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第5回:情報格差社会とは?

著者:野村総合研究所  小林 慎和   2007/7/27
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ブログとSNSが生み出す情報格差社会

   勝ち組、負け組、貧富の格差の拡大など、社会の厳しさを表現する言葉ばかりが聞かれる。こうした格差社会を生み出す一端を担ったのは、インターネットの普及といえるだろう。かつてないスピードで発展する市場と参入障壁の低さが企業の盛衰を左右し、格差の拡大を助長した。そしてブログやSNSなどによって、総表現社会となりつつある今、情報格差が社会格差をさらに押し広げようとしている。

   ここでいう情報格差とは「情報量格差」「情報操作格差」「情報耐性格差」の3つから構成されると考えている。今回は、この3つの格差を解説しながら、今後のビジネスの行く末を占っていこう。

世代に寄らず広がる情報量格差

   1つ目の「情報量格差」とは、古い言葉ではデジタルデバイドという言葉でも表現されていたものである。

   人々に割り当てられた時間は有限であり、時間に対しては全世界で格差がない。しかし、単位時間当たりに獲得できる情報量は、ネットワーク接続環境に依存する。アナログ媒体による情報のみに依存する生活スタイルと、ネットワーク上の情報を有効活用するスタイルでは、目の前を流れる情報量は10倍にも100倍にも広がるからだ。年月が経過したとき、この獲得情報量の格差は逆転することが不可能となる。

   「第1回:加速するWebビジネス」で紹介したように、2006年末時点でのブロードバンド利用者は6,000万人を超えている。これらブロードバンドユーザのインターネット利用時間は、1日あたり平均で2時間32分と推計している。5年前ならば、この2時間を超える時間をインターネットに費やしているのは、若者という意見が大半を占めたことだろう。しかし、2007年現在では消費者の利用実態が様変わりしている。

   図1に世代別の平日におけるインターネット利用時間の状況を示す。

平日における世代別インターネット利用時間 出所:野村総合研究所
図1:平日における世代別インターネット利用時間
出所:野村総合研究所

   この図1で注目すべきポイントは2つある。1点目は「世代間で利用時間の分布にさほど差がないこと」である。これはつまり、年長者のインターネットのヘビーユーザもいれば、若者のライトユーザも存在していることを示している。

   2点目は、5時間以上のユーザの割合が、世代があがるにつれて高くなっていることだ。図1のアンケート調査は、インターネットアンケートを活用して集計したものである。そのため、アンケートの回答者はある程度のインターネットヘビーユーザに絞られている。それを考慮した場合、インターネット利用時間が多少高くでる傾向はあると思われるが、それは高齢者に限ったことではない。

   図1をみるとインターネットを1日5時間以上利用しているという50歳以上の回答率が2割を超えている。これは驚異的な数字であり、インターネットはもはや世代に関係のない情報収集ツールとして一般化しているといえよう。

   ただし、ここで注意していただきたい点がある。それは10代のインターネット利用時間がそれほど高くない点だ。これは、携帯電話の影響が大きい。現在の若者は、インターネット利用時間よりも携帯電話を利用している時間の方がはるかに長い。ここ5年でインターネット利用時間が減少した唯一の世代である。

   ここまで見たように、インターネットの接触時間は、世代によらない。逆にいい換えれば、決められた番組が放送されるテレビ、限られた紙面で表現される雑誌などのレガシーメディアを重視する人も世代によらず存在する。

   インターネットは自分が求める情報を収集するツールとしては、はるかにレガシーメディアを凌ぐ。その情報量は単純ではあるが、利用時間に比例する。インターネットを通して収集される情報量格差は、あらゆる世代で今起こっているのである。


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野村総合研究所 小林 慎和
著者プロフィール
野村総合研究所  小林 慎和
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。


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第5回:情報格差社会とは?
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