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【新・言語進化論】土日に買って勉強したい「言語」本

【新・言語進化論】土日に買って勉強したい「言語」本

第2回:Think ITライター陣を支えた書籍たち

編者:シンクイット編集部

公開日:2007/11/10(土)

UNIXの神髄を知り、その世界に魅了された1冊

大型計算機センターとFORTRAN77の組み合わせが、いきなりUNIXとC言語になって、まあ何がなんだかわかりません。ログインはできても何をすればいいのかわかりません。プログラムを書こうにもエディタがどこにあるかわからず、エディタを発見してもいきなり「ed」や「vi」ですから(笑)。研究室では、「rogue」(nethackの祖先です)や「zork」がはやっていて「rogue」のスコアを競っていました。

当時の私の上司は、手書きで「zork」の詳細なマップを作成し研究していたものです。余談ですが、zorkのオンラインマニュアルには、「全てのDEC製コンピュータは、zorkが付随してあるべきである」のようなメッセージがあったと思います。素晴らしいソフトウェアです。

当時はUNIXも日本語化されていませんから、今のように書籍もなくて、基本は自学自習です。どうしてもわからないときに、おそるおそる怖い先輩に質問したことを覚えています。『UNIXプログラミング環境』は、そんなころに購入し、自宅と会社で愛読した本です。自分が生まれてから購入した書籍の中でもこれほど繰り返し読んだ本はありません。

『UNIXプログラミング環境』は、題名通り『UNIXの環境』について書かれているのですが、同時に『UNIXの思想』に充ち満ちています。この本を読んで、UNIXの神髄を知り、その世界に魅了されました。初版が1985年10月で、書籍の内容は、現在では完全に古くなっていますが、そこに記録された思想、あるいは精神はむしろ現在のどのUNIX/Linux本にも勝っています。文字通りの名著です。

就職してからは毎年のように所属や勤務地が変わり、引っ越しもしました。その都度荷物を整理してきましたが、今も手元に残しているのが、この『UNIXプログラミング環境』と『プログラミング言語C』『The AWK Programming Language』、そして金崎克己さんの『UNIXプログラミング実践編』の4冊です。

プログラミング言語C ANSI規格準拠 プログラミング言語C ANSI規格準拠
著者:Brian W.Kernighan、D.M.リッチー、石田 晴久(翻訳)
発行:共立出版
ISBN:978-4-32002-692-6
仕様:343ページ
価格(税込み):2,940円
発売日: 1989年06月(第2版)



The AWK Programming Language The AWK Programming Language
著者:Alfred V.Aho、Brian W.Kernighan、Peter J.Weinberger
発行:Addison-Wesley Pub(Sd)、Korr.Nachdr.版
ISBN:978-0-20107-981-4
仕様:210ページ
価格:81.40ドル
発売日:1987年10月




UNIXプログラミング実践編−シェル・C言語・開発ツールを使いこなす UNIXプログラミング実践編−シェル・C言語・開発ツールを使いこなす
著者:金崎 克己
発行:CQ出版
ISBN:978-4-78983-302-8
仕様:293ページ
価格(税込み):1,998円
発売日:1987年09月


『プログラミング言語C』には、うまくいえませんが、日本にはない違う世界の『におい』がありました。使われている活字も他のC言語の解説書と異なっていて、魔法の書のような不思議な力を感じるようなところがありました。私が購入したのは初版で、当時はCのANSI規格がありませんでした。最近、ANSIに対応した第2版(原語版)を購入しましたが、本文の内容はほとんど変わっておらず完成度の高さを物語っています。

『The AWK Programming Language』は、AWKの開発者による解説です。AWKは現在ではすっかりPerlあるいはRubyに取って代わられた感がありますが、言語の設計や基本思想に魅了されましたし、Kernighan博士の著作として文章を読むだけでも楽しくなる、そんな本です。叶うことならいつか自分で訳したいと思っていましたが、1989年に足立高徳さんによる訳本が出版されました。現在でも2004年に新紀元社情報工学シリーズとして購入できますが、新版では表紙に原著のカバーが縮小してデザインされています。私はそうした配慮に著者や編集者の方の心遣いを感じます。

最後の『UNIXプログラミング実践編』は、4冊の中で唯一日本人の手によるものです。本書は月刊誌『インタフェース』にリコー(当時)の金崎さんが連載されていたものをまとめたものですが、毎月雑誌の発売を心待ちにしていました。その内容はまさに『実践的』であって、『プログラマから見たUNIXの特徴』ではじまり、『UNIXにおけるソフトウェア開発』で終わります。金崎さんが惜しげもなく鮮やかにテクニックを紹介されるその姿はまるでマジシャンのようです。これほど充実し、洗練された書籍はそう多く出会えるものではありません。

今回、インプレスITさんから企画のご案内をいただき、改めて書棚からこれらの書籍を探し、手に取りました。ページをめくると、そこに20年前の自分の書き込みをみつけ、20年前の自分と対面しました。

これらの書籍を直接活用した時間はそれほど長くなかったかもしれません。しかし、自分はそこから常に何か影響を受けていたことを感じさせられましたし、月日を経ても、内容が古くなっても生き続ける何かがあることを確認することができました。

情報の在り方は、今や完全にネットワークが中心となっていますが、私は人間が年をとるように古くなる書籍が好きです。書籍との出会いは人との出会いに近いものがあるように思います。これからも新しい出会いに期待したいですし、自分自身、何かを書くときは、『ささやかなものであっても、誰かの心に届くようなものを残せたら』、いつもそう思いながら書いています」

次ページでは弊誌でも数々の記事を連載しているウルシステムズの林 浩一氏が推薦する書籍を紹介する。 次のページ



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第2回:Think ITライター陣を支えた書籍たち
  先人に「役立った」と言わしめた書籍とは
UNIXの神髄を知り、その世界に魅了された1冊
  システム開発からコンサルティングまで活用している