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シマンテックイエローブック
ストレージ管理の標準化

第6回:Storage Foundationのコアの概要(VxFS)

著者:シマンテック   2007/5/14
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FlashSnapスナップショット

   Portable Data Container機能とStorage Foundationの別の機能であるFlashSnapスナップショットと併用すればアプリケーションサーバーのデータをバックアップサーバーで利用することが可能です。そのようなオプションの1つを図4-2に示します。
転送可能なファイルシステムを使用したオフホストバックアップ
図1:転送可能なファイルシステムを使用したオフホストバックアップ

   図1に示しているのは、AIXサーバーで実働アプリケーションを稼動している例です。まず、適切な時間帯(1日の業務の終了時など)に、実働データのVxVMフルサイズインスタントスナップショットを作成します。次に、VxVMがスナップショットボリュームと実働データボリュームの同期処理を実行します。

   つまり、実働ボリュームからスナップショットボリュームにデータをコピーすることによって両方の内容を同一にします。同期処理が終了すると、スナップショットボリュームを含んだディスクを所属先のVxVMディスクグループから切り離し、アプリケーションサーバーからデポートし、バックアップサーバーにインポートします。

   VxVMボリュームは、Portable Data Container形式を使用しているので、バックアップサーバーでも起動できます。VxVMボリューム上のVxFSファイルシステムも、バックアップ、レポート生成、データ分析、問題診断、ソフトウェアテストなどのために、直接マウントして使用できます。Storage Foundationの機能を使えば、このようなプロセス全体をアプリケーションの稼動中に実行できます。

   補助的な操作では、実働アプリケーションとは別のサーバーやストレージリソースを使うので、実働性能には何の影響もありません。スナップショットの使用後に実働データとの間で再同期処理を実行するときの影響も、FastResyncテクノロジの使用によって緩和できます。しかも、実働システムのピーク時以外の時間帯に、そのための実行スケジュールを設定できます。

   この例の特異な点は、バックアップサーバーと実働サーバーの種類が異なっていてもかまわない、ということです。実際にこの例では、SolarisとAIXになっています。たとえば、バックアッププラットフォームをSolarisで標準化している企業は、AIXやHP-UX の実働サーバーのデータをバックアップするためにSolarisをそのまま使用できる、ということになります。

   データマイニングツールのライセンスがデータセンターの1つのプラットフォームに限られている場合は、そのプラットフォームですべてのプラットフォームのデータを分析することが可能です。実働アプリケーションと補助アプリケーションの両方がファイル内 のデータを正しく解釈できるのであれば、プラットフォーム間でデータをやり取りする操作は、データセットのサイズにかかわりなく、ほんの一瞬で完了します。

   毎日のバックアップや毎週のレポート生成などのために補助アプリケーションを周期的に実行する場合は、VxVMのFastResync.テクノロジを使用して、スナップショットの再同期処理にかかる時間を短縮できます。ファイルシステムのスナップショットの補助的な操作が完了したら、そのスナップショットを含んだディスクをバックアップシステムからデポートし、元のディスクグループに再結合し、元のオリジナルボリュームとの間で再同期処理を実行してから、再び補助ホストに転送できます。

   FastResync.テクノロジは、ボリュームの再同期処理を実行するときに、スナップショットの存在期間中に変更のあったブロックだけをコピーするので、通常は、オリジナルボリュームのすべてのブロックをコピーする場合よりもはるかに短時間で処理を完了できます。


必要となる追加の処理

   Storage Foundationが稼働しているUNIXシステムとLinuxシステムの間でデータをやり取りする場合も、処理の流れは基本的に同じですが、1つだけ追加の処理が必要になります。つまり、それぞれのプロセッサでバイナリ整数を参照するアーキテクチャが異なるので、その違いを吸収するためにメタデータの変換が必要になります。UNIXの主な3種類のエンタープライズプラットフォームはいずれも、2バイト、4バイト、8バイトのバイナリ整数を解釈するための形式として、いわゆる「ビッグエンディアン」形式を採用しています。

