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システム作りのもやっと感を解消する「MOYA」

第4回:ゴールモデルでゴールを可視化

著者:NTTデータ  竹内 信明   2007/11/6
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課題の潜在的な部分を深堀り

   ステークホルダ分析で顕在化された課題に対し、課題分析では以下の表1のように「課題の背景を構造化したモデル」として表すことによって、潜在的な部分を深堀りします。
  • その課題に関係する人々(役割)
  • 何が望ましい姿なのか
  • 望ましい姿を望ましいとする背景としての価値観
  • 望ましい姿を実現するために必要なもの、もしくは制約

表1:課題の背景を構造化したモデル

   具体的には、分析領域定義の際に説明した「CATWOE分析」を用います。以下で、CATWOE分析についてもう一度おさらいしておきます。


CATWOE分析の実施

   CATWOE分析は、「C(Customer)、A(Actor)、T(Transformation process)、W(World view)、O(Owner)、E(Environment)」の6つの視点で課題を深く掘り下げる作業です。

   ステークホルダ分析により選び出された今後検討すべき課題に対して、CATWOE分析を実施します(図1)。

CATWOE分析のイメージ
図1:CATWOE分析のイメージ

   それでは、C、A、T、W、O、Eの6つの視点について、それぞれ詳しくみていきます。


C、A、T、W、O、Eの6つの視点

   ここでは例として、ステークホルダ分析の時に取り上げた「お客様から配送状況について問い合わせがきても何も答えられず困っている」という課題を扱います。

   なお、「C → A → T → W → O → E」という順番で分析を行う必要はありません。実際は「T → C → A → W → O → E」という順番で分析を行っています(表2)。

T:ある状態から、価値観Wに合致する別の状態へと変換するプロセス
変換プロセスというからには、何かを変換する過程を指します。ここでは、望ましくない状態を望ましい状態に変換する過程を指します。望ましくない状態をTpre、望ましい状態をTpostとして、併記することで表現します。
  • Tpre:お客様からの商品発送の問い合わせがきても、あやまる以外にできない状態
  • Tpost:お客様の知りたい情報をすばやく伝えられる状態
C:Tの受益者(犠牲者の場合もある)
Tの受益者、つまり、上記のTではお客様がCに該当します。なお、CはCustomerの略ですが、必ずしもお客様を指すとは限りません。変換プロセスによって影響を受ける人を指しますので、良い影響だけでなく、悪い影響を受ける人をCとする場合もあります。
A:Tを行う人々
Tを行う当事者を指します。問い合わせに答える当事者であるオペレータが該当します。
W:Tを意味あるものにする価値観
上記のTを例にとれば、「お客様のニーズを満たすことは良いことだ」などがあげられます。お客様のニーズを満たす上で、オペレータによっては、「お客様の重要度に応じたサービスを行うべきだ」「すべてのお客様に公平であるべきだ」といった異なる価値観を持っている場合があります。このような場合は、違った認識であることを理解した上で、合意形成の帰着点を探っていきます。
O:Tに関する責任者や所有者、あるいはTを止めることができる人々
上記のTがお客様窓口の責任者の範囲内であれば、お客様窓口の責任者がOに該当します。
E:外部要素、Tを実現するために必要な資源、環境、制約条件
上記Tのお客様の知りたい情報が、商品の発送情報であれば、「発送情報をオペレータが調査可能であること」「今のオペレータにはITシステムのオペレーションの経験がない」というのがEに該当します。

表2:CATWOE分析の結果

   上記の例では、1つの視点による課題分析を行いましたが、実際は1つの課題に対してCやTpostが複数設定される場合もあります。課題を複数の視点で分析し、課題の1つ1つを明確にしていくことで、結果として課題の全体像をとらえることができます。

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株式会社NTTデータ 竹内 信明
著者プロフィール
株式会社NTTデータ  竹内 信明
技術開発本部
ソフトウェア工学推進センタ
MOYA黎明期の2004年に、ビジネスモデリング方法論MOYAの普及・推進プロジェクトに参画。現場の想いを重視し、現場と共に、あるべき姿を導くことを信条としている。現在、MOYAの研修講師や現場へのMOYA適用を中心として、MOYA普及・推進に日々奔走している。


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