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HAクラスタの概要
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それでは、具体的に基本的なHAクラスタの仕組みについて解説します。図6はHAクラスタの基本的な概念図です。
図6:HAクラスタの基本
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ハートビート
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クラスタノード間でお互いのサーバの状況を監視するために、ハートビートと呼ばれる死活監視の機能があります。クラスタソフトウェアによってその監視方法は異なり、高機能なソフトウェアであるほど詳細な情報が含まれます。
相手からの応答がない場合には、相手方のサービスをフェイルオーバーして動作するようになります。しかし、お互いが正常に稼動しているにもかかわらず、ハートビートによる確認が行えないと、お互いのマシンでサービスを稼動させようとしてしまう問題が発生することがあります。これを「スプリット・ブレイン」と呼んだり「ネットワーク・パーティション問題」と呼んだりしますが、クラスタソフトウェアにより対応策が考えられています。
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障害の検出
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アプリケーションが稼動しなくなったという状態を常に監視しておく必要があります。データベース系の監視ではSQL文によりデータベースにアクセスするような監視方法もあります。障害の検出技術もクラスタソフトウェアに大きく依存します。
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アプリケーションの引き継ぎ
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障害が発生し、アプリケーションの動作が待機系ノードに引き継がれた際に稼動系ノードが突然電源断などをすると、データの整合性が正しくなくなります。正常な状態でアプリケーションを再稼動させるには、サービス起動前に適切な回復処理を行う必要があるかもしれません。また、ファイルシステムのマウントの際にも、ファイルシステムチェックの実行が必要な場合もあります。
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共有ディスクへのアクセスの排他制御
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ハートビートの接続がすべて切断された場合、スプリット・ブレインにより万が一同じボリュームに複数のマシンから同時に書き込みがあると、データに致命的な問題が発生する可能性があります。それを防ぐために、確実にアクセスが必要なマシンだけにアクセスを許可させる仕組みが必要とされています。
以上のように様々な考慮点がありますが、ほとんどのクラスタソフトウェアではこれらの問題点を適切に解決しているため、運用方法を間違えなければ問題となることはありません。むしろ、クラスタシステム以外の単一障害点(Single Point of Failure)に注意する必要があります。
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共有ディスクの冗長化
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共有ディスク自体は、冗長化のためにRAID構成を取ることが一般的ですが、加えてRAIDコントローラの二重化およびシステムからのアクセスパスも、HBAを二重化するなどの対策が必要となる場合もあります。またクラスタソフトウェアの中には、共有ディスクのほかにデータミラー型と呼ばれるものがあります。データミラー型は、それぞれのローカルディスクのデータをレプリケーション技術によって、同期書き込みを行いながらアプリケーションからの使用ができます。
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ネットワーク機器の冗長化
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NIC自体の障害については、システムごとフェイルオーバーすることで対応が可能なケースもありますが、そのシステムが接続しているネットワーク機器自体に障害が発生した場合には、正常にサービスを提供することができなくなります。一般的にハートビートにはネットワークが使用されますが、シリアル接続などのネットワーク外の接続を使用することで、より安全性を高めることができるものもあるようです。
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次回は
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以上、簡単なHAクラスタの概要を確認してきましたが、実際にはクラスタソフトウェアによりその実装は様々です。
次回以降は、各ベンダーによるクラスタ技術の詳細について解説がありますので、それぞれの特徴について今回のポイントを抑えながら確認していくとよいでしょう。
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著者プロフィール
バックボーン・ソフトウエア株式会社 青木 浩朗
ストレージ専業ベンダーにて、SEおよび企画を担当した後に、2001年にBakBoneSoftware入社。主に大手ベンダーのSEを担当しながら、テクニカル・マーケティングとして、各種講演や執筆活動を行っている。最近は、特にデータベースとクラスタリングに注力し、検証レポートを作成するのをライフワークとしている。
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