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ERP+SOA
ERPへのSOA適用による企業システム構築の新たなアプローチ

第1回:ベストプラクティスといわれたERPの落とし穴

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2006/12/13
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企業のIT成熟度

   マイケルハマーらが発表した「リエンジニアリング革命(1993年)」を発端に、多くの企業ではBPR(Business Process Re-Engineering)への取組みが加速した。それと同時にIT化についてもオープン化や、ERPの潮流に合わせて2000年問題といった大きな環境の変化への対応を求められた。

   ではここ十数年の間に、企業のIT化はどこまで進展したのだろうか。

   日本企業におけるITの活用は、特定部門で導入は進んでいるものの、各事業部や工場単位で個別のシステム構築を進めており、「部門の壁」を越えた企業組織内での最適なシステム化がはかれていない企業が70%近くある(図2)。

   
企業におけるIT成熟度 出展:経済産業省「IT投資促進税制に関する調査」(2006年8月)、ガートナー「IT投資動向に関する海外調査」(2006年8月)
図2:企業におけるIT成熟度
出展:経済産業省「IT投資促進税制に関する調査」(2006年8月)、ガートナー「IT投資動向に関する海外調査」(2006年8月)

   またグループ企業や取引先、顧客を巻き込んだ企業を超えたITの活用については、アメリカに比べて大きく遅れていることがわかる。これはただ単にIT化が遅れたのではなく、IT化を進展させるための「部門」や「企業」を超えたビジネスモデルの変革に対するハードルが高いことはいうまでもない。

   欧米における変革プロジェクトにおいて、CEOやCIOがプロジェクトの陣頭指揮をとり、経営目標にそったアプローチを進めていく。

   逆に日本企業においては、このようなアプローチを取るケースは稀で、現場での調整を中心に進めていくケースが多い。そのため現業担当者の業務を変えたくないという意思が強く働き、例えば受発注プロセス1つを見ても、顧客単位での個別の取り引きルールを尊重して拠点ごとに異なる調達ルールを定めるなど、部門固有のビジネスイニシアチブに執着してきた感がある。

   その結果、多くの日本企業ではビジネスモデルが硬直し、さらにその機動力とならなければならないIT基盤までもが陳腐化している状況にあるのだ。その厳しい現実の中で、各企業は多くの環境変化を受け入れていく必要性に迫られているのである。

   この十数年間、多くの企業はビジネスモデルの変革のために欧米の先進事例を「ベストプラクティス」と呼び、ERP導入を進めてきた。結果として、平均的に当初の期待効果よりも20%も低い効果しか得られていないのが現実であり、そのほとんどの企業が、経理・人事といった定型業務を中心に導入しているのが現状である。

   先に述べた環境の変化に対応していくために、これからの企業活動の取り組みとして、CEOやCIOが先導して変革を進めていく必要がある。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第1回:ベストプラクティスといわれたERPの落とし穴
  はじめに
企業のIT成熟度
  ERPベストプラクティスといわれた落とし穴