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BIツールの拡張がもたらした問題点
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すべてのユーザ層に利用可能なBIツールを目指して、BIベンダーが行った製品ラインの拡張は、企業内での社員数に対するBIツール利用者数の増加につながりました。しかしその結果、別の問題点もでてきています。
ここに興味深い調査レポートがあります。それは、TDWI(The Data Warehousing Institute)が2005年7月に発表した「Enterprise Business Intelligence: Strategies and Technologies for Deploying BI on an Enterprise Scale」というタイトルのものです。このレポートは、TDWI(注)からダウンロード可能となっていますので、興味のあるかたは原文もご覧ください。
このレポートは、世界中の594の企業を対象にして行ったBIツールの導入状況に関する調査結果で以下のような結果が報告されています。
- 企業内での社員数に対するBIツール利用者数の割合は、平均するとここ3年間で40%から60%に増加した
- 現在、1社あたり3つないし4つのBIベンダーのBIツールを導入しており、同一ベンダーの製品であってもすべてを別個に数えると、1社あたり平均14種類のBIツールを導入している
表1:BIツールの導入状況
この調査結果は、BIツールの拡張がBIツール利用者の増加、つまりすべてのユーザ層で必要とされるデータ活用基盤の整備が進む一方で、ユーザ層や部門ごとのニーズにあわせて、別個にBIシステムを導入してきた結果、あまりにも多くの種類のBIツールが使用されている状況になっていることを示しています。
またこのレポートでは、BIツールだけではなく、データウェアハウスやデータマートの構築状況についても調査が行われており、そちらでも部門別や分析ニーズ別にデータベースが構築されてしまっており問題視されていると報告されています。
このような調査結果から、現在の企業がBI導入状況について問題と考えている項目は、やはりTCOとITガバナンスの2つの観点でまとめることができます。
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TCOの観点からの問題点
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多種多様なBIツールの利用は、システムの更新・保守に関するコストを全般的に増大させます。
単純に考えても、影響を与えるコスト項目として以下のようなものが考えられます。
- ソフトウェア保守サービスとバージョンアップライセンス費用
- システムやアプリケーションを変更・拡張する際の開発費用
- IT部門が、BIツールに習熟するための工数と費用
- IT部門が、BIツールの運用を行うための工数と費用
- ユーザ部門が、BIツールに習熟するための工数と費用
表2:BIツールとコスト費用
これらのコストを積み上げていくと、企業にとって無視できない負担が発生している可能性が極めて高いといえます。
ところがこのTCO観点からの問題点は、主に予算と要員の確保という対処も可能であり、比較的単純な問題であるともいえます。
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ITガバナンスの観点からの問題点
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一方、部門ごとのBI導入と多種多様なBIツールの利用は、ITガバナンスの観点からも様々な問題点を発生させます。例えば、表3のようなことが考えられますが、これらはTCO観点の問題よりも一層複雑であるといえます。
- ソフトウェアによる違いやデータの分散によりデータの不整合が発生する
- IT投資における予算編成・執行上の計画性が証明できない
- ユーザ管理やクセス制御が複雑で、情報セキュリティが確保できない
- データやアプリケーションに対するアクセスや変更を集中的に監査できない
表3:多様性による問題点
また、現在はSOX法への対応といった外部要因も含めて、企業のITガバナンスへの注目度は非常に高くなっているため、これらITガバナンスの観点からの問題点は、より緊急度の高いものとして捉えられています。
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著者プロフィール
株式会社アイエイエフコンサルティング 平井 明夫
日本DEC(現HP)、コグノス、日本オラクルを経て現職。一貫してソフトウエア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。特に、データウエアハウス、BI、OLAPを得意分野とする。現職についてから、BIスペシャリストの人口が増えない現状に発奮し、BI技術の啓蒙のため、雑誌・Web媒体の記事執筆に積極的に取り組んでいる
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