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第5回:情報格差社会とは?

著者:野村総合研究所  小林 慎和   2007/7/27
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情報格差の定量データ

   「情報量格差」と「情報操作格差」が生み出す情報格差を具体的な定量データとして簡単に試算してみたい。

   もっともライトユーザを「1日のインターネット利用時間が10分未満」、もっともヘビーユーザを「1日のインターネット利用時間が5時間以上でかつ、日々継続的に10サイト以上のブログを閲覧するユーザ」と仮定したとする。

   平均通信速度を10Mbpsとするなら、1年間でこの両者の間の獲得情報量(正確には、目の前を流れる情報量)は映画DVDにして約2,000枚もの差が生まれる。さらに、ヘビーユーザは日々10人のブロガー達が十人十色で綴る様々な視点のブログを読むため、視野が広がり情報リテラシースキルが向上する可能性も高いといえる。

Web社会を生き抜くために求められる力「情報耐性力」

   そして、最後に「情報耐性格差」である。情報に対する耐性力はWeb社会を生きていくうえで必須となる。これは現在多くの人が不足している能力である。

   前回でも指摘したように、Web上で表現されている事柄は、各人の意図のごく一部分である。それを鵜呑みにしてはならないし、批判ばかりしてはならない。ブログやSNSの仕組みを活用して、自ら情報発信をした場合、槍玉にされる恐れからインターネットから遠ざかる利用者もいることだろう。しかし、仮に遠ざかったとしても、心無い誰かによってインターネット上で知らぬ間に批判の的となっていることも皆無ではないのだ。

   これからのWeb社会を生き抜くためには、発信することに対しても、発信されることに対しても耐性を持つようにしなければならない。SNSやブログを通して各種様々な情報共有がインターネットを通じて活発になされている。これをさらに促進するためには、利用者側である私たちも変わり、耐性を身につける必要がある。

   その上で、誹謗中傷をコントロールし、より議論が活発になるような仕組みを事業者側は提供する必要があるだろう。現在SNS登録者数は約2,000万ほどであるが、野村総合研究所が調査したところ、その中で実名で登録しているのはわずかに2割に過ぎない。実名登録でなければ、活発な議論がないとはいわない。しかし、この実情は誰もが情報発信できるという機能を持つインターネットへの怖れのあらわれだといえよう。


真のWeb生活とビジネスチャンス

   以上述べた3つの格差に対処できたとき、真のWeb生活がはじまるといえるのではないだろうか。この格差の是正を望む利用者にそうしたサービスを提供するところに、ビジネスチャンスが広がっていると思われる。

   Web 1.0では、情報量格差を埋めるべく、多数の事業者が格安でブロードバンド環境を提供することを目指した。Web 2.0萌芽期に提供されているサービスは、情報操作格差を助長する動きに思える。誰もが手軽に情報発信、情報共有できる仕組みとしてブログやSNSが提供開始されることで、各個人の発信情報量には大きな差が生まれている。またAjaxを活用したGoogle MapやRSSなど知る人と知らない人の間における、インターネットの活用度にも大きな差が生まれようとしている。

   情報耐性力については、それを身につけている人が少なく、かつそれを啓蒙することも行われていないのが現状である。現在話題を集めている仮想生活空間を提供するセカンドライフは、Web上での人生経験を客観的視点で共有することを促進するビジネスということもできるだろう。いわば、自らの分身がデジタルデータとして、Web上に蓄積されるのである。Web世界での生き方を教えてくれる人生の先輩もいなければ、身体的苦痛を与えないために、Web世界上の分身に対する悪質な攻撃も多々起こりうるだろう。

   今回議論した3つの格差を是正するために、Web世界にはWeb世界の社会的仕組みが整備される必要があるだろう。そうした新たなプラットフォームを提供できる事業者は、現在のWeb 2.0の潮流の行く先を変えることができるのかもしれない。

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野村総合研究所 小林 慎和
著者プロフィール
野村総合研究所  小林 慎和
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。


INDEX
第5回:情報格差社会とは?
  ブログとSNSが生み出す情報格差社会
  情報操作格差は、加速して拡大する
情報格差の定量データ