   この形式では、整数を構成する各バイトのうち、最小メモリアドレスのバイトに最上位の8ビットが入り、最小メモリアドレスよりも1つ大きいメモリアドレスのバイトに最上位の1つ下の8ビットが入る、といった具合になります。

   一方、Linuxオペレーティングシステムのほとんどのプロセッサアーキテクチャで使用しているIntelとAMDはどちらも、バイナリ整数をメモリに格納するために「リトルエンディアン」形式を採用しています。その名前からもわかるとおり、リトルエンディアン形式のプロセッサは、バイナリ整数の各バイトのうち、最小メモリアドレスのバイトに最下位の8ビットを格納し、最小メモリアドレスよりも1つ大きいメモリアドレスのバイトに最下位の1つ上の8ビットを格納する、といった具合になります。

   ファイルシステムのメタデータは、バイナリ整数の大きな塊が含まれています。バイナリ整数が最も多く存在しているのは、iノード内の記述子であり、iノードには、ファイルデータのブロックアドレスが(VxFSの場合はエクステントのサイズも)含まれています。ビッグエンディアン形式のシステム(エンタープライズUNIX)で作成したファイルシステムをリトルエンディアン形式のシステム(Linux)で使うには、ファイルシステムのメタデータに含まれているすべての整数をビッグエンディアン形式からリトルエンディアン形式に変換しなければなりません。

   整数の変換は、プラットフォーム間でファイルシステムを移動する前に一度にまとめて実行することも、ファイルシステムのメタデータの中で整数にアクセスするたびに実行することも可能です。VxFSでは前者の方法を採用しています。ファイルシステムの使用中にメタデータにアクセスするたびに整数形式を変換するオーバーヘッドよりも、一度にまとめて変換するオーバーヘッドのほうが望ましいと判断しているからです。


VxFSファイルシステムをUNIXからLinuxプラットフォームへマウント

   VxFSファイルシステムをエンタープライズUNIXプラットフォームからLinuxプラットフォームにマウントして操作するには、まずファイルシステムをアンマウントしてから、メタデータをリトルエンディアン形式に変換するためのユーティリティを実行します。次に、ファイルシステムのボリュームを含んだディスクをUNIXプラットフォームからデポートしてLinuxプラットフォームにインポートし、そのLinuxプラットフォームにファイルシステムをマウントして、補助アプリケーションで操作します。

   この追加処理を実行すれば、エンタープライズUNIXファイルシステムでもLinuxプラットフォームに論理的に移動して、実働データを実際に使用したままの状態で、実働データのスナップショットをホストの外部で補助的に操作することなどが可能になります。UNIX同士の間でファイルシステムを移動する場合と同じく、この場合も、実働システムで稼働するアプリケーションと補助システムで稼働するアプリケーションの両方がファイル内のデータを正しく解釈できることが必要です。

   1つのUNIXプラットフォームで作成して管理するデータを別のUNIXプラットフォームまたはLinuxプラットフォームでも操作できれば、対象のタスクにさらに多くの種類のリソースを適用することが可能になり、企業のIT業務の柔軟性が高まります。異機種プラットフォームの間でファイルシステムを移動する機能を使えば、補助的な操作のためのソフトウェアを実行しているプラットフォームを、その種類にかかわりなく利用することが可能になります。その際に、データセットをコピーする必要はありませんし、ファイルサーバーの機能によってアプリケーションの性能やスケーリングが制約を受けることもありません。

   転送可能なファイルシステムを使用すれば、リソースの使用効率を改善できるばかりか、コピーや変換を実行しなくても1つのプラットフォームのデータを別のプラットフォームですぐに利用できるので、プラットフォームの変更も検討しやすくなります。

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INDEX
第6回:Storage Foundationのコアの概要(VxFS)
  ファイルシステムの役割
  VxFSの高度な機能
FlashSnapスナップショット
  マルチティアストレージの有効利用