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第7回:利用部門が「情報を使いこなす」ための正しいBIツール導入方法

著者:有田 若彦   2007/4/27
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ライセンス形態を基準にしたBI導入には問題あり

   次に、BIの導入形態について考えてみよう。

   最近の情報検索やBIツールのライセンス形態は、ほぼ2つに分かれる。複雑な検索条件を生成したり、自由検索できるライセンスと、そのライセンスが生成した検索結果のみを閲覧できるライセンスの2つだ。

   この2つのライセンス価格にはかなりの開きがあるため、機能制限ライセンスを大量購入しつつ、自由検索できるライセンスは極めて少数を導入するというパターンが一般的だろう。

   例えば、ライン&スタッフ組織では、スタッフ部門に自由検索できる情報分析機能を導入。ライン部門には単純検索と定型データの確認に限定した機能を配布するという形態が考えられる。このほか、IT部門とユーザ部門といった分業パターンも多い。ユーザ部門から要求されたデータをIT部門が自由検索ライセンスで作成し、機能限定ライセンスでユーザ部門が閲覧するという使い方だ。

   その他、分業パターンは種々考えられるが、情報の利用者と加工者が別々になっている点に注目してほしい。筆者は情報活用を考えると、この導入方法は極めて問題だと感じている。理由は以下の通りだ。

   情報を使った意思決定のプロセスは、「P → D → C → A」という流れになっている。P(Plan)は、様々な情報を集めて戦略や戦術を考えるフェーズ。D(Do)では、実行した結果を進捗状況としてデータに残すことになる。C(Check)では、最初に考えた結果と実行結果の差を把握し、うまくいった、もしくはそうならなかった理由を分析することになる。A(Action)では、分析結果から軌道を修正していくのだが、その過程を後から追跡できるように工夫しておく必要がある。

   ここで問題になるのが「P」と「C」の部分だ。というのも、この部分は定型データを基本としつつも、「何かに気づいたら、試行錯誤して、腑に落ちる」まで仮説検証する思考手順を踏む。そのため、分業によるタイムラグはなるべく少なくして、思考の途切れを回避しなければならない。おまけに、検索条件に制約や制限も、セキュリティ上問題がなければ撤廃しておくことが望ましい。

   ライン&スタッフ組織の場合、その間でデータ加工と活用を分業するのではない。ラインは日々のライン管理の中で、仮説検証を回すためにデータ検索と分析を自己完結して行うようにしたいと考えている。スタッフは、ラインの側面支援と将来計画のための仮説検証でデータを活用していくように指導していくことが大切だ。
仮説検証データ活用の基本
図2:仮説検証データ活用の基本
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ところが現実には、多くの製造現場でライン部門が日々の忙しさのために「考える力を失っている」という問題を抱えている。なぜ多忙になるのか、なぜミスが多くなるのかといったことは現場部門にしか「気づけない」ことなので、データ活用は大変重要な意味を持ってくる。現場にこそ「データ中心思考」を根付かせなければ、従来からの悪循環を断ち切ることは難しい。

   このように、ツールの選び方一つで、仕事はいかようにも変わることをIT部門は認識しておくべきだろう。

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第7回:利用部門が「情報を使いこなす」ための正しいBIツール導入方法
  BIツールの高度化が進む時代
ライセンス形態を基準にしたBI導入には問題あり
  シーケンシャルな情報流通では変化に対処できない危険が
  1. 現状の能力レベルの見える化