第2回:オープンソースのオフィスソフトって? (2/3)

はじめてのオープンソース
たかはしもとのぶの「はじめてのオープンソース」

第2回:オープンソースのオフィスソフトって?

著者:たかはしもとのぶ   2007/7/5
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LinuxだとOfficeが使えないからダメなの?

金子さん 金子さん    そうそう。Microsoft Officeは世界的にもシェアが高いから、これまでは各国の行政機関などでも、Microsoft Officeの保存形式(拡張子がdoc、xls、pptなど)がそのまま使われることが多かったけど、バージョンアップで過去の文書が利用しづらくなるケースや、特定のベンダーに依存することへの問題が出はじめたの。

   で、こうした文書の保存形式は、できるだけオープン化しようという動きが出て、「ODF(Open Document Format)」っていう仕様が公開されたファイル形式ができたのよ。OpenOffice.orgの最新版はODFに対応しているし、OpenOffice.org以外のオフィススイートでもODFを採用しているものは多いわね。

   そういえば、Microsoft Officeの最新版でも、従来の独自保存形式からODFと同じく仕様が公開されたOpenXMLに変更されたっけ。

   最近は、日本でも「(固有製品名)と同等機能を有するソフト」といった表現を改めて、「調達仕様書は、誰でも採用可能なオープンな標準に基づく要求要件の記載」を優先するよう総務省から指針が出されてる。

総務省が出している「情報システムに係る政府調達の基本指針」の公表
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070301_5.html

もとのぶ先生    (……そこまで知ってるなら全部説明しといてくれればいいのに……)

森君    とはいっても、世の中やっぱりWindows全盛!って感じがしますし、Microsoft OfficeみたいなソフトウェアがLinuxでは使えないって致命的な感じしません?

   だいたいOpenOffice.orgだってWindowsで使えるみたいだし、Windowsがあれば何でも動くじゃん!

金子さん    「何でもできる?」(ぎろっ)

もとのぶ先生 もとのぶ先生    森君、WindowsとLinuxは、違うOSなんだから、Windowsでしか動かないソフトウェアもあれば、逆にLinuxでしか動かないソフトウェアもあるんだ。

   ただ、Linuxで開発されたソフトウェアの場合、オープンソースで開発されていることが多いから、Windowsでも動かすための「移植」という作業が進んで、Linuxで利用できる主要なソフトはWindowsでも利用できるケースも増えてきた。それは…

金子さん    すとーるまん様の、お・か・げっ♪

もとのぶ先生    (というのは、さすがに言い過ぎだと思うけど)

森君    最初から全部Windowsで作ればいいのに。二度手間ですね。そもそもOSの違いっていうけど、OSってなんですか?

もとのぶ先生    うーん、一言でいうと基本的な仕事をしてくれるソフトってことかな。

   例えば、キーボードから「t」って押すと、ワープロソフトでも、メモ帳でも、IEでも「t」って文字が入力される。

森君    ええ……

もとのぶ先生    これはすごく基本的なことだけど、何かのソフトがそういう作業をしないと実現できない。同じようなことは、画面に文字を表示するとか、マウスでクリックした時にそれをWordとかExcelとかに伝えるとか、いろいろあるよね。

OSが内部でやっている仕事の流れの例
図2:OSが内部でやっている仕事の流れの例

※注2: この記述はOSの役割を把握してもらうためにかなりデフォルメしています。技術的には一部不正確な記載となっておりますが、御了承ください

   こういう基本的で共通的な仕事をするのが、OSの本来の役割。後OSにはハードウェアの違いを隠すっていう意味もある。

   例えば、森君のディスプレイの解像度は1280x1024ピクセル、金子さんは1024x768だから画面の大きさが違うけど、WordやExcelで画面の最大化ボタンを押すと、どっちもきれいに最大化するよね。でも、WordやExcelは、OSに対して最大化表示させてねというだけで、後はOSにお任せ。OSがつながっているディスプレイの解像度を覚えていて、現在の解像度に応じて適切な大きさでウインドウを表示してくれるからなんだ。

※注3: この記述はOSの役割を把握してもらうためにかなりデフォルメしています。技術的には一部不正確な記載となっておりますが、御了承ください

   これをWordやExcelが各々独自にやるようにすることもできるけど、おんなじような仕事を色んな所でやるっていうのは効率悪いよね。現実の仕事もそうだけど。

   どう、少しわかった?

森君    うーん、わかったようなわかんないような。

   でも、それからなおさらLinuxなんて捨ててWindowsだけにしちゃえばいいんじゃないですか? それこそおんなじようなOSを二重に作ってますよね?

金子さん    うーっ、すとーるまん様になんて失礼なことを……
もとのぶ先生 もとのぶ先生    あーあーあー。それは、車に普通の乗用車とか、トラックとか、バスとか色んな種類があるようなもの、といえばいいかな。

   WindowsにはWindows の得意な仕事があるし、LinuxにもLinuxの向いている作業がある。確かにワープロソフトや画像ソフトを使って個人が文書を書くみたいな仕事はWindowsの方が機能が充実しているし、ソフトもいっぱいあるね。

   でも、インターネットのWebサイトや電子メールの仕組みを動かしているコンピュータのOSはLinuxの方が向いているケースも多い。共通業務の効率化は必要だけど、人それぞれ好みもあるし、あちら立てればこちら立たず的な要素もあるから、万能なOSっていうのは存在しないってことかな。

本記事はフィクションであり、実在の人物には一切関係ありません。

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たかはしもとのぶ
著者プロフィール
たかはしもとのぶ(高橋基信)
1970年生まれ。1993年早稲田大学第一文学部哲学科卒。同年NTTデータ通信株式会社(現:株式会社NTTデータ)に入社。
クライアント・サーバシステム全般に関する技術支援業務を長く勤める。UNIX・Windows等のプラットフォームやインターネットなどを中心とした技術支援業務を行なう中で、接点ともいうべきMicrosoftネットワークに関する造詣を深める。
現在は「日本Sambaユーザ会」スタッフなどを務め、オープンソース、Microsoft双方のコミュニティ活動に関わるとともに、各種雑誌への記事執筆や、講演などの活動を行なっている。


INDEX
第2回:オープンソースのオフィスソフトって?
  オフィススイートがないと仕事もできない
LinuxだとOfficeが使えないからダメなの?
  ディストリビュータって何ですか?
たかはしもとのぶの「はじめてのオープンソース」
第1回 オープンソースって無料で使えるの?
第2回 オープンソースのオフィスソフトって?
第3回 オープンソースって、仕事に使えるのかなぁ?
第4回 オープンソースにもデータベースってあるんですか?
第5回 オープンソースコミュニティは何をするところ?
第6回 OSSのライセンスに沿って運用してますか?
第7回 メーリングリストでコミュニティに参加しよう
第8回 森君、サーバのセキュリティ管理を任されるの巻!
第9回 ネットワーク関連ツールを使ってみたら...
第10回 歴史から知るオープンソースの心
第11回 特別編!LinuxWorldで森君と握手!
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