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システム作りのもやっと感を解消する「MOYA」

第4回:ゴールモデルでゴールを可視化

著者:NTTデータ  竹内 信明   2007/11/6
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実践!ゴール分析

   それでは、適例に沿って、ゴール分析を説明したいと思います。

一般的な営利企業の目的・目標からみるゴール分析

   一般企業へゴール分析を行う場合に、よくあがるトピックとして「トップゴールの設定について」というものがあります。

   「そもそも企業の最終目的・目標は、利益の追求なのだから、それをトップゴールとしてゴールモデルを構造化していけばいいのですか?」と質問されるケースがあります。逆に「当たり前のことだから、それをいまさら構造化するの?」と聞かれることもあります。

   ここでは上記のように「当たり前」なためにイメージしやすい「利益の追求」を、改めてトップゴールとしたゴールモデルを可視化してみたいと思います。ゴールモデルを可視化する上での大まかな構造として、以下のような分類での捉え方が参考になるかと思います(図4)。

ゴールモデルの大まかな分類
図4:ゴールモデルの大まかな分類

   まずは、トップゴールの設定です。今回は利益追求ということですが、もう少しゴールのイメージが伝わる「利益が向上している」という表現に変えてみます。このように、ゴール表現においては「〜の状態」と表現できるようにします。

   なお、例えば「10%利益が向上している」といったように、定量化できるのであれば、なるべく定量化した表現にすることを心掛けます(今回の事例では、定量化した表現にはなっていません)。

   トップゴールが設定されたので、その直下のサブゴールをイメージしていきます。どのような状態であれば利益が向上された状態になっているのでしょうか。利益とは一般的に、「利益=売上高−コスト」方程式が成り立ちます。

   したがって、トップゴール直下のサブゴールは、それぞれ、「売上が増加している」「コストが削減されている」としました。

   さらに「売上が増加している」ためには、売上増加に何が必要で、なぜ売上が増加するのか、といった点について検討していきます。ここでは、リピート率と新規開拓の観点から、それぞれ「リピート注文が確保されている」「新規顧客を獲得している」としました。

   一方、「コストが削減されている」ために作業の部分最適と全体最適に着目し、「各作業の効率性が向上されている」「作業全体が適切に運用されている」としています。

   この要領で、さらにその直下のサブゴールをイメージしながら、ゴールモデルを構造化していったのが、以下のモデルになります(図5)。

例によるゴールモデルの構造
図5:例によるゴールモデルの構造
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   なお、今回は、「既存顧客の満足度が向上されている」をサブゴールとして選択し、その最下位に位置する「情報追跡基盤が確立されている」「情報共有・整備がされている」を情報システムで実現する、という合意に至りました。

   サブゴールを掘り下げていく中で設定したサブゴールが妥当であるか確認するために、頻繁にトップゴールにまで遡ることをします。

   サブゴールを掘り下げていくとそのすぐ上のゴールは意識するのですが、ある程度階層が深くなるとトップゴールへの意識が薄れるため、トップゴールへ遡ることは有効と考えます。

   また、サブゴールの候補として、課題分析の望ましい状態のTpostや価値観であるWがサブゴールの候補になると説明しました。今回はその内容を取り上げていませんが、実際にはこれらのサブゴール候補を念頭に置きながら掘り下げていくことが、サブゴールをイメージする際のポイントとなります。

   この一連のゴールモデルの作成作業は、可能であれば主要なステークホルダと一緒に作業を行い、ステークホルダの意見や立場を捉えながら、その場で互いの情報を共有し、最終的に合意形成することを目指します。


まとめ

   今回は、ステークホルダ分析で顕在化された課題に対して、潜在的な部分を深堀りする課題分析、達成すべきゴールをゴールモデルという形で可視化し、そのゴールモデルを通じて、ステークホルダが本当に目指すべきゴールを見出し、共有し、合意を形成するゴール分析を説明しました。

   以上で、「第1回:要求定義方法論『MOYA』とは?」で解説したSTEP1「要求を目に見えて理解できる形に構造化する部分」として、分析領域定義、ステークホルダ分析、課題分析、ゴール分析の説明が終わりました。

   説明上、駆け足になってしまった部分もあったかと思いますが、MOYAにおける「要求を目に見えて理解できる形に構造化する部分」について、ご理解いただけましたでしょうか?

   次回は、STEP1のタスクの関係性を振り返り、STEP2の簡単な補足などを説明します。

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株式会社NTTデータ 竹内 信明
著者プロフィール
株式会社NTTデータ  竹内 信明
技術開発本部
ソフトウェア工学推進センタ
MOYA黎明期の2004年に、ビジネスモデリング方法論MOYAの普及・推進プロジェクトに参画。現場の想いを重視し、現場と共に、あるべき姿を導くことを信条としている。現在、MOYAの研修講師や現場へのMOYA適用を中心として、MOYA普及・推進に日々奔走している。


INDEX
第4回:ゴールモデルでゴールを可視化
  課題の潜在的な部分を深堀り
  気づきと合意でゴールを可視化
実践!ゴール分析