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今だから知っておきたいXMLデータベースの成功ポイント
今だから知っておきたいXMLデータベースの成功ポイント

第2回:仮想事例から見るXMLデータベースシステムの開発

著者:ウルシステムズ  伊奈 正剛   2007/1/26
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仕様変更に強い開発プロセスの実現

   XMLデータベースの利用によって、開発プロセスにも大きなメリットが得られる。今回のシステム開発例では、稼働開始までの期間を短くするために開発を進められる部分から手がけていく「イテレーション(繰り返し)」型が採用できる。
イテレーション型の開発スケジュール
図3:イテレーション型の開発スケジュール
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   まず第1イテレーションとして業務パターンや共通マニュアルに必要なビジネス項目を入力する機能を先に稼動させ、データの準備作業を可能にする。第2イテレーションでは基本情報の入力を進めるのと並行して、個別マニュアルの入力機能の開発を行う。このようにして、順次機能を追加していくのが繰り返し型の開発プロセスである。このやり方であれば、それぞれのイテレーションで生じた課題を次のイテレーションで解決することで、仕様変更に強い開発を進めることができる。

   しかし、このような仕様変更は、システムをよりよいものにしていくためには望ましいものであるが、変更の影響範囲が大きければ対応に時間がかかり、稼動開始に間に合わなくなってしまう。特に、しっかりしたデータベースのスキーマ定義を先に行わなければならないようなシステムの場合には、スキーマの変更が生じるとデータの再入力も必要になるため、仕様変更による影響は非常に大きい。

   スキーマ定義が不要なウェルフォームド対応のXMLデータベースを採用すれば、仕様変更に柔軟に対応できる。さらに過去に入力したデータに影響を及ぼすことなくスキーマを変更したXMLデータを登録できるため、影響範囲を抑えながら開発を進めることも可能になる。このように、変更の際にシステムを一度も止めることなく、稼働中のシステムに対してリアルタイムに変更を加えられる点も開発上の大きなメリットとなる。

   XMLデータベースの柔軟性は非常に効果的なので、開発の途中からデータベース自体を切り替えることさえ可能になる。実際に起きたときの状況を今回の事例で説明すると、第1イテレーションではリレーショナルデータベースを用いて基本情報を入力する機能を作成し、続く第2イテレーションで個別マニュアル入力機能を作成していたのだが、その途中で、パフォーマンスの問題が発生したのである(図3)。複雑な検索の不要な基本情報の入力では十分だった性能が、複雑な検索を必要とする個別マニュアルの場合には十分ではなかったのだ。

   結局、第2イテレーションから、急遽XMLデータベースに変更をしたのであるが、スキーマの定義が不要なウェルフォームドXML対応の製品に切り替えたので入力されたデータ自体を変更することなく、十分な性能を持つシステムの開発を行うことが可能になった。


XMLデータの活用

   以上、商品取り扱いマニュアルの事例について、XMLデータベースを活かす4つの指針を見てきた。この事例では、これらの指針に加え、PDF出力機能やWebブラウザによる閲覧機能といった面でも、XMLデータの特性を活かしている。

   XMLはドキュメントのフォーマットとして広く採用されており、例えばPDF出力機能では、XMLドキュメントに対してルールを適用することでPDFに変換して印刷を行う既存のソリューションを利用することができる。また、XMLとHTMLは親和性が高く、XSLTを用いてHTMLに変換することでWebブラウザでのマニュアル閲覧機能を容易に構築でき、高いメンテナンス性も維持することができるのだ。

XMLを通じたシステム構成
図4:XMLを通じたシステム構成
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


まとめ

   企業が直面するビジネス課題を解決するために、XMLデータベースを有効に活用できる例について解説してきた。このようなケースにおいては、適用するビジネス上の狙いや業務の特性がXMLデータベースに合致していることが理解していただけたと思う。

   このような分野でのシステム開発は、これまで進められてきたような定型的な業務の支援から、より創造的な業務を支援する目的へと変化していくことだろう。皆さん自身、あるいはパートナー企業とのビジネスを注意して見直せば、従来の定型的な業務しか支援できなかったリレーショナルデータベースを中心としたシステムでは見逃されていた支援領域があるはずだ。

   我々の身の回りには、実際には半定型文書処理に向いた業務や創造的な活動が隠されている。XMLデータベースを活用することが、新しい創造的な業務の創造や企画力を最大に活かすキーファクターになっていくだろう。

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ウルシステムズ株式会社 伊奈 正剛
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  伊奈 正剛
前職よりEDI、B2B、EAIといったシステム構築を中心に、XMLを駆使したシステムの開発に携わる。現職では、流通業界向けの次世代XML-EDIシステムの構築とその導入コンサルティングに従事するかたわら、XMLデータベースのビジネス活用に向けて検討を進めている。


INDEX
第2回:仮想事例から見るXMLデータベースシステムの開発
  企業システムへのXMLデータベースの適用指針
  半定型文書としての業務マニュアル
仕様変更に強い開発プロセスの実現