いま、企業のITシステムではシンクライアントが大いに注目を集めている。シンクライアントを端的に表現すると「必要最低限なソフトウェアだけを搭載した端末である」といえる。
通常のPCには、CPUやメモリ、ハードディスクといったハードウェアだけではなく、WindowsなどのOS、アプリケーション、ユーザデータ、ユーザの設定など、様々なコンピュータリソースが搭載されている。
しかしシンクライアントでは、ネットワークを経由したサーバ側にあるコンピュータリソースを利用することで、これらのリソースを端末側に搭載していなくても、通常のPCと同じような機能を利用することができる。
では、なぜいまシンクライアントに注目が集まっているのだろうか。
これには主に2つの理由があげられる。1つはTCO(Total Cost of Ownership)削減と運用負荷の軽減だ。サーバに集約したコンピュータ環境を実現することで、システム管理者とユーザ双方の端末管理の工数を軽減するだけでなく、PCを利用するためのソフトウェア費用や運用保守費用、ハードウェア/ソフトウェアの故障やトラブルにかける人件費を含めたTCOを削減することができる。
もう1つがセキュリティの強化だ。これは端末内に情報を保存しないため情報漏洩の防止につながるだけでなく、一元化によるセキュリティレベルの統一が容易になる上、ウイルス感染の軽減にもつながる。その他にもサーバ集中管理による社内基盤の統制や端末共有によるオフィスの省スペース化などのメリットもあるだろう。
いまのシンクライアントと同じコンセプトを持った「ネットワークコンピュータ」なるものが、10年ほど前に話題となった。しかし当時はハードウェアやネットワークの性能が十分ではないこともあり、実用化以前に消えてしまった。しかし現在では十分実用できる環境が整ってきている。
しかし、クライアントの求める作業環境も高度化している。複数のアプリケーションを組み合わせて成果物を作るような業務をしているのであれば、シンクライアントは使いづらいものでしかない。
そういった観点からすると、オフィス内のすべての端末がシンクライアント化することは考えにくい。ただ経理や在庫管理といった、これまでの汎用機で処理していたような定型的な業務環境は移行しやすいのではないだろうか。レガシーシステムからの移行が進むにつれ、シンクライアントの導入についても、今後検討されることが大きく増えていくことだろう。
|