

   Linuxディストリビューションの情報を集めるサイト「DistroWatch」(http://distrowatch.com/)には、350を超えるディストリビューションの情報が登録されている。さらにDistroWatchに登録されていないプライベートなディストリビューションも存在するため、実際の数はさらに多くなるだろう。

   だが先ほど述べたように、これらすべてのディストリビューション全く別物だというわけではなく、共通している点も多い。ここではまず、Linuxを使う上で重要となるポイントごとに分類してみた。

パッケージツールによる分類

   アプリケーションの互換性という点で重要なポイントとなるのが、ソフトウェアの配布に使用するパッケージ形式の違いだ。パッケージツールに注目すると、Red Hatが開発したパッケージツールを使うディストリビューションと、それ以外のパッケージツールを使うディストリビューションにグループ分けできる。

   現在では、ビジネスユーザ向きのディストリビューションのほとんどが、Red Hatにより開発されたRPMと、RPM互換のパッケージツールを採用している。この点からRPMはLinuxのパッケージツールのデファクトスタンダードになっていると言えるだろう。


デスクトップによる分類

   ユーザの操作に関わる点では、GUIによるデスクトップ環境で分類することができる。10年以上前にUNIXの世界では「Motif」と「OpenLook」というデスクトップの規格が主導権をめぐって対立し、UNIXユーザを真っ二つにするという事件があった。

   現在のLinuxでは主に「GNOME」と「KDE」の2つが一般的に利用されている。GNOMEとKDEは、両者ともオープンソースソフトウェアとして配布されており、ユーザは自由な選択かつ両者の共存をも可能にしている。

   このことから、GNOMEとKDEの並立が以前のような「抗争」に発展することはないが、どちらのインターフェイスを主に使用するかによって、デスクトップの雰囲気や操作性はずいぶんと異なってくる。

   主なディストリビューションでは、Red Hat系(Red Hat Enterprise Linux、Fedora Core など)のデスクトップはGNOMEをベースにし、KDEも選択可能となっている、SUSEはKDEのデスクトップを好むユーザが多いが、最近はGNOMEベースのデスクトップも選べるようになっている。

   MIRACLE LINUXやTurbolinuxではKDEを使用しているが、画面上のパーツやメニューの構成がWindows風のアレンジされているといった特徴がある。


目的による分類

   非技術的な面では、ディストリビューションの目的による分類が可能で、一般的なサーバやクライアントなどとして使用できる「汎用ディストリビューション」と、ある目的に特化した「専用ディストリビューション」の2つに大別できる。

   専用ディストリビューションとしては以下の様なものがある。

  1. 教育・学術などの分野に特化したディストリビューション
  2. インターネットサーバ用途、クラスタ専用などに特化したディストリビューション
  3. 組み込みや通信専用のディストリビューション

   一般的な用途で使用されるディストリビューションは汎用に分類されるが、想定する使用目的によってサーバ向けやデスクトップ向けなどの構成を用意している。例えばRed Hatではサーバとしての用途を想定したRed Hat Enterprise Linux ASやRed Hat Enterprise Linux ES、デスクトップを意識したRed Hat Enterprise Linux WSなどを用意している。

   なおサーバ、デスクトップといった分類は、主にそれぞれのディストリビューションに含まれるアプリケーションの数の違いによってあらわれる。サーバとしての用途で使用するアプリケーションが多ければサーバ向け、デスクトップ作業で使用するアプリケーションが多ければデスクトップ向けとなる。

   ほとんどの場合、カーネルやライブラリなどの中核部分に大きな違いはなく、特にRed Hatではディストリビューションの構成はほぼ同一で、利用できるCPUの数やサポートの種類などが異なるだけとなっている。


商用・非商用の分類

   さらに、商用と非商用のディストリビューションという分類もある。

   商用ディストリビューションの場合、多くはベンダー内部で開発やテストが行われ、使用には有償のライセンスなどが必要になる。これに対して非商用のディストリビューションでは、ユーザコミュニティがボランティア的に開発とテストを行い、使用にあたって特別な費用の支払いは求められないことが多い。古くからある非商用ディストリビューションとしては「Debian」が有名だ。

   しかし商用ディストリビュータの中には非商用ディストリビューションと密接に連携し、支援しているケースも多い。たとえばRedHatは商用のRed Hat Enterprise Linuxを持っているが、Fedora Coreという非商用のディストリビューションのスポンサーでもある。同様に、SUSEには商用のSUSE LinuxやSUSE Linux Enterpriseの製品群とは別に非商用のOpenSUSEがある。

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株式会社市民電子情報網 安田 幸弘
著者プロフィール
株式会社市民電子情報網  安田 幸弘
取締役。主にオープンソースソフトウェアを使用した非営利組織向けのネットワークサービスの提供やサーバの運用/管理を行うとともに、フリーの技術ライターとしてインターネット、サーバ管理などに関して書籍や雑誌記事を執筆している。


INDEX
第1回:Linuxとディストリビューション
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