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事例から学ぶBCMの本質

第3回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜ホテル会社の対応事例

著者:みずほ情報総研  多田 浩之   2007/2/9
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スターウッドホテルのBCMの基本方針とその対応

   スターウッドホテルが迅速な事業の復旧・継続に成功した最大の要因は、通常期から復旧期に至る、同社のBCMの基本方針がしっかりしたものであり、それにそって実効性のある緊急時・危機管理計画(BCP)が整備されていたことです。
危機管理
フェーズ
BCMの基本方針(例)
方針 概要
通常・
準備期
オールハザード対応のBCPの策定 9・11同時テロ事件を受けて、災害別に策定していたBCPを、オールハザード(全災害)に対応できる包括的なBCPに更新。予期できない事態への対応に焦点を置いてBCPを策定。
災害時の責任・権限の明確化 法人、部門、現場(ホテル)レベル別に、災害準備・応急対応を体系化したBCPを策定。本部、地域、現場(ホテル)別に責任と権限を明確化。
包括的な緊急時・危機管理計画の明確化 事前・事中・事後にわたる非常時通信計画、避難計画、復旧計画などを策定。
危機管理体制・非常時通信の確立 ハリケーンシーズン中に、全組織および「危機管理チーム」にまたがってコミュニケーションを行う仕組みを整備。
警戒時・
緊急時
非常時コミュニケーションの維持 ハリケーン警報発令後、各ホテルに緊急時指揮センターを設置し、地域復旧チーム、本社危機管理チーム、ホテル危機管理チーム間でコミュニケーションを毎日実施。
被災地域の責任者の意思決定の権限 災害時において、もっとも危機に直面している地域の責任者(地域管理者)に、応急対応に関する意思決定に関して完全な権限を与え、組織全体で支援。
復旧期 災害教訓の検証 災害を経験した後に、その教訓をBCPに反映。

表2:スターウッドホテルにおける危機管理フェーズ別のBCMの基本方針の例
(上院聴聞会のビデオ・資料、その他公開資料を参考にみずほ情報総研作成)

   表2に示したように、同社のBCMの基本方針は、きわめて実践的なものといえます。

   同社の南東地域担当副社長であるKevin Regan氏は、上院の聴聞会で、同社がハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功した大きな要因は、柔軟性のあるBCP、指導力、チームワークおよびコミュニケーションであったことを証言しています。

   では、次に、同社が当該危機において実施した具体的な応急対応の例を述べます。

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みずほ情報総研株式会社 多田 浩之
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社
多田 浩之

情報・コミュニケーション部 シニアマネジャー
1984年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学研究科修了、富士総合研究所(現みずほ情報総研)に入社。専門は非常時通信、危機管理および産業インフラリスク解析。現在、ICTを活用した産学連携安全安心プラットフォーム共同研究に携わる。中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」下の小委員会・分科会委員、内閣府「消費者教育ポータルサイト研究会」委員などを歴任。


INDEX
第3回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜ホテル会社の対応事例
  ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功したスターウッドホテルの事例
スターウッドホテルのBCMの基本方針とその対応
  スターウッドホテルがハリケーン・カトリーナ危機において実施した具体的な応急対策・対応の例