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調査レポート
> ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功したスターウッドホテルの事例
事例から学ぶBCMの本質
第3回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜ホテル会社の対応事例
著者:
みずほ情報総研 多田 浩之
2007/2/9
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ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功した米国企業
「
第2回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜エネルギー会社の対応事例
」では、サザンカンパニーの事例を紹介しました。今回は、スターウッドホテルのハリケーン・カトリーナ災害に対するBCMの成功事例について解説します。
なお、これから述べる事例は、前回と同様に上院の聴聞会のビデオ・資料およびその他公開情報に基づき、筆者の判断で整理したものであることを、あらかじめお断りしておきます。
スターウッドホテルが被ったハリケーン・カトリーナによる被害
スターウッドホテルは、ニューヨーク州ホワイト・プレインに本社を持つ、世界規模で展開するホテル・リゾート企業の1つです(従業員約14万5千人)。
同社は、世界で860以上(2006年12月現在)のホテル・リゾート施設を所有・運営しており、ニューオリンズ市内では3つの主要ホテル(Wフレンチ・クォーターホテル、Nニューオリンズホテル、シェラトンホテル・ニューオリンズ)を運営しています。
被害の概要
被害状況
ニューオリンズ市内の関連ホテル(Wフレンチ・クォーターホテル、Nニューオリンズホテル、シェラトンホテル・ニューオリンズ)が被災。
停電、浸水、窓破損、施設損傷(一部)など。
従業員とその家族(1,000人)が自宅喪失。
復旧
ニューオリンズ市のダウンタウンで最初に照明を点灯。ハリケーン・カトリーナ再上陸後、6日間で電源をフル稼働(非常用発電機による)。
ハリケーン・カトリーナ再上陸後(注1)、同市のダウンタウンでトラックにより最初に飲料水を搬送。
ハリケーン・カトリーナ再上陸後、同市のダウンタウンで最初にホテル営業を再開。
※注1:
ハリケーン・カトリーナは、最初にフロリダ半島に上陸し、その後メキシコ湾に抜けてルイジアナ州南部に上陸した。再上陸後のメキシコ湾沿岸地域の被害が甚大であった。
表1:ハリケーン・カトリーナによるスターウッドホテルの被害状況
(上院聴聞会のビデオ・資料、その他公開資料を参考にみずほ情報総研作成)
ニューオリンズ市内にある同社の3つのホテルは、停電や浸水などの被害を受けましたが(表1)、ハリケーン・カトリーナ再上陸後、同市の堤防が決壊し、市内の80%が冠水したことにより、安全確保のため、ホテル客や従業員を数日間ホテルに収容する事態になりました。
しかし、ホテル側の迅速かつ適切な対応により、怪我人を出さずに、無事にホテル客および従業員をダラス市内にある同社の関連ホテルに搬送することに成功しました。
さらに、各ホテルに発電機を搬送し、わずか6日間で電源を稼動させることに成功し、ニューオリンズ市のダウンタウンで最初にホテル営業を再開することができました。
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著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社
多田 浩之
情報・コミュニケーション部 シニアマネジャー
1984年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学研究科修了、富士総合研究所(現みずほ情報総研)に入社。専門は非常時通信、危機管理および産業インフラリスク解析。現在、ICTを活用した産学連携安全安心プラットフォーム共同研究に携わる。中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」下の小委員会・分科会委員、内閣府「消費者教育ポータルサイト研究会」委員などを歴任。
INDEX
第3回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜ホテル会社の対応事例
ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功したスターウッドホテルの事例
スターウッドホテルのBCMの基本方針とその対応
スターウッドホテルがハリケーン・カトリーナ危機において実施した具体的な応急対策・対応の